ブダペスト週末旅行記

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身軽にブダペストへ

2022年3月現在、ヨーロッパではコロナ規制の緩和が進んでいる。ワクチンを接種しており、EU基準のデジタル接種証明(スマホのアプリでQRコードとして提示できる)を携帯していれば、検査や隔離なしに自由に旅行できる国が多くなった。

ハンガリーもその一つ。3月7日以降は公共空間でのマスク着用すら義務ではなくなった。私が住んでいるベルリンから首都・ブダペストまでは飛行機で1時間という近さ。

同居人Dと3泊4日の予定で、リュックサックだけ背負って出掛けてきたので、ドイツや日本と比較しながら、その印象をお届けしたい。

フライトは往復で100ユーロくらい。早めに予約すればもっと安く行くことも可能です

最終日は午前6時にブダペストの宿を出発したのだが、5時間後の11時にはベルリンの自宅に帰り、前日にブダペストで買った美味しいパンをブランチとして食べた。空港で待つ時間などを考えても、やはり飛行機での移動というのは速くて素晴らしい。

世界遺産の美しい街並み

ブダペストの見所はほぼ市内中心部に集中しているので、歩くのが好きな人であれば徒歩で観光が可能。体力だけはある私とDは、毎日3万歩ほど歩いてくまなく市内を見て回った。

一方でバスや路面電車なども短い間隔で走っているので、うまく使えば大幅に移動時間を短縮できる。

青空の下を走る、上半分が白で下半分が黄色の路面電車
レトロな雰囲気で可愛い路面電車

ユネスコの世界遺産に登録されている歴史ある街並みは、ドナウ川を挟んでブダ側ペスト側に分かれている。特に日が暮れた後が美しい。ピカピカした眩しいライトアップではなく、光がぼんやりと夜空に浮かび上がるような、優しくあたたかい夜景なのである。

ドナウ川の両岸がオレンジ色に輝く夜景
ゲッレールトの丘に登って眺めた、日没後の美しい景色。渋滞した車のライトすらその一部に

観光名所の詳細は、ハンガリー在住者の情報やガイドブックを見てもらった方が正確と思うので、ここでは印象に残った場所の写真だけ紹介してみたい。

夜空を背景にしてライトアップされた威厳ある建物と、水面に反射したライト
威厳を感じる国会議事堂。ロンドンもそうだが、川沿いにあるので水面の反射も綺麗
青空にそびえる尖塔のある教会と、その手前の像
ブダ側にあるマーチャーシュ聖堂。瓦屋根の模様が印象的
これもブダ側にある漁夫の砦。白い7つの塔がユニーク
大聖堂のように豪華なロビー
たまたま通りかかり、ドアマンに断ってから思わずロビーを撮らせてもらったPárisi Udvar Hotel Budapest。この5つ星ホテルに泊まれる日はきそうにないけれど、中のカフェでお茶だけでもしてみたい

ドイツから行くとびっくりすること

私は初めてハンガリーへ行ったのだが、空港に到着してすぐに「ドイツとは違う!」とびっくりした。それは働く人たちのフレンドリーさである。

市内中心部に借りていたアパートまでは、空港から公共のバスで30分ほどと移動も簡単。チケットを自販機で買い、バスに乗り込もうとすると、チケットをチェックして切り込みを入れるため立っていた係員数人が、みんな笑顔だったのである。

ハンガリーへようこそ!楽しい滞在となりますように。来てくれてありがとうございます

そう英語で言われて、私とDは面食らった。

ドイツでは見たことのない“おもてなし”の精神…!

日本から行っていれば何とも思わなかったのかもしれないが、不愛想で不機嫌にすら思えることがあるドイツの接客に慣れている身としては、このフレンドリーさはちょっとした衝撃だった。

その後、ブダペストでどのお店やレストランに入っても、やはり店員さんが親切である。私が何か探している素振りを見せると、すぐに笑顔で声を掛けてくれる。世界的な観光地らしく、どの人も英語が流暢。

その上なんとドイツ語も話せる人によく会った。レストランで私とDが会話していると、「あっ、ドイツ語を話すんですね。私もですよ」と英語からドイツ語に切り替えてサービスをしてくれた店員さんなどに聞けば、学校で外国語として何年間も学ぶ人が多いのだという。

   ↑ドイツの接客についてはこちらの記事をどうぞ

物価が安く、美味しいものがたくさん

首都で観光地のブダペストでさえ、ドイツや日本と比べて物価が安い。市内交通の1回券は、日本円に換算すると約120円。24時間乗り放題チケットでも約550円。

細長い小さな切符と、大きく日時が印刷された大きめの切符
手前が24時間チケットで、奥は郊外へ行くため追加で買った乗り継ぎチケット。使用済みのため穴が空いている

そして食べ物が安くて美味しいのが何よりの魅力である。旅に出れば食べることが一番の楽しみである私とDは、事前に食べたいものをリストアップしておいて、色々なお店を回っては舌鼓を打っていた。

ハンガリーのストリートフードから、ちょっと高級なレストランまで様々なものを試したが、どれも「ドイツだったら1.5倍の値段はするだろうな」と思う質と量だった。

可愛いお皿に盛られた牛肉と野菜のスープ
定番のグヤーシュ。ハンガリーの家庭料理を出している小さなビストロにて

ハンガリーのストリートフードといえば、揚げパンにサワークリームやチーズを大量にのせたランゴーシュ。色々なトッピングを選んでも500円以下で買える。

平たい揚げパンの上に大量にチーズなどが乗ったピザのような食べ物
カロリーのことを考えてはいけません

私たちが特に感激したのは、最後の夜に予約して向かった、ミシュランガイドでもお勧めされている『Hoppá! Bistro』。ハンガリー料理を新たに解釈したメニューはどれも洗練されて見た目も美しく、でも十分に満腹になる量があり、触感や味の組み合わせが考え抜かれていることが伝わってくる。

優しくライトアップされたお店の外観
店内は広々としていて落ち着ける

私とDはそれぞれ前菜・メイン・デザートを注文し、お酒1杯と炭酸水を付けたが、一人37ユーロ(5千円に満たない)という破格。細やかに目を配ってくれるサービスも素晴らしく(そしてドイツ語で対応してくれた)、満足度は100%に近かった。

ハンガリーはフランスと並んでフォアグラの名産地。私が前菜で頼んだフォアグラのテリーヌには、ブリオッシュのような甘めの自家製パンが絶妙にマッチ。

美しく盛られた前菜とパン
テリーヌの上にのっている黒くパリパリした煎餅のようなものには、タコと米が使われているらしい。Dが選んだ牛肉のタルタルも美味

また、本場のバウムクーヘン食べ比べという記事でも紹介した、バウムクーヘンの原型ともされる伝統的な菓子パンも何度か買ってみた。英語ではChimney cake(煙突ケーキ)とも呼ばれているようだ。焼きたてをちぎって食べると、外はさくさく、中はしっとりとして、素朴ながら美味しい。

そして、このお菓子をコーンにして中にアイスを入れるという進化系スイーツも発見。筒の中にチョコレートクリームなどを塗ってくれるので、アイスがしみ込んでべちゃっとすることもなく、味わって食べられるデザートだった。

筒状の菓子パンに山盛りになっている生クリームとトッピング
アイスの上にはさらにホイップクリームが。トッピングとソースも自分で選べる

クレジットカード支払いの普及率にも驚いた。ハンガリーは2004年にEUに加盟しているが、ユーロは導入しておらず、フォリントという通貨が使われている。私たちがブダペストにいた4日間、現金が必要になったことは一度もなく、両替する手間を省けた。駅やレストランやスーパーはもちろん、小さなパン屋でも問題なくカードで支払えた。

ドイツのカフェやファストフード店だと、カードを使えないことが度々あるんですよね

ブダペストだけではない魅力

滞在3日目には少し足を延ばして、ブダペストから近郊電車で40分くらいのセンテンドレ(Szentendre)という小さな街へ出掛けた。ちょっと遠出したいときにハンガリー人にも人気の目的地だという。

駅には改札があるわけではなく、切符を買って刻印したら自由に電車に乗り、検札が回ってきたときに切符を見せるシステムなのはドイツと同じ。しかし、ドイツであれば切符を差し込むと日付や時間帯がピッと印字される装置が、ハンガリーでは穴が空くだけで、それも自分でレバーを手前に動かさないといけないことが最初はよくわからなかった。

人の少ない電車の中
男性の横にある赤い箱のような装置に切符を差し込む

車窓から景色を眺めていて思ったのは、賑やかなブダペストを少し離れると、一気に寂れた印象になることである。ドイツで都市を出て郊外へ向かうと、緑豊かになり広々とはするが、こういったどこか荒れた印象を受けることはない。

到着したセンテンドレは、数時間で満喫できるくらいこじんまりとした可愛らしい街。アーティストが多いことでも知られているそうで、ところどころに写真映えするインスタレーションがある。

狭い路地の上に、たくさんの虹色の傘が吊り下がっている
たくさんの虹色の傘が頭上に浮かぶ小道

街中をぶらぶらと散策し、居心地の良さそうなカフェを探してお茶を飲んでから、またブダペストへ戻るのがちょうどよい感じである。ハンガリーの他の街も見てみたくなる半日観光だった。

私たちもコーヒーとケーキを楽しみつつカフェで休憩

そもそもハンガリーはドイツ在住の日本人にとって人気の旅先なのだが、その理由の一つは、ハンガリーが隠れた温泉大国だから。ブダペスト内にもいくつか大規模な温泉があり、世界中から人が集まるスポットとなっている。

私とDも観光客で混み合うゲッレールト温泉に行ったが、機会があれば今度は静かにお湯に浸かれる温泉に行ってみたい。

また好きな国が増えたな、と実感した楽しい週末旅行でした

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