コロナと過ごすベルリン③:with コロナの日常

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日常となったコロナ

新型コロナウイルスに振り回される生活が始まってから、早くも2年が経とうとしている。前々回前回の記事では、ドイツの生活が急激に変わっていった2020年の様子をレポートしたが、久しぶりにベルリンの現状をお伝えする記事を書くことにした。

ドイツも日本と同じく、コロナとの付き合いが日常の一部となった。州ごとに頻繁に改訂される政令を確認し、何が許可されていて何が禁止されているかによって、仕事やプライベートの在り方もある程度定められていく。

去年までは、陽性結果が出たという人の話を聞いても、友達の知り合いであったり、同僚の家族だったりしたが、その輪はどんどん近づいてきているオミクロン株が急速に広まってから、友達の家族や身近な同僚が感染することが増え、もうあまり驚かなくなると同時に、「いつ自分がかかってもおかしくない」という意識が強くなった。特に、ほとんどの人が3回目のワクチン接種を終えているので、ワクチンを打っていても安心できないことを再認識させられる。

ワクチン賛成派 vs 反対派

日本にオミクロン株の波が到達する前、ドイツで爆発的に感染者が増加していた時期、日本ではよく「ドイツが大変だ」と報道されていたと聞いた。私も日本の家族から心配されたが、実際には日常生活は意外と普通に過ぎていた。

仕事でテレワークが再導入されたり(昨年夏から連日出勤に戻っていた)、大規模イベントが中止になったりする以外には、お店もレストランもスポーツ施設も閉まることはなく、2020年から2021年にかけてのロックダウンと比べて厳しい規制はない。

しかし、その“自由”があるのは、ワクチン接種が完了している人か、感染して快復した人のみである。ワクチン義務化が長らく議論されているものの実現しないドイツでは、未接種の人の行動範囲を狭めることで、無言の圧力を掛けているかたちだ。

テーブルが並ぶレストラン内の様子、透明のパーテーションで細かく仕切られている
ハンブルクのレストランにて。ワクチン接種者や快復者しか入店できないが、更にテーブルの間が透明のパーテーションで仕切られている

日本と比べて早期にワクチン接種が進んだドイツだが、一貫して「ワクチンは打たない」という主義の人も少なくはない。理由としては様々で、長期的な安全性への懸念、未知のものを自分の体に入れたくないという抵抗、宗教的な信条、そもそもコロナウイルスの存在の否定などである。

一方で、日本文化にも詳しいドイツ人の同僚はこうも言っていた。

ドイツ人って天の邪鬼なところがあって、「みんなやるなら私はやらない」という人が絶対にいるんですよ。「みんなやるなら私もやる」という日本人のメンタリティは、こういう時いいですね

消えた布マスク

新たなドイツ文化・マスクという記事で、マスク着用が義務化された頃のドイツの様子をまとめたが、それからもマスク事情は刻々と変化した。公共交通機関や、お店の中、職場など、多数の人が集まる屋内での着用が必要なのは変わっていないが、どんどんマスクの種類が制限されていったのである。

口と鼻を覆うもの」であれば何でもよく、大きなバンダナで鼻から下を隠すのでもOKだった初期から変わり、まず「医療用マスク」の着用が義務化。手作りマスクは不可となり、不織布で作られたサージカルマスク(白や水色の使い捨てマスク)が主流となった。

しかし、すぐにこのサージカルマスクでも十分ではなくなった。公共交通機関の利用時など多くの場面で、FFP2マスクという更に高性能のマスクしか許可されなくなったのだ。

水色の長方形のマスクと、白い立体的なマスク
上がサージカルマスク、下がFFP2マスク

FFP2マスクは普通のマスクと比べて高価だが、今は価格の高騰も落ち着いて、1ユーロ以下で購入できる。色もスタンダードな白の他に、黒・灰色・紺・ピンクなど、様々なものを見掛けるようになった。

2022年2月現在、ベルリンでは「マスク」と言えば基本的にこのFFP2マスクを指す。せっかく調達したオシャレな布マスクも、使えたのは束の間のことで、今は引き出しの中で眠ったままである。

ベルリン国立バレエでも

現在ベルリンで暮らしている感覚だと、「コロナの状況が許せば」という前提で公私の予定を立て、社会生活が動いている感じである。しかし、感染者数が急増したときや、関係者の中で陽性結果が出たときなど、急なキャンセルも付き物だ。

私は2021年12月のクリスマス直前に、ベルリン国立バレエの公演を二日連続で予約していた。その一日目、仕事の後に劇場へ向かっていると、開演の2時間前である17時半くらいに、バレエ団からチケット予約者宛てのメールが届いていることに気が付いた。

「大変急ながら、バレエ団内でソリストを含め複数の感染者と接触者が確認されたため、本日夜から1月3日までの公演はすべて中止となります」…?!

まさかの直前キャンセル!信じられないような気持だったが、仕方なく家に直帰した。すごく楽しみにしていただけにショック…(特に今冬の目玉『ドン・キホーテ』は、ヤーナ・サレンコとダニール・シムキンという夢のようなキャストのはずだった)。

チケット代は、全額を返金するか、同額のクーポン券にするか、違う日程に予約変更するかという選択肢があった。私はひとまず返金ということで申請書を提出したところ、数週間後に銀行口座に振り込まれていた。

後日、ベルリン国立バレエのプロダンサーと個人的にお話しする機会があった。ダンサー達もオミクロン株に次々と感染し、元々第2キャスト、第3キャストだった“予備軍”が代役で舞台に上がることも多く、振り付けを覚えるのは大変ながら、踊れる幅が広がったという側面もあるそうだ。

色々ギリギリだったオペラ

年が明けた1月上旬、久しぶりにベルリンでオペラを鑑賞した。バレエは毎月くらい観に行くのだが、私はオペラに疎く、今回も泊まりに来てくれていた日本人演出家の友人に誘われて出掛けた。演目は人気演出家バリー・コスキーの『ホフマン物語』。

まず劇場に着いてびっくりした。入り口前が長蛇の列になっていたのである。この時期は、「全員が有効な陰性証明書を持参」することになっており(現在は3回目のワクチンを接種している人などは免除)、ワクチン接種/快復証明書・身分証明証・チケットの他に、陰性証明書にある検査実施の時間帯までチェックしなければならず、劇場の係員たちは大忙しだった。

ベルリンでは、街中のテストセンターで抗原検査無料で受けられる

私と友人も余裕を持って向かったはずが、外で30分近く待たされたため、席に着いた時には開演時間ぎりぎり。客席でもFFP2マスク着用である。

豪華なシャンデリアのある劇場内部
劇場のコーミッシェ・オーパー(Komische Oper)は内装も豪華

オペラが始まる前に劇場の代表者の男性が舞台に上がり、簡単な挨拶があった。

今日は非常にぎりぎりだったのですが、皆さんのために上演します!

ここでの“ぎりぎり”というのは、時間的なことかと思いきや、実はそうではなかった。

私達もコロナウイルスに見舞われて、今日はなんと合唱団19人が欠席です

どよめく客席。出演者は前日にPCR検査を受けることになっているが、その結果が公演当日の午後にならないとわからないのだという。(ベルリン国立バレエも同様と思われる)

この状況下で上演すべきかどうか、ぎりぎりまで迷いました。でもどうにか上演します!その代わり、舞台監督の意図には反しますが、合唱団は全員マスク着用で歌います。今後もできるだけ長く公演を続けていくための、苦渋の決断です

そしてオペラが開演したが、ソリストを除いて、合唱団はFFP2マスク着用で登場。このマスクは空気中の粉塵の94%を除去するという性能の高さながら、フィルターが密なぶん、普通に会話するだけでも喋りにくい。歌い、演技し、踊るシーンもある合唱団の人達にとって、それは大変だったに違いない。

舞台上に並んで拍手に応える出演者たち
カーテンコールにて。ドイツでは公演自体が終われば写真を撮ってOK

オペラ自体は大喝采の中で終演となったが、その後に予定されていたAfter Show Loungeというレセプションは、コロナのためキャンセルされた。コーミッシェ・オーパーは少し変わっており、本当の初演(プレミア)ではなくても、再演の初日には、観客と出演者がカクテルを飲みながら会話できる場が設けられている。私も参加したいと思っていたので残念だった。

続いていく日常

このように、常にマスクを持ち歩き、ワクチンを何度も打ち、コロナ検査をしたり、予定を立ててはキャンセルを余儀なくされたりしながらも、ドイツの日常は続いている。細々した制限はあれど、自由な生活を許されている方だと思う。

何よりも大事なのは健康でいることですね

コロナウイルスは誰にとっても、いくら気を付けていてもかかる時にはかかるところまで近づいてきているが、食事と睡眠と運動に気を付け、日頃から体調を整えて免疫力を高めておくようにしたい。

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