「ありがとう」も「すみません」も言わない接客

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ドイツでの買い物

先日、ベルリン在住の日本人の友人Mさんが、「いやぁ、ドイツに住んでるんだって実感したわ〜」と面白い話題を提起した。

ドイツで買い物すると、「ありがとうございます」って言うの、お客さんの方だよね

Mさんはランニングシューズを新調しようと思い、ベルリン市内の専門店で、色々と試着をした結果、気に入ったものを購入したそうだ。その時に接客を担当した男性店員が、色々と靴を出したりアドバイスしたりしてくれたわけだが、すると「ありがとう」と言うのは常にお客さんなのである。

ここまでは日本でも同じかもしれないが、会計時にも、店員は「いい物を選んでやった」という満足げな様子で、Mさんが代金を払い、商品をレジ越しに手渡され、受け取りながら「ありがとうございます。じゃあまた」と言って、やりとりが終わる。

「ん?安くはない買い物をしてあげているのに、なんでお客さんである私だけがお礼を言ってるんだろう?」と、Mさんははたと違和感を覚えたそうだ。

「ありがとう」のない接客

ドイツではお客様は神様ではない、という話は『対等さの善し悪し』という記事にもしたが、対等どころか、店員よりも客の方が立場が下だと思うこともある。

そもそもこの国では、お店に入ったとき、「こんにちは」と挨拶するのもお客さんから

ドイツから来た友達と日本で一緒に買い物に行ったとき、店員さんに「いらっしゃいませ」と挨拶されても、こちらは何も返さないことに、「失礼じゃないの?」と戸惑っていた

買いたいものをレジに持っていくと、機械的に会計はしてくれるが、やはり品物やレシートを受け取った時に「ありがとう」と言うのは、お客さんの方である。店員さんが「よい一日を!」や「よい週末を!」と別れの挨拶として最後に言ってくれることは多いので、するとこちらは、また「ありがとう、あなたもね」と返すことになる。

日本だと、店員さんが商品を入れた袋を持って、お店の入り口まで見送ってくれることがあるが、まずドイツでは考えられないサービス精神である。

スーパーなどでの普段の買い物を思い返してみても、私はドイツで店員さんに「ありがとうございます」と言われた記憶がない。カフェやレストランでは、チップを渡すと「ありがとう」と感謝されるが、それくらいである。

日本的な感覚だと、「せっかく買ってあげているのに…」と思うが、発想を転換してみると、確かに接客というサービスを享受しているのはこちらの方であり、感謝すべきなのもお客さん、という考え方も有り得る。チップを渡すという習慣も、サービスを受ける側から、サービスする側への感謝の表現の一種と考えられるだろう。

シュタイフ社のうさぎのぬいぐるみと、チョコレート、カレンダー、ポストカード
ふだん接客が素っ気ないだけに、時々温かい交流ができるとほっこりする。シュタイフ社の工場横のショップでぬいぐるみを買ったところ、おじいちゃんの店員さんと話が弾み、チョコレート・カレンダー・ポストカードまでもらったので、帰りの電車の中でパチリ

「すみません」のない接客

ドイツ人、ないしドイツに同化した人達は謝らない、というのは、在独の日本人達の間でよく話題になるトピック。スーパーのレジの打ち間違いに気がつき、だいぶ待たされた挙句ようやく返金してもらう時でも、大幅に電車が遅れている時のアナウンスでも、「申し訳ございません」という謝罪はない。しれっとミスを訂正したり、説明したりするだけである。

レジの打ち間違いはともかく、日本人がビジネス上で謝る時というのは、自分自身のミスでないことも多い。例えば電車が遅れるのは、アナウンスをしている車掌さんのせいではなく、天候や、他の電車との間合いや、混雑のためだろう。それでも、お金を払って乗車しているお客様に対して、「お急ぎのところ大変申し訳ございません」と会社を代表して謝罪する。そこには、組織の中に個人が取り込まれている、集団主義が見て取れる。

一方で、個人主義のドイツでは、いくら同僚がミスをしようと、どうしようもない事情で仕事が遅れていようと、お客さんに対して滅多に謝らない。逆に言えば、ドイツ人が謝罪する時というのは、自分に落ち度があったと認めて、本当に申し訳なく思っている時なので、真摯に受け止めた方がよい。

最近、職場でこんなことがあった。私が発注したカタログ350部が、間違って、ベルリンではなく別の街にある本社に納品されてしまったのだ。本社のドイツ人の同僚から連絡を受けて発覚し、「そんな単純なミスがあっていいのか」と私は気分を害しつつ、正しかったと確認した発注書を添付して、印刷所にメールで問い合わせた。納品先が間違っているので、また本社まで取りに行き、ベルリンへ再送することは可能か、という旨だった。

その日のうちに反応がなかったので、翌日督促したところ、しれっと返信があった。

配送部門と相談のうえ、納品を引き取りに行き、ベルリンへ再送することになりました。ついては、まず以下のことを確認したく…(略)

「すみません」の一言もない!

確かに、配送先を間違ったのは、メールに返信してくれた担当者のミスではなかったのだろう。それでも、お客さんに手間を掛けさせたうえ、納品が予定より何日も遅れるわけだから、会社としては謝罪して然るべきだと思うが。。。

そして、引き取りの日時などを決めてもらうため、本社の同僚から返信してもらったのだが、そのメールの書き出しというのが、

ご返信、また、引き取りにきてもらえるとのこと、ありがとうございます。再送にあたっては…(略)

いやいや、なんで私たちが「ありがとう」って言わなきゃいけないの?!

理不尽さに軽くショックを受ける。本当に、どちらがお客様なのかわからない。というよりも、お客様だから何なんだ、ということだろう。

冒頭の友人Mさんではないが、「私はドイツにいるんだな…」と実感した出来事だった。

ドイツ考察
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ドイツ舞姫ジャーナル

コメント

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