ドイツ式・中古品の譲り方

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中古品への抵抗のなさ

前回の記事では、私がほしかった家具を道端で拾ったエピソードを紹介した。

例えばアパートの入り口に、「ご自由にどうぞ」と食器や本、おもちゃなどが段ボールに入れて置いてあるのは、ドイツでは日常の風景である。ちゃんとそう張り紙されていることもあるが、何も書かれていないことも多い。

石畳の歩道に置かれた段ボール2つに、お皿や本が入っている
プレンツラウアーベルク地区を散歩中、歩道で見かけた段ボール。特に張り紙はない

リサイクルショップに持っていっても引き取ってもらえるかわからないが、捨てるにはもったいない、という物が色々と出てくるのは、引っ越しの時などに誰にでもある経験だろう。

しかし日本では、そういった中古品のやりとりは友人知人の輪の中だけが普通であり、ドイツのように外に置いておいたところで、貰い手はそう見つからないのではないだろうか。その点ドイツでは、知らない人が使っていたものを手に取ることに、日本ほど抵抗がない人が多いように思う。

私がベルリンで最初に住んでいたアパートはエレベーターがなかったので、住民達は出掛けるたびに否応なく階段を上り下りしていたが、踊り場の窓辺には毎日のように違うものがぽんっと置かれていた。文房具、DVD、手袋、ワイン…。もう自分には必要ないものを、捨てる前にとりあえずそこに置いておいて、誰かがもらってくれればそれでよいし、数日経ってもそのままだったら処分するようにしていたようだ。住民達が言葉なしに物々交換しているようで面白かった。

本を交換できる本棚

不特定多数の人と物々交換することもできる。私自身も利用したことがあるのは、öffentlicher Bücherschrankという、「公衆本棚」とでも呼ぶべき街中の本棚である。

木製の正方形のスペースが連なった本棚に、雑多な本が並んでいる
教会の前で見つけた本棚は、雨風で本が傷まないようビニールシートが付いている

利用方法はこの上なく簡単で、ここから好きな本を持って帰るのも、家にあった本を持ってきて入れるのも、すべて自由。古本屋に持っていっても値段はつかないだろうけれど、捨てるには惜しい本を置いておくにはピッタリである。私はハイデルベルクからベルリンへ引っ越す際、ハイデルベルクの街中の本棚に、料理のレシピ本を何冊か入れてきた。

今では他の国でも見られるようだが、「匿名で自由に本を持ってきたり持って帰れる」というこのコンセプトは、元々ドイツで発展したようである。Wikipediaの情報によれば、ベルリンだけで69の本棚が確認されている(2020年6月時点)。

ただ、本棚といっても様々な見た目をしていて、普通の家具の本棚に近いものもあれば、公衆電話ボックスを再利用しているものも多い。私が知っている中で一番ユニークなのは、ベルリン・プレンツラウアーベルク地区にある、木の形をした本棚。ひっきりなしに通行人が足を止めて本を物色する姿が見られる。

何本かの木の幹にスペースが掘られ、本が並べられている
老舗カフェが集まる一角に置かれている、オブジェのような本棚

チャリティーに

ドイツにももちろん古着を売買する古着屋は数多く存在するが、中古品をチャリティーに役立てるという選択肢もある。街中のチャリティー・ショップでは、市民が寄付した不用品を安く販売し、その売上げを慈善団体の活動資金にあてている。

ドイツ人の友人が洋服や本を寄付するというので、Oxfam(英国発祥の慈善団体)のショップについていったことがあるが、その場で状態のチェックがあり、「全部引き取れます」とお店の人に受け取ってもらい、あっという間に寄付が完了。値段をつけてショップで売ることが前提なので、大きな欠陥がないことが必要だ。

営業時間中にお店に持っていくのも面倒くさい、という人は、衣服や靴のリサイクルボックスに古着を入れることも可能である。一見するとゴミ箱のように見える巨大なボックスは、ドイツでは街角でよく見かける。ただし、ちゃんとした慈善団体の元に届くのではなく、悪徳業者が転売して利益をあげているという噂もあり、私の周りのドイツ人には敬遠している人もいる。

オンライン広告で

元々が高価なものは、もちろん値段をつけて譲ることもできる。

ハイデルベルク時代にお世話になっていたバレエの先生が独立し、自分の教室を開いたときの話。壁に並んだバレエ用のバーはオンラインで探し、中古品を格安で買い取ったのだという。新しく開くバレエ教室もあれば、閉まってしまう教室もあるわけで、そうしてうまく次の世代の手に(バトンならぬ)バーが渡っていくようだ。

しばらくして、広いスタジオの一角にアップライトピアノが置かれた。プロのバレエ団であれば当たり前だが、ピアノの生演奏に合わせてレッスンするというのは、趣味のダンサーにとっては憧れの一つである。先生ずいぶん奮発したなぁと思っていると、買ったわけではないというので、生徒みんなでびっくり。

これもオンラインの広告で見て、知らない人からタダでもらったのよ

何かを譲りたいときに個人が広告を出せるサービスは色々あるが、おそらくドイツで一番知られているのはeBay Kleinanzeigenだろう。ほしいものがある人は、自分の住んでいる地区や探しているものを入力し、近くでそれを譲りたい人がいないか簡単に検索することができる。(それにしても、ピアノをタダで譲ることにした人の経緯が気になるところ…)

私もアカウントを作成して広告を出したことがある。ハイデルベルクのアパートからベルリンへ引っ越す際に、自分で買ったIKEAのワードロープを処分したかったのだが、まだ綺麗な状態だったので、捨てるにはもったいなかった。定価129ユーロだったところを50ユーロで譲ることにし、他の広告でもよくあるように、「自分で引き取りに来てくれる人限定」とした。何枚かの写真を付けて広告をアップロードすると、それから数時間の間に8件もの問い合わせがあったので、すぐに広告を取り下げた。この掲示板をチェックしている人がいかに多いかがよくわかる。

ワードロープの写真2枚と、中古の値段、サイズなどの説明
私が出した広告

最初に問い合わせメールをくれたドイツ人の女子学生と話を進め、翌週には、彼女の友人達も一緒にぞろぞろと工具を持ってやって来た。自分で組み立てるIKEAの家具のいいところは、解体するのも簡単なことで、あれよあれよという間に数枚の板と部品に分解された私のワードロープは、若者達に担ぎ出されていったのだった。

思い入れのあるものや高価だったものを手放すときでも、捨てるのではなくて必要としている人に譲ると思うと、気が楽になりますね。こうしてゴミが減るのは環境保全にも繋がります

ドイツ考察
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