ほしかった家具をベルリンで拾った話

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ある日、あるとき、ある曲がり角で

気がつけば毎年のように引っ越している私だが、最近ようやく長期的に暮らす予定の場所に落ち着いた。このブログにも度々登場している、旧東独出身のベルリーナー・Dが元々住んでいるアパートに私も移ったかたちだ。

その引越し作業中に、自分の目を疑うようことがあった。

同居人Dが元々持っている横長のIKEAのデスクは、脚が片方にしか付いておらず、反対側は同じ高さの引き出しで支えるデザインになっている。しかし数ヶ月前、大型のモニターとサウンドバーを購入してその上に置いたところ、段々とデスク中央のひずみが気になるようになった。

真ん中も支えられるように、別売の引き出しをもう一つ買わないと、いつかバキッとデスクの板が折れそう…

そこでIKEAのウェブサイトを何度も見たが、引き出しはずっと品切れになっている。仕方がないので、丸椅子の上に厚手の本を重ねてデスクの下に置き、暫定的な支えにして、引き出しが再入荷するまで待つことにしていた。

そうこうしているうちに私が引っ越してくる日となり、私の前のアパートから荷物を自分達の手で移動させた。元々同じ地区に住んでおり、普段なら歩いていく距離なのだが、大きなスーツケースやリュックがあったので、Dの提案で2駅分だけトラムに乗った。

そして停留所から10分くらいの距離を、スーツケースをゴロゴロ引きながら歩いていると、ある曲がり角に、何だか非常に見覚えのあるものが…

これってまさか…ずっと探していたIKEAの引き出し…?!

そう、なんと突如として、私達が数ヶ月前から探していた家具が、目の前に現れたのである。まさしくほしかったモデルの、ほしかった色!状態も悪くない。

ここが日本だったら、道端に打ち捨てられている(ように見える)物に手をつけようとは思わないだろうが、ここはドイツ・ベルリン。不要だけれど単にゴミにするには惜しいものを、道に出しておくことは普通であり、それは「自由に持っていってください」というサインなのである。

曲がり角の建物の横に、ぽつんと一つだけ置かれている白い引き出し
それにしても唐突な登場

思わぬヘルプ

こんな偶然ってあり?!引っ越し祝いに空から降ってきたプレゼントみたい」と興奮状態の私と同居人D。たまたまその時間帯にその場所を歩いていたからこその幸運。普段は乗らないトラムに乗って、歩くルートが変わったのも良かった。

しかし引き出しを運んで帰ろうにも、そもそも私の引っ越し荷物で手が塞がっていたため、一旦Dは自分のアパートまで戻った。その間私は、他の人が拾ってしまわないように引き出しの横で待機。

しばらく経ってDが戻ってきたとき、石畳の道をなぜかガラガラという音がこちらに近づいてきた。「ん?」と薄闇の中で目を凝らすと、なんとDは大型のショッピングカートを押していたのである。

それどうしたの、と目を丸くした私に、Dはちょっと決まり悪そうに笑った。

なんでかわからないんだけど、アパートの前に転がってたんだよ。ちょっと恥ずかしいけど、引き出しを運ぶのにちょうどよさそうだから持ってきた

よく見ると、私達のアパートと道路を挟んで向かい側にあるスーパーのカートだった。おそらく住民の誰かが大量に買い物し、荷物を自分のバッグに詰め替えるのが面倒だったので、そのまま家までカートで運んできたのだろう。何とも自由である。

やはりどこかへ持っていってしまう人がいるためか、ドイツのスーパーのカート置き場では、カートがチェーンで繋がれて列になっている場合が多い。コインを差し込むとチェーンが外れ、カートをちゃんと列に戻して繋げるとコインが返ってくる

欧米のスーパーに行ったことがある人はご存知だと思うが、こちらのカートは大人一人がすっぽり中に座れそうなほど大きい。Dと私がよいしょ、と引き出しを持ち上げて横に入れてみると、ちょうど綺麗に収まった。わずか10分弱の距離でも、手で運ぶには相当重かったので、カートがあって助かった。

そのままガラガラとアパートの前まで引き出しを快適に運び、4階にある部屋までは何とか二人で担いだ。ドイツではエレベーターのないアパートも多いので、こういう時は大変である。

その後、ショッピングカートをスーパーまで返却しにいき、引き出しを綺麗に拭いて消毒し、デスクのひずんでいた部分の下に入れた。専用の引き出しなので当然なのだが、ジャストフィット。デスクの板は綺麗に真っ直ぐになった。

横長のデスクの下に並んだ同じモデルの白い引き出し
真ん中の引き出しが拾い物

Dも私も生活に困っているわけではないので、普段は進んで道端のものをもらってくることはないが、まさしく探していたものが見つかるなんて、今回ばかりは幸運としか言いようがない。ほしかった家具を道端で見つけたり、アパートの前にショッピングカートが転がっていたり…ベルリンという街は本当に何があるかわからない

何でもありのベルリン

話が逸れるのだが、いかに「ベルリンでは何でもあり」なのかについては、ベルリーナー達は色々な話のネタを持っている。端的に言えば、いかに変わった人が多いかという話である。ただし治安が悪いわけではないので、非常にユニークではあっても危険な人ばかりではない。

カリスマ的な人気だったクラウス・ヴォーヴェライト前ベルリン市長が、パーティー好きなゲイとして知られていたことからしても、ベルリーナー達のオープンさが窺えるだろう。

私が実際に遭遇した人で言えば、電車の中で黙々と太極拳の練習をしている若い男性(おそらくドイツ人)。周りの乗客達は少し距離を空けて見守りつつ、「まぁここベルリンだからね」と言い、そこまで気に留めていない様子だった。

その他にも、新型コロナウイルスにより、公共交通機関でのマスク着用が義務化された2020年春、私の友人は電車ですごい男性を見たそうだ。新たなドイツ文化・マスクという記事でも書いたように、もともとマスクというものが日用品ではなかったドイツでは、当初「口と鼻を覆うもの」(Mund-Nasen-Bedeckung)であれば可とされていた。よって色々な斬新な解釈があったわけだが、その男性は、頭部に紐を巻いて、そこからルーズリーフ型のクリアポケットを垂らしていたのだという。ドイツのクリアファイルなどは日本と比べてペラペラなので、息をするたびに、ふーっふーっと透明なファイルが少し捲れ上がり、私の友人は笑いをこらえるのに必死だったらしい。

私は前回の引っ越しも今回も、友人や同居人にも手伝ってもらいながら、すべて手で荷物を運んだ。夜逃げするような大荷物だったり、両手で鍋を持っていたり、洗濯物干しを抱えていたり、様々な格好で公共交通機関で移動したが、変な目で見られることはなかった。まぁ、もっと上をいく変な人が他にたくさんいるので、当然かもしれない。

私が唯一ベルリンで警察に声を掛けられたのは、地下鉄で前に立っていた若い女性の腕に蜂がとまってしまいパニックになっていたので、私のショッピングバッグの中に捕獲して助けたものの、蜂がそこから出ていってくれずプラットフォームでショッピングバッグを振り回していたとき…笑

閑話休題。

ベルリンという街では特に色んなことが起こりうるという話はさておき、「不要なものを他人に譲る」というのは、ドイツの習慣の一部になっている。日常的に見かける取り組みについては、また別の記事でまとめてみたい。

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