ドイツで普及していない○○
突然だが、今回の記事はクイズから始めたいと思う。
…「冷蔵庫」、はもちろんどのドイツ人の家庭にもある。
…「電気ポット」、は日本のような保温機能はないが、ドイツでも電気ケトルが普及している。
保温機能がないのは、日本茶のように、何度もお湯を注ぎ足しながら何かを飲む習慣がないからだと思います
……「炊飯器」、と答えた方、正解!これは言わずもがな、ドイツでは米よりもパンやじゃがいもやパスタを主食にすることが多いからだ。
実はもう一つ正解がある。こちらの方が炊飯器よりも意外に思われるだろう。
それは…「電子レンジ」!
ドイツ連邦統計局(Statistisches Bundeamt)の統計によると、2021年時点で、電子レンジがある家庭は73.8パーセント。逆に言えば、10の家があったら、2~3の家は電子レンジを持っていないという計算だ。
同年のコーヒーメーカーの普及率が82.1パーセントだから、ドイツではコーヒーメーカーよりも電子レンジを持っている家庭の方が少ないということになる。
私の友人でも電子レンジを持っていないドイツ人が多数いるが、理由を聞いてみると、「特に必要がない」「電磁波が体に悪そう」「食品の栄養素が壊れそう」といった声があった。後半二つに関しては、私が調べた限り科学的な根拠はないようだが、エコ意識が高く化学物質にも敏感なドイツらしい、と何となく思ってしまう。
本来はまったく別のテーマのはずだが、なるべく有機栽培の野菜や果物を買ったり、原発反対派の人が多かったりするのと、どこか繋がっている気がする。電子レンジOKと表記されていても、プラスチック素材の容器に入れて食材を温めることには、特に抵抗があるようだ。
日本で普及していない○○
次に、逆のパターンのクイズも考えてみよう。
勿体ぶらずに答えを言ってしまうと…
それは「備え付けのオーブン」。電子レンジがない家庭では、何かを温め直すときにも大活躍する。
ドイツでは男女を問わず、週末になるとケーキを焼く人が多く、オーブンを使うというのは日常生活の一部である。以前ブログ記事にもまとめたが、誕生日などお祝い事があると本人が周りにふるまう習慣なので(詳細は「何でも自分で祝うドイツ」をどうぞ)、若い頃からお菓子作りに慣れている。
甘いものより塩ものが好きな私の同居人Dは、パイ生地にピザソースと具をのせてくるくる巻き、輪切りにしてオーブンで焼いた一口ピザを、よくケーキの代わりに配っています
私も「料理する(kochen)」より「オーブンで焼く(backen)」方が好きである。ドイツ語では「Ich backe gerne(焼くのが好き)」とだけ言えば、「オーブンを使ってお菓子やパンを作るのが好き」という意味として伝わる。
もちろんお菓子以外にも、大きな肉の塊を焼いたり野菜をグリルしたり、オーブンを使用するレシピが豊富である。
一方で、日本だと、オーブン機能やグリル機能も付いているオーブンレンジを持っている家庭は多いと思うが、備え付けオーブンがある家は少ないだろう。私も日本で一人暮らしをしていた頃は、オーブンレンジでケーキやグラタンも焼いていた。
その流れで言うと、日本ではオーブンの代用としてトースターを使っている人も多いと思う。大きなものでなければピザやクッキーも焼くこともできる。
ただしここでも日独の違いがある。横向きに食べ物を入れられる、いわゆる日本の「オーブントースター」は、ドイツでは普及していないのだ。
ドイツで見るのは、スライスしたパンを焼くだけの縦型のポップアップ式トースターである。
ドイツの家にはほぼ必ずオーブンがあるのだから、確かに「オーブントースター」を持つ必要性は高くない。それでも私は、トーストにチーズをのせて焼いたり、クロワッサンを温め直したりするのに、余熱なしですぐに使えるトースターはやはり便利だと思い、数年前にインターネットで探して購入した。
同居人Dはオーブントースターを使ったことがなかったそうで、上が焦げやすいものにはアルミホイルをかぶせることを知らず、色々と焦がしていました…
○○を多用しがちな日本
最後にクイズをもう一問。
ヒントになるかもしれないのは、エコ意識の高いドイツでは、なるべくゴミを出さないように気をつけている人が多いこと。
正解は…食品用の「ラップ」。
半分に切ったトマトや玉ねぎなど、日本であればまず間違いなくラップで包むだろうものも、そのまま冷蔵庫に入れてしまう(そして当然ながら切り口が乾燥する)。食べるまでにかなり時間があっても、調理済みのものをそのままテーブルに出していることも多い。
日本ではあらゆる場面でラップを使うが、ドイツでは「短時間の保存のためにゴミを出すなんて」と思われかねない。この国では使い捨てプラスチック容器の使用も原則禁止されているほどである。ドイツ人がラップを使うシチュエーションは、お皿に食べ残しがあるときや、何かを持ち運ぶときなど、かなり限られている。
そのためか、ラップの使い方に慣れていないことに、私が驚かされたエピソードがある。以前、ドイツ人の友人たちに「Mochiの作り方を教えて」と頼まれた。Mochiといっても日本人が想像する餅ではなく、中に餡やクリームが入った大福のことで、最近ではドイツでも大人気。
電子レンジを持っている友人の家でレクチャーすることになり、私は求肥の材料をボウルに入れてラップをかけ、レンジで温めようとした。それを見ていたドイツ人の友人が「わあああぁぁぁ」と叫び声を上げた。「ラップ取らないと!温めたら溶けるよ!!」という。横にいた別のドイツ人も同じ反応だった。
私が冷静に、「いやいや、このラップは電子レンジに対応していて溶けないから。日本ではみんなラップしたまま電子レンジに入れるよ」と言っても彼らは半信半疑。実際にそのまま温めてみて、ラップが溶けていないのを見ても、体に害はないのかと少し不安に思っている様子だった。
ちなみに、ドイツ製の安いラップは耐熱温度が80度くらいと低いので、確かに電子レンジに入れない方がよいそうだ。電子レンジ対応と表記してある商品を選べば安心。よく出回っているドイツ製のものはペラペラで、お皿にかけてもくっつかず、日本製のラップの方がはるかに品質が良い。
日々の生活に欠かせないキッチンの環境からは、様々な日独の違いが見えてきますね
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