ドイツ式外注のすすめ:介護と育児の視点から

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ドイツの暮らしやすさ

ドイツ式に慣れると、日本よりこちらの方が暮らしやすいねぇ

という声を、特に家庭を持っている日本人の知り合いからよく聞く。これはどうしてなのだろう?

色々な要因があるが、私見では、ドイツ人は誰かに仕事を任せるのがうまいと思う。会社の業務委託、つまり外注だけではなくて、家庭レベルでも任せられることはどんどん外に任せる。これは、別の記事にまとめた分業の精神とも結びついているだろう。ドイツ人は、自分の仕事と認識したこと以外には、全く手を出さない傾向がある。

ここでは、家庭レベルで仕事を外注するドイツの様子を、特に介護と育児の側面から紹介する。日本が学べる部分も多いと思うと同時に、よく考えてみると、それを妨げるだろう文化的な特徴も見えてくる。

在宅介護の可能性

私の古馴染みであるドイツ人Cのお祖母さんは、数年前に90代で他界されるまで、一軒家で一人で暮らしていた。一人で、と言っても、高齢で身体が自由に動かなかったので、ドイツ人の女性と、ルーマニア人の女性が、交互に住み込みでお世話をしていた。すぐ近くにCの伯母さん(お祖母さんの長女)の家もあって、なるべく毎日顔は出していたが、同居することはせずに、お世話はプロの2人に任せていた。それを初めて聞いたとき、私は思わず、

お手伝いさんが2人もいるなんて、おばあちゃん、お金持ちなんだね!

とコメントしたのだが、私の反応にCの家族はみんな笑っていた。「特別なことじゃないよ」と。私も何度か遊びに行かせてもらって、確かにお祖母さんは裕福な方だったと思うが、大富豪だったというわけではない。

後でドイツの介護事情に詳しい専門家の話を伝え聞いたところによると、ドイツでは、いわゆる老人ホームよりも自宅での介護を選ぶ人の方が多いそうだ。本人も住み慣れた環境にいられるし、実は家族にとっても、その方が経済的な負担が少ないという。

かといって、家族(息子や娘)が全てお世話をしなければ、という社会的な圧力はなく、ケアワーカーを雇うことがごく一般的。ドイツで介護職に就いているのは、ポーランドやルーマニアなど東欧出身の女性が多い。Cのお祖母さんのように、住み込みで、という場合には、介護だけではなく料理・洗濯・掃除・買い物なども全てお任せ。家族になるようなものだから、信頼関係が大切なのは言うまでもない。Cの家族は、お祖母さんが他界して、家を売却した後も、お手伝いさん2人との交友関係を続けている。

大勢で囲む食卓とドイツ料理
お祖母さんの家に親戚が集まった日の昼食。これもお手伝いさんが作ってくれた

ドイツと同じく少子高齢化、介護分野の人手不足という問題を抱える日本にとっても、今後こういった介護のかたちが選択肢になればと思う。現在も東南アジア出身の外国人ケアワーカーについてよく報道されているが、ドイツでの東欧出身者のように、日本で彼ら・彼女たちの姿を普通に見かけられるようになるまでには、日本語教育など、まだまだ問題が山積している。

一人で頑張らない育児

助けてもらえる部分は、お金を出して頼んでしまおう、と考えるのは育児でも同じ。ドイツは共働きの夫婦が多いが、それでも育児と家事をなんとかこなせるのは、外部からの助けを得ていることも大きい。ベビーシッターは学生に人気のあるアルバイトだし、平均的な収入の家庭でも、週に1度くらいお掃除の人に来てもらうのは普通のこと。

私がベルリンで親しくしているドイツ人家族は、旦那さんはIT関連の仕事で在宅勤務の日も多く、奥さんは今は職業に就いておらず、小学生の息子と赤ちゃんの面倒を見ている。ごく一般的な4人家族である。それでも定期的にお掃除の人に来てもらい、必要があるときにはベビーシッターも雇っている。

私も時間があれば顔を出して、家事や子どもの送迎のお手伝いをしているが、奥さんはよく動き回る赤ちゃんにほぼ付きっ切りの状態で、他のことになかなか手が回らないので、いつも感謝してくれる(洗濯物を畳んでいると、旦那さんのパンツなんかも出てくるので、いいのかしら…??と思ったが、誰も気にしていない模様)

桜が綺麗な庭とベンチ
友人家族のマンションの中庭。ドイツでは赤ちゃんを外の空気に触れさせることを大事にするので、ベビーカーに乗せてここでお昼寝させるのも私の役目

もちろんドイツでも、まず助けを求める先は自分かパートナーの両親。しかし、すぐ近くに住んでいないことも多い。ドイツは日本以上に核家族化が進んでいて、私の知り合いを見回しても、3世代で共に暮らしている人は誰もいない。子ども達も、大学に入る歳になると、(たとえ大学が隣町であっても!)親元を離れて暮らすために引っ越していく。

ウチとソトの問題

おそらく、上記のような専業主婦の家庭が家事代行サービスを利用していると、日本だとびっくりされる、というよりも非難されるかもしれない。でも、育児はオンオフの切り替えができない分、ある意味でフルタイムの仕事よりも大変だと思う。どこかで手を抜いたり、誰かに代わってもらったりしないで、1人で全てやろうとすると、いつか限界に達するだろう。

日本では、育児でも介護でも、身内でどうにかしようとする場合がほとんどだと思う。仕事を外に頼むことは、責任放棄、無駄遣い、または怠慢だと思われる風潮がある。効率的な分業だ、とドイツのようには割り切れない。

それと同時に、他人を家に入れることに抵抗があるのではないだろうか。他の国から来た人のことをガイジンと呼ぶことにも象徴されているように、日本では無意識のうちに『ウチ』『ソト』とはっきり境界線を引く文化がある。おそらく、外国人ケアワーカーが日本でぶつかる問題の一つもこれだと思う。在宅介護をしようにも、そもそも身内以外の『ソト』から人を入れたくないのに、外国人だと更にハードルが高くなる。

日本と比較して、ドイツはいわば“敷居が低い”。他人を家に招き入れることにあまり抵抗がなく、私の知り合いのドイツ人達は、家族が不在の時にもお掃除の人が来られるよう、スペアキーを渡しているくらいだ。

ホームパーティーをしたり、そもそも誰かを呼ぶのが好きな人が多いし、日本より家が広いので友達が泊まりに来ることもよくある

在独日本人の友人Mさんは、知り合いの紹介でベビーシッターを頼まれて、若い夫婦のところに初めて行ったところ、実はドイツ人の旦那さんから、日本人の奥さんへのサプライズのプレゼントで、2人だけで外出するところだったそうだ。奥さんは若干戸惑いながらも、まだ1歳にならない赤ちゃんに必要なものをMさんに説明してから出掛けたそうだが、「そりゃ短時間でも、初めて会った人に赤ちゃんを預けるのは不安だよね」とMさん談。その点、ドイツ人の旦那さんは何も心配していなかったらしい。

無理しない生活のために

もちろん、自分たちのことは自分たちでしよう、という日本の精神を否定するつもりはないのだが、個人的には、もう少し外に任せてもいいんじゃないかな、と思う。例えばベビーシッターや家事の代行を頼み、自由な時間を持ってお母さんがリフレッシュできれば、また育児に取り組む体力と気力が出てくるだろう。誰かに子どもを預けて夫婦だけで出掛けることもドイツでは普通だが、それも夫婦の関係を良好に保つために大事だと思う。

『ウチ』『ソト』の意識があまりないだけではなく、ドイツでは男性も家事・育児を共同の仕事として一緒に行い、私の男友達でも育児休暇を取っている人が多い。よく1人でベビーカーを押しながら歩いている男性を街中で見かける。「ドイツに来ると、日本の男子を見る目が厳しくなりますよね…」というのは日本人女性の間でよくある会話。

また、社会制度においても個人の負担を減らそうとしている。子どもがいる家庭は、子ども手当など色んな面で優遇されるし、ベルリンに至っては保育園が無料

介護や育児で大変な人が、外部のサービスをすぐに見つけられて、それに頼っても非難されない、日本もそんな社会になってほしいです

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