エジプト紀行①:旅の仲間

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探検隊の結成

私の仕事仲間であり友人の日本人Hさんは、3年の任期でベルリンに赴任している。彼女は1年目から、帰任するまでにどうしてもやりたいこととして、

エジプトに行きたい!!

と意気込んでいた。なぜドイツにいながらエジプトなのか、というと、日本発と比べてずっと近いからである。ベルリン・カイロ間にはエジプト航空の直行便が就航しており、なんと4時間~4時間半で到着する。そしてドイツとは時差が1時間しかないので、体も楽である。

子どもの頃からピラミッドを見ることが夢だったというHさん。任期2年目に入った彼女から一緒に行かないかと誘われ、「確かに人生で一度はエジプトも旅してみたいし、良い機会かも」と思い参加を決意。同じく同僚であり友人の日本人女性Sさんも加わって、具体的に計画を練り始めた。

色々と調べていく中で、「グループに男性がいた方が色々と安心そう」という話になり、私のパートナーであるベルリーナー・Dも仲間に誘って、日本人女性3人&ドイツ人男性1人というエジプト探検隊が結成されたのだった。

一列になってラクダに乗っている女性3人の後ろ姿
カイロでラクダに乗っているHさん・Sさん・私

幸いにもベルリンの職場に、数年間カイロに駐在したことがある日本人男性がいたので、プランニングには彼を顧問として召喚して、細かいことまで相談に乗ってもらった。

渡航時期は1月半ばに決定。北部にあるカイロでも夏は40度を超えるというが、冬は最高気温が平均20度くらいと非常に過ごしやすくなるので、ベストシーズンと言われている。

なかなか大変だった準備を経て無事に渡航し、9日間の旅を終えての感想は、「なんとも濃い経験」だった。旅が趣味の一つである私は、ヨーロッパを中心に30ヵ国以上巡ってきたが、エジプトはその中で一番の“異国(fremdes Land)”だったと思う。

広大なエジプト

エジプトは広大な国で、面積は日本の約2.7倍もある。ただし、地図を見るとすぐにわかる通り、国土のほとんどは砂漠で、海とナイル川に面している部分だけに緑があり、町が連なっている。

世界最長の川であるナイル川は、エジプトを縦断して流れているのですね

エジプト各地にある主な観光地を巡ろうとすると、かなりの距離を移動しなければならない。陸路の他に、クルーズ船でナイル川を移動しつつ旅もできるが、あまり日数がなかった私たちは飛行機も利用することにした。

訪れた都市と移動手段が示されたエジプトの地図
カイロ→ルクソールとアスワン→カイロは飛行機、それ以外はドライバー付きのバンで移動した

私たちは事前にベルリン・カイロの往復便エジプト国内線を取り、ホテルを手配し、あとは日によって単発の現地ツアーを予約していた。ツアー手配はGetYourGuide(ゲットユアガイド)というサイトと、ホテルと提携しているエージェントを利用した。

旅の仲間の4人は役割を分担して、Hさんが金銭管理、Sさんがツアー予約、Dが現地でのタクシー手配(とボディーガード役)、私がホテル予約全体の日程管理を担当していた。

結果としては、パッケージツアーではなく、ある程度手作りの旅行だったことが、私たちの経験を一層濃厚なものにしたのだった。

ヨーロッパの向こう側にある大陸では、こんなに違う価値観や常識で人々が生きているのか…と久しぶりに受けたカルチャーショック。あまりに世界が違うので、ベルリンに戻ってから1週間経つ頃には、エジプトにいたのがもう1ヶ月以上前のことのように思えたものだ。

このブログでは、エジプト観光というよりは、日本とドイツの生活に馴染んでいる私にとって、特に衝撃的だったエピソードを中心に紹介していきたい。まずこの記事では、ネガティヴな経験から始めたいと思う。

観光ビザの買い方

まず、玄関口となるカイロ空港から街中に出られるまでの経験が、最初の洗礼となった。「何が正しいのかわからない」「誰を信用すればいいのかわからない」「でもお金を出せばどうとでもなる」という、不安に近い不信感のような、後から振り返るとエジプト滞在中に一貫してあった感覚を持った。

ベルリンからカイロまでの直行便は一時間程度の遅れを持って到着し、時刻は既に21時だった。

機内の座席モニターに映る女性CAと、うまく注意事項を盛り込んだヒエログリフの柱
エジプト航空のフライト自体は快適。安全ビデオは注意事項(禁煙など)をヒエログリフの中に盛り込んでいてユーモアあり

カイロ空港で入国手続きをする前に、観光ビザを取得、というか購入しなければならないのだが、ここからして何が正しいのかわからない。

事前にオンラインで調べたところ、「25 USドル、現金払いのみ可」というのが公式の情報なのだが(現地通貨であるエジプトポンドは不可)、「ユーロで払えた」という人もいれば「クレジットカードで払えた」という人の旅行記もあり、情報が錯綜していた。

そもそも不思議なことに、観光ビザはカイロ空港に幾つかある銀行窓口で販売されている。これが本当に“販売”という感じで、パスポートとお金を出すと、シール状になっているビザをすぐに受け取ることができる。(事前にe-Visaをオンライン申請することも可能だが、私たちの顧問によると、システム不具合で問題になることもあるので現地で買った方が安心とのこと)

私たちはまず人が少なかった窓口に行ってみたところ、案の定「USドルで現金払いのみ可」と言われた。カードで払いたいのですが、と聞くと、向かい側の銀行ではカードも受け付けていると教えてくれた。

そこで、10人以上は並んでいる向かい側の窓口で待つこと15分ほど、私とDは無事にドイツのカードでビザを購入できた。クレジットカードを忘れてきたSさんは、ユーロで現金払いしていたが、25ユーロ(約27 USドル)を出したところ、幾らかお釣りがエジプトポンドで返ってきた。

一般的にはカード払いの方が現金よりお得なことが多いと思うが、私とDは後で換算額を見てビックリ。非常にレートが悪かったのである。一人25ユーロ以上出している計算だった。

色々とモヤモヤは残るが、ともかく観光ビザをゲットしたので、入国審査の列へ進んだ。やる気のなさそうな担当者はこちらを一度も見ることもなく、誰かと電話しながら、ビザをパスポートに貼ってスタンプを押して終わり。この貼り方もその時の気分によって(?)まちまちで、私たちの中でも、横向きだったり逆さだったりした。

パスポートの右側のページ下方に逆さに貼られた「Entry Visa Fee Egypt」
私のビザは見事に逆さに貼られていた。せっかくなので綺麗に貼ってほしかったのだが…

カイロ空港からの脱出

どうにかエジプトに入国した後、空港内でプリペイド式SIMカード(16GBで10ユーロ以下と激安)を購入し、多少のユーロをエジプトポンドに換金した。

そして建物から一歩出るやいなや、そこで観光客を待ち受けている人の群れに圧倒された。ほとんどがタクシー運転手なのだが、片言の英語で、スーツケースを持って降りてきた外国人観光客の周りに押し寄せてくる。

ここでも、「何が正しいのかわからない」、「誰を信用すればいいのかわからない」、「でもお金を出せばどうとでもなる」という状態。明らかに嘘なのだが、「これがカイロのタクシーの公式の値段でこれより安くなることはない」と一覧表を見せてくる人、「迷わず自分のタクシーに乗るべき」と半ば行く手を阻むように付きまとってくる人など(ちなみに100パーセント男性である)。しかしどの人が言ってくる値段も、事前に調べておいた相場の2~3倍なので、外国人だからと高値を吹っ掛けられていることは明らか。

空港の建物から出たところの人の群れ
見てそれとわかる外国人観光客はすぐ狙われる

着いたとたんこうなることは事前に聞いていたので、私たちは『Uber』を利用するつもりだった。今ドイツでも一般的になってきた配車サービスで、アプリ上で現在地と行先を入力すると近くの車がピックアップに来てくれる。値段も良心的で、事前に金額を確認してカード決済できる。現地の言葉がわからなかったり、特にエジプトのように交渉が必須だったりする国では、特に便利なサービスである。

しかし、配車担当だったDがUberで手配しようとしても、最初は依頼を受け付けた運転手から、「やはり現金でなければ駄目なので予約をキャンセルしてほしい」とメッセージがきて事前決済では乗せてもらえなかったり、空港の建物を出てすぐのところはピックアップに指定できず広い駐車場をぐるぐると歩いて回ったりと、荷物を持ったまま1時間以上あちこち動き回ることに。

結果的にUberでの配車はうまくいかず(「Uberは空港まで入れないからタクシーに乗るしかない」と言ってくるタクシー運転手もいたが真偽は不明)、Uberで払おうとしていたのと同じ値段でOKと言ったタクシーに乗って、ユーロから換金しておいたエジプトポンドで支払った。市街地のホテルまで40分ほど掛かったが、換算すると1000円もしなかったので、日本と比べると驚くような値段だ。

ぐったりしつつホテルに到着したのはもう真夜中に近かった。空港での手続きとタクシー移動にここまで神経を擦り減らせたことは初めて。何より空港で、どうにか自分のタクシーに乗せようとする人たちに取り囲まれ、私たちが無視して通り過ぎようとしてもワーワーと野次を飛ばされるのが何とも言えず不快だった。日本やヨーロッパでこういった経験をしたことはない。

カイロ空港の建物と車が並んだ駐車場
Uberのピックアップに指定できる場所を探して歩き回った空港の駐車場

エジプト滞在中は、なるべく事前に金額を確認できる配車アプリを利用したが、それでもトラブルが何度もあった。カイロのUberでも、他の町で使用したCareemでも同様。

目的地を通り過ぎてしまい、「ここで降ろしてくれればいい」と言っているのに半ば強制的にもう一回りして戻り、その分を課金されたり、降りる時に「やはり空港の敷地に入るのに別料金が掛かったので、その分を追加で現金で渡してほしい」とごねられたり…。どれも「もういいや」とお金をポンっと渡してしまえば済む話ではあったのだが、「それは話が違う」「それは高すぎる」と理性的に判断して、騙されてたまるものかとこちらも意地になると、延々と交渉しなけばならず精神的にかなり消耗した。

妻が3人?

ここまで嫌な思い出しか書いていないのだが、タクシーという繋がりで、最後に笑える逸話を一つ。

日本人女性3人ヨーロッパ人男性1人という私たちの構成は、エジプトでもかなり目を引くものだったようで、関係性を毎回のように聞かれた。

君たちは家族なのか」と聞かれても、確かに私とHさんとSさんが三姉妹でもおかしくないしな、と私はのんきに考えていたのだが、どうやら質問の意図がそうではないことに気が付いたのは、あるタクシー運転手と車内で話していたときだった。

いつものようにDは助手席、女子3人は後ろに座っていたのだが、ドライバーの中年男性がDに向かって「どの女性が君の妻なんだ?全員か?」と聞いたからである。

そうだった、イスラム教徒が多数を占めるエジプトでは一夫多妻も合法…!

Dはぎょっとしながらも笑いつつ、「ぼくのパートナーは1人だけで、あと2人は友達です」と説明していたが、ドライバーは、「そうかそうか、妻が何人もいるとお金掛かって大変だもんな。おれは4人いるからもう大変だよ。子どもたちのためにも頑張って稼がないといけない」と笑っていた。

後から話を聞いたり調べたりしたところ、確かに男性にとって経済的な負担が大きいので、現在では裕福な人でないと2人以上の妻を娶ることはしないようである(そう考えると、このドライバーが4人と結婚しているという話は信じていいのか微妙なところ)。

ちなみにエジプトでは、交際・同居しているが結婚していない、『ガールフレンド・ボーイフレンド』『パートナー』という概念も伝わりにくいようだった。おそらく私の祖父母の時代の日本でも同じような感覚だったのだろうと思う。

いわゆる事実婚も一般的な現在のドイツとはかなり感覚が違いますね

さて、次の記事からは旅の本番。エジプトでしか見られない文化財や光景を紹介する。

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