ドイツ永住権を獲得!後編:実際の申請と意外な結果

スポンサーリンク

永住権申請/郵送と面談

前編では、期限付き滞在許可と永住権との違いや、悪名高き外国人局について説明した。

いよいよ永住権を申請する段になると、一般の滞在許可とは違い、ベルリンでは原則として郵送で書類審査を受けることになっている。外国人局の本局に必要書類を送り、申請条件を満たしていると判断されれば、後日メールにて来館すべき日時が連絡される。

永住権(Niederlassungserlaubnis/Permanent settlement permit)に関するベルリン州の公式HP
Permanent settlement permit (general) - Services - Dienstleistungen - Service Berlin - Berlin.de
Finden Sie Dienstleistungen, Standorte Behörden, Öffnungszeiten und vieles mehr!

永住権を得るための前提は、ドイツに5年以上合法的に滞在して年金を納めていることである。大抵の申請者は被雇用者、事業主、フリーランサーか、ドイツ人含むEU市民の配偶者だと思う。

B1(中級)レベルのドイツ語力と、ドイツの法制度・社会秩序・生活環境に関する基礎知識も証明する必要がある。ドイツに関する基礎知識は、ドイツに帰化するためにも必要とされている「Leben in Deutschland」というテストを受けることで証明できる。

Prüfstellen in Berlin - Test Leben in Deutschland
Prüfstellen in Berlin für den Test Leben in Deutschland

以上が原則ではあるが、ドイツで教育を受けた人は優遇される。私はドイツの大学院を出ているので、就労して年金を納めている期間が2年間だけで良く、ドイツ語力とドイツに関する基礎知識の証明も特段必要なかった。

学位取得後には職探し用の滞在許可が交付されたり、永住権の申請で優遇されたり、せっかく教育した外国人を人材として留めておきたいというドイツ側の意思が感じられますね。ドイツの学費はほぼ無料なので、その恩恵だけ享受して自国に帰られたら、確かに損です

必要書類は、私の場合はその他の滞在許可申請とあまり変わらず、まずは郵送で以下のコピーを提出した。

・有効なパスポート
・証明写真
・雇用契約書、過去6ヶ月の給与明細、在籍証明書
・賃貸契約書
・年金加入情報
・健康保険証
・ベルリンの住民票
・ドイツの学位授与証明書

簡単なカバーレターを付けて書類を郵送してから、待つこと3週間ほど。2月末に外国人局からメールが届き、面談に出向くべき日時(4月上旬)と予約番号、持参すべき書類が書かれた招待状が添付されていた。必要条件を満たさない人にはこの段階で断りの連絡があるそうなので、ひとまず大きな問題はないことがわかり一安心。

しかし、指定された日は休暇でベルリンにいない予定だったので、メールに返信するかたちで変更をお願いしたところ、すぐに予約を5月末に移動させてくれた。指定された時間は朝7時と早かったのだが、仕方がない。当日は5時半に起きて、出勤する前に外国人局の本局へ向かった。

入り口付近は例のごとく物々しい様子で、何人もの警備員がいた。「予約があるか」と聞かれたので、最初にメールでもらった招待状を見せたが、そこにはもちろん元の指定日が書かれている。「違う日じゃないか」と当然突っ込まれたので、担当者とのメールのやりとりを見せて(念のため印刷して持って行ってよかった)、日時を変更してもらったことを説明したところ、二人体制で疑い深くチェックされた末にOKが出て入り口を通された。

本局は複数の建屋に分かれており、通常は国籍によって振り分けられている。私が呼ばれていたのは、アジア諸国を担当しているらしいB棟

ガラス扉の上に大きくBと書かれた入り口
B棟の入り口

待合室にはモニターがあり、順々に予約番号と行くべき部屋が表示される。6時50分くらいに着いて待っていると、7時ちょうどにさっそく私の番号が表示された。

担当してくれた若い男性は、拍子抜けするくらい普通で、「おはようございます」「それでは良い一日を」と挨拶もしてくれた(まぁこれが人として当たり前と言えば当たり前なのだが…)。メールに書かれていた書類をすべて持参していたものの、ほとんど郵送で提出済みなので、改めてチェックされたのは、パスポートと現在の滞在許可証の原本、最近の給与明細と在籍証明書くらいだった。

あとは通常の滞在許可の申請時と同じで、サインをして、左右の人差し指の指紋を小さな機械で取った。それから、滞在許可証のカードの裏に記載するため目の色身長を聞かれるので、口頭で答える。

目の色が本人確認の情報として使われるのは、様々な人が暮らしているヨーロッパらしいですよね

最後に、申請を受理した旨が書かれた書面を印刷して渡してくれた。普段であればこの前後で手数料の支払いとなるのだが、

今日は支払いシステムが故障しているので、料金は口座振り込みでお願いします。後日、料金や口座番号を手紙で案内しますので

とのことで、面談は10分ほどであっけなく終わったのだった。

現在ほとんどの滞在許可証はカード式になっており、ドイツ連邦印刷局で作成された後、外国人局を経由して6~8週間後に郵送で送られてくるため、受け取りに再度出向く必要はない。ついにここに来ることもなくなるのか…と感慨深くなりながら外国人局を後にした。

イスラム教徒と思われる、スカーフを巻いた女性たちなどが待っている待合室
待合室では様々な人が順番を待っている

二種類ある永住権

私が前回から便宜的に「永住権」と呼んでいる無期限滞在資格(unbefristeter Aufenthaltstitel)には、ドイツで無期限で暮らすための定住許可(Niederlassungserlaubnis)以外に、実はもう一種類存在する。EU無期限滞在許可(Daueraufenthalt-EU)と呼ばれるものである。

EU無期限滞在許可(Erlaubnis zum Daueraufenthalt-EU/EU long-term residence permit)に関するベルリン州の公式HP
Alle Dienstleistungen von A-Z - Berlin.de

これはもう一段階高い居住の自由を認めており、ドイツ永住権の機能にプラスして、EU内のほとんどの国で有効である。働く場合には移住先の国で改めて就労許可を申請することが必要な場合もあるようだが、基本的にはEU市民が享受している移動の自由に近い。

特にEU内での移住を考えていない私のような人にとっても、他のメリットがある。ドイツ永住権は、6ヶ月以上継続的にドイツを離れると失効してしまうのだが、いわゆるEU永住権が失効するのは、EU外に出てから12ヶ月後、EU内にいれば6年後である(そしてドイツ以外の国に5年以上滞在していれば、その国でまた新しいEU永住権を申請できる)。

何らかの都合で日本にしばらく帰国しないといけない可能性がゼロでなければ、後者の方が長くドイツを離れることができて安心である。実は申請書類もほとんど変わらないので、ドイツで無期限で暮らしたいと思っている人は、ドイツ永住権よりEU永住権を目指す価値がある。

私も考えていたのだが、問題となったのは申請条件だった。ドイツの学位があれば就労してから2年で申請できる前者と異なり、後者は5年間合法的にドイツに滞在していることが必要。私は5年以上ドイツにはいるのだが、前回外国人局へ行ったときに担当者に聞いたところ、

教育期間は半分しかカウントされません。あなたの場合、3年弱は大学院にいたということなので、5年の滞在期間を満たすまでにはまだ時間が掛かりますね

ということだったので、少しでも早く無期限滞在許可を手に入れて落ち着きたかった私は、ひとまずドイツ永住権を申請し、もし数年後に機会があったらEU永住権に切り替えようかな、と思っていた。

不思議な徴候

さて、面談へ行ってからしばらくして、ちゃんと手数料の支払いに関する案内が郵送で届いた。すぐにオンラインで振り込んでしまおうと手紙をじっくり読むと、何だか思い掛けない単語が出てきた。

あれっ、料金を支払うべき理由が、ドイツ永住権じゃなくて、EU永住権の交付になってる

私は最初に書類を郵送した段階から、ドイツ永住権の申請ということでカバーレターを付けていたし、その名目で呼ばれた面談でも何も言われなかった。まぁこの手紙が間違っているのかな、手数料は同じだろうし…と深く考えずに109ユーロを外国人局の口座に送金した。

それから更に待つこと数週間、面談から1ヶ月半経った頃に、ついに滞在許可証のカードが家に届いた。喜び勇んで封筒を開けると、なんと出てきたのは、本当にEU永住権

顔写真が入ったカード式の滞在許可証と、ベルリン州移民局からの手紙
ついに手元に届いた永住権と、同封されていた手紙

まだ申請条件を満たしていないはずなのに、なぜ私が現時点でこれを取得できたのかは、正直なところよくわからない。一つ言えることがあるとすれば、ドイツの役所の特徴で、担当者によって言うことも違えばしてくれることも違うこと。これは以前、ドイツの分業の精神という記事でも紹介したが、規則に厳しいようでいて、個人の裁量が大きいという個人主義の影響なのかもしれない。

想像でしかないが、おそらく今回の外国人局の担当者は、ドイツ連邦印刷局に私のカードの作成依頼を出す際に、「この人は無期限滞在許可がほしいということだったけど、学生の期間を半分にしてももうすぐ滞在期間が5年になるし、まぁドイツだけじゃなくてEUで有効な方を出してあげるかな」と気を利かせてくれたのではないか。私としては幸運だったことだけは間違いない。

永住権とドイツ国籍の違い

念願の永住権を手にして、これで毎年嫌々行っていた外国人局ともついに縁が切れるのかと思うと、ものすごい解放感である。「永住権を自力で獲得する」というのは、自分の意思でドイツへ移住した私にとって長年にわたる目標だった。

つまり、自分の力で生活の基盤を築いて、この国の社会に溶け込み、ドイツから「あなたはずっとここにいていいですよ」と言ってもらいたかったのである。個人的なこだわりでしかないのだが、ドイツ人と結婚することで滞在を認めてもらい、配偶者=自分がドイツにいられる理由、になるのは私にとっては違うな、とずっと思っていた。

ところで、無期限滞在許可証は一生更新しなくていいのかと言うと、これは厳密は言えば正しくない。というのも、永住権のカードにはパスポート番号が記載されているので、10年毎にパスポートを更新したら、カードの方も変更してもらう必要があるのだ。

ただしこれはそう難しくはなく、外国人局ではなくて普通の住民局で更新できる。パスポート更新のようなもので、再審査はないので、ごく簡単である。規模の大きなベルリンは複数の地区に分かれており、それぞれに住民局があるが、自分の居住区以外でも同じサービスを受けられるので、場所を選ばなければ割とすぐに予約も取れる。

さて、最後に。当然ながら、ドイツの永住権は国籍とは別物である。永住権を取得しても、ドイツのパスポートが発給されるわけではないし、例えば選挙権や被選挙権はない。あくまで外国人として無期限でドイツで暮らせるという許可である。

また、すでに書いたように、ドイツないしEUを長く離れると失効してしまう(15年以上ドイツに居住していたり、配偶者がドイツ人であったりする場合にはこの制限はなくなる)。

正直なところ、永住権を持っていれば、日本人にとってドイツ国籍を取得するメリットはそこまで多くないと思う。選挙に行けること、公務員になれること、ドイツ人向けの奨学金に応募できることくらいだろうか。ドイツは社会保障の面でも税金の面でも、ドイツ人と外国人を区別していない。

日本の国籍法では、国籍は一つとされているので、ドイツに帰化すれば日本国籍は失われる。日本国籍は自分のアイデンティティと結びついているという人もいるだろうし、ここ数年で国籍が今まで以上に重要となる場面が増えた。新型コロナウイルスにより、世界的に渡航制限が課され、自国の国籍者以外の入国は許可されないという事態が発生したからだ。

以前は日独間の渡航は自由だったが、「日本国籍者以外は特段の理由がなければ日本に入れない」という状態が続いており、ドイツ人も事前にビザを申請しなければならない。ドイツに帰化した日本人も簡単に一時帰国できず不便だという話を聞く。

私は自分自身をやはり日本人だと思うし、日本国籍を失くしたくないので、ドイツへの帰化は考えていない。外国人として、曲がりなりにもここで教育を受け、社会の一員として暮らし、「ずっとここにいていいですよ」とドイツから認めてもらえたことが純粋に嬉しく、ようやく本当の意味でこの土地に腰を落ち着けることができる気がする。永住権の取得は、大きな一つの節目となった。

コメント

タイトルとURLをコピーしました