ドイツのビジネスメールの不思議

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前もってお礼を言うドイツ

ドイツのビジネスメールなどでよく使うが、日本語に訳しにくい表現がある。“Vielen Dank im Voraus.”、「前もって、ありがとうございます」と直訳はなるだろうか。

何かを依頼する文面の最後に書くのだが、つまりドイツでは、お願いとお礼を同時にしてしまうわけである。実際に相手が対応してくれた後に、改めてお礼の文面を送ることは少ない。「対応をお願いします。前もって、ありがとうございます」と送り、相手から「対応しました」と返答がくれば、それでやりとりは完結する。

日本であれば、「対応をお願いします」→「対応しました」→「ありがとうございます」と3回(もしくは、「いえいえ、またいつでもご連絡くださいね」などと更に返して4回)メールをやりとりするところが、ドイツでは2回で終わってしまう。無駄を嫌い、効率的に働くことを大事にする国民性が垣間見られる。

デスク上にあるコンピューター
以前働いていた南ドイツのオフィスのデスク。日本でもドイツでも、今はほとんどの仕事がPC上で行われる

メール本文もドイツの方が短い。「いつもお世話になっております。〇〇会社の××です」といった挨拶文はなく、いきなり本題に入る。「お手数をお掛けしますが、よろしくお願いいたします」のような結びの決まり文句もなく、基本的には用件しか書かない。

逆に日本語ではあまり書かない箇所があるとすれば、「敬具」に相当する結びの言葉。英語でいう“Best regards”や“Yours sincerely”にあたる表現がドイツ語にも色々とあり、相手との親しさやその時の状況によって工夫することができる。間違いがないのは“Mit freundlichen Grüßen”(親しい挨拶とともに)だが、これはフォーマルなので、ファーストネームで呼び合う相手にはもう少しくだけた表現の方がふさわしい。

私は他の街の人にメールするとき、よく“Herzliche Grüße aus Berlin”(ベルリンより、真心を込めて)のように書きます

とりあえずの返信はしないドイツ

ドイツでは、メールで何かを依頼しても、「対応しました」という相手からの確認すらこないこともある。私は最近新しいアパートに移り、管理人に「新しく引っ越してきた者です。入口とポストの名前を変えてください」とメールしたものの、返事がなかった。しかしその日の夜に帰ってくると、ちゃんと私の名前に変えられていたのだった。

上記のケースは、ちゃんと対応してくれたことがすぐにわかるので良いのだが、そうでない場合は少々厄介である。また私の最近の話だが、翌日の歯医者の予約をキャンセルしたくて、クリニックに電話したものの繋がらなかったので、メールを送っておいた。しかし何の返信もなかったので心配になり、翌日の朝早くにもう一度電話したところ、「あ、もうキャンセルされているので大丈夫です」と言われたのだった。

じゃあ一言「キャンセルを受け付けました」と返信くれたらよかったのに…

(日本人的には)くるべき返信がこない、というのはドイツではありがちな話である。日本のように、メールの返信は24時間以内にすべき、という暗黙の了解もない。すぐに返答できない案件は、何日でも何週間でも、何の連絡もしないまま保留されていることも多い。

現在の職場は私以外はドイツ人社員なのだが、私は日本人の顧客対応を担当しているので、この文化の違いで板挟みになることがある。ドイツ人にとっては、日本式のメールのやり取りは無駄が多い。日本人にとっては、ドイツ式だと進捗がわからず不安になる。

ドイツ人の同僚に回さないといけない案件がくると、「とりあえずその日のうちに返信する」という日本の感覚が彼らにはないので、私から日本の顧客に「お問い合わせありがとうございます。担当者が対応中ですので少々お待ちください」と返信するようにしている。これはドイツ人からすれば過剰サービスだろう。

聞くのはタダ、の精神

最低限のやりとりだけで成り立っているようなドイツのコミュニケーションだが、いいことがあるとすれば、問い合わせるのは自由、という考え方だということ。プライベートでも、「どうすればいいのかわからないんだよね」と友人に何か相談すると、「何か知っていそうな人に片っ端から聞いてみなよ!」と言われることが多い。

Fragen kostet ja nichts!(聞くのはタダだからね!)

ビジネスでも、何かを依頼したきり相手から反応がなかったら、「どうなっていますか?」と問い合わせるのは全く問題ない。というよりも、問い合わせなければ、急いで答える必要がないと思われて、いつまでも返信がこないと思った方がよい。

私がビックリしたのは、ドイツで就職活動をしていたとき。応募書類を送ったものの先方から音沙汰がないので、どうなっているのかなぁとソワソワしていると、ドイツ人の友人たちから「会社に問い合わせてみなよ」と勧められた。

選考状況を問い合わせるの、ドイツだと普通だよ。あまりやりすぎるとマイナスだけど、気に掛けている様子を見せるのは、それだけこの仕事に興味があります、って熱意を伝えられるし、プラスに思われるから大丈夫

分業意識が強く、担当者がはっきり決まっているドイツでは、求人にも担当者の連絡先が書かれていることが多い。しばらく待っても連絡がない場合、その問い合わせ先に電話かメールをしてみるのは問題ない。私も問い合わせたことがあるが、「まだ書類選考の途中なので、今月末までには連絡しますね」などと回答をもらえた。

友人たちに勧められて更にビックリしたのは、不採用の通知に対して問い合わせを送るのもアリ、ということ。「今後のために、どうして不採用になったのか知りたい」と返信すると、ちゃんと理由を教えてくれる場合がある(教えてくれない場合もある)。個人的な経験では、「同業種の経験者を優先させたから」や、「長く傷病休暇で空いていたポジションだったのだが、その人が復帰することになったから」などと返事をもらった。

日本だったら、どうして採用されなかったのか知りたい、と問い合わせるのは、しつこいと思われるか、失礼だと思われそうなので、なかなかできないだろう。しかし、もし理由を聞くことができたら、確かに気持ちが落ち着くこともある。

ドイツ人の友人で、一度は不採用になったものの、その理由を聞こうとコンタクトを続けているうちに、他の部署の似たポジションで採用された、という強者もいる。聞くのはタダ、というドイツの精神、あなどれない。

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