自由すぎるドイツの結婚式

スポンサーリンク

ドイツ人が戸惑う、日本の結婚式

ドイツ企業の日本法人に勤めていた頃、仲の良い日本人の同期が結婚した。その上司だったドイツ人の部長も結婚式に招待されていたので、私は通訳も兼ねて隣に座っていたのだが、チャペルでの挙式、披露宴と式が進み、お開きとなる頃、彼は目をパチクリさせた。

えっ、もう終わり…??

全体の所要時間は3時間半くらい。2次会もなかったので、ゲストたちは次々と帰っていく。

私自身、ドイツの友人たちが結婚するようになってから、その上司が戸惑った気持ちもわかるようになった。というのは、ドイツで結婚式といえば丸一日掛かりのイベントで、とにかく長い

その他にも、ドイツの結婚式には、日本では考えられないような特徴がいくつもある。この記事では、以下のポイントを一つずつ見てみよう。

  • 2種類の結婚式
  • 夜中まで続く
  • 何もかも自分たちで手配
  • ドレスはレンタルではなく購入
  • お祝儀は自由に工夫

役所と教会で

ドイツで結婚式というと、大きく分けて2種類ある。1つ目は、全員がしなければならない、戸籍局(Standesamt)での婚姻手続き。2つ目は、教会での愛の宣誓。日本でいう、入籍と挙式に近いと考えればわかりやすいかもしれない。どちらも、その後にパーティーが催されることが多い。

近年では教会での式を行わないカップルも多いので、戸籍局だけで結婚式をする場合には、その場にゲストも呼び、花嫁さんはウェデングドレスを着ていく。ただ窓口で書類を提出して終わり、というわけではなく、個室に通されて、担当者が一連の婚姻手続きを取り仕切ってくれ、希望すれば指輪の交換もその場でできる。

ドイツの市役所などは、煉瓦造りの綺麗な建物のことも多いが、最寄りの戸籍局が気に入らなかったり、どちらかの実家近くの方が都合が良かったりする場合には、他の街で結婚することも可能。

一方で、その後に教会でも結婚式をするのは、宗教上の理由などから、必須ではない。これも上記のドイツ人の部長が不思議がっていたことの一つだが、日本のような“なんちゃって”チャペルはドイツにはなく、神の前で愛を誓うからには、クリスチャンであることが前提である。

「あの日本語を喋る神父さんは本物なの?」と部長に聞かれて、返事に詰まった…笑

教会でも式をするカップルだと、役所での婚姻手続きは、スーツとワンピースなどで正装はしていくが、列席するのは家族くらいで、こぢんまりと済ますことも多いようだ。私の友人カップルは、4月に婚姻手続きをし、同年8月に教会で式を挙げたが、前者のビデオを見せてもらったところ、広々とした役所の個室に椅子が並べられ、家族・親類10人くらいが手続きを見守っていた。

ちなみに、戸籍局の担当者は、場所によっては出張もしてくれる。また別の友人カップルは、ハイデルベルク城で(!)とても素敵な結婚式を挙げたのだが、その場に戸籍局の男性が来て、婚姻手続きを取り仕切り、ちょっとしたスピーチもしてくれた。

テーブルに向かっている新郎新婦と、役所の男性
書面にサインをして、愛を誓い、正式な夫婦となる

とにかく長い

ドイツの結婚式は土曜日の昼間から行われることが多いが、もし招待されたら、その日一日…いや、次の日まで空けておくようにしよう。というのも、少なくとも夜中まで、場合によっては明け方まで続くからだ。

私が初めてドイツ人カップルの結婚式に出席したのは、2人の出身地であるドイツ西部の小さな町だった。かなり大規模で200人近くいるゲストを、地区の家々で分担して泊まらせることになっていると聞いて、「そんなに遠方から来る人ばかりなのかな」と最初は首を傾げた。

しかし、14時から始まったプログラムが、とっぷりと日が暮れてからも続き、深夜0時になってようやくケーキカットが始まった頃、その意味を理解した。

みんな徹夜前提なのか…!!

最終的に、パーティーがお開きになったのは明け方4時くらい。もちろん、小さなこどものいる家族や、どうしてもその日のうちに帰らなければいけない人は、先に帰路に着いたが、それなりに年配の新郎新婦のご両親も、最後まで元気に飲み食いしてダンスを踊っていた。私はその後、新婦の実家に泊まらせてもらったが、もちろん昼間まで熟睡。

暗いホールの中で、ライトに照らされて踊る新郎新婦
真夜中、新郎新婦によるファースト・ダンス。この日のためにダンスレッスンに通うカップルもいる

手作りの式

ドイツの結婚式は、日本のように決まった流れがあるわけではない。基本的には、ウェディングプランナーもいなければ、司会者もいないので、一から自分たちで好きなように手配する。

言うは易く行うは難し。それなりの規模の結婚式を挙げようと思うと、やるべきことは多岐にわたり、長い準備期間が必要になる。戸籍局のアポイントと必要書類を揃えることから始まり、(場合によっては)教会の予約、招待状の作成、挙式後のパーティーをする場所探し、お花の手配、料理とウェディングケーキの注文、音楽家の招待、ヘアメイクの打ち合わせ…。もはや一大プロジェクト。パーティー会場の飾り付けも自分たちでするので、こだわりだすと、いくらでも時間を掛けられる。

食事の席に置いてある食器類と名札
新婦が一つ一つ手書きしてくれた名札

大抵の場合、戸籍局または教会での挙式と、パーティーとの間に、シャンパンでの乾杯(Sektempfang)があるのだが、ここで出される軽食も、新郎新婦やその家族が用意することもある。私の仲の良い友人は、シャンパンに入れるための氷をジュースで作ろうと思いたち、当日までに地道に800個も用意していた。また別の友人は、軽食を出す代わりに、ゲストに手作りケーキを持ち寄ってもらい、ケーキビュッフェのようにしていたので、ゲストの力を借りるのもありかもしれない。

テーブルの上に並べられた軽食
Sektempfangで出された手作りの軽食

食事は、フレンチ風のコース料理のこともあれば、人数が多いとビュッフェ形式のこともある。8月に参加した結婚式では、レストランの屋外でシェフがお肉などを焼いてくれるBBQ風ビュッフェになっていて、美味しかった。

パーティー自体もゆっくり進行していって、日本のように次々とプログラムがあるわけではない。司会者もいないので、新郎新婦が時々何かアナウンスをしたり、家族や友人達がちょっとした余興をしたりするくらいである。ゲストは自由に談笑しながら食事を楽しんだり、それが一段落するとダンスに参加したりする。

「準備が大変で…」というのは、結婚式前のどのカップルからも聞く言葉だが、ドイツ人は何でも自分で祝うという記事にも書いたように、日本人と比べて、普段からある程度オーガナイズに慣れている人が多いのも事実だと思う。

ウェディングドレスの不思議

日本人にとって不思議なのは、ドイツではウェデングドレスを購入するのが普通、ということ。「一生に一度しか着ない(はずの)ものを買ってどうするの?」と思うのだが、ドイツ人の友人何人かに聞いてみると、

とりあえず記念に取っておくしかないね〜。いつか娘が着てくれたら素敵だけど、流行も変わってるだろうしね…

という反応だった。大きめの街では、必ずドレスを販売しているお店を見かける。

このウェデングドレス・ショッピングというのは、花嫁さんにとって一大イベント。そして、花婿は、結婚式当日までドレスを見てはいけない習わしになっているのだという。ドレス選びには、母親や姉妹、女友達など、女性だけが付き添うのが普通。

私のバレエ教室の仲間だったドイツ人女性は、近場で気に入ったドレスが見つからず、車で5時間ほどかけてミュンヘンの大きなお店まで買いにいっていた。女友達3人を連れて、わいわいドレスを選び、楽しい遠出だったという。

プレゼントも自由

自由なのは、結婚式自体だけではなく、ゲスト側も同じである。服装も日本ほど気にしなくて大丈夫で、ちょっと綺麗めの格好であれば、基本的に何でもよい。

面白いのは、新郎新婦に渡すプレゼント。特に決まりはないものの、お金を包む人も多い。ただし、専用のお祝儀袋などが売っているわけではないので、みんな色々と工夫して、紙幣で折り紙をするのもOK。試しにインターネットで、“結婚式・お金のプレゼント・折り紙”とドイツ語で検索してみると、色々なアイディアがヒットする。

交差して、リボンで結ばれた2つの指輪
先日私が友人カップルにプレゼントした、紙幣で作った結婚指輪

招待状を出す時に、「できたらこれがほしいです」と希望を添えるカップルもいる。ある友人カップルはインターネットのリンクを載せており、アクセスすると『新居のためにほしいものリスト』というのが出てきた。食器や家電製品など、ゲストは予算に合わせてプレゼントを選んで準備できる。これをプレゼントしよう、と決めたら、リストにチェックを付けられるので、他のゲストが同じものを買ってしまう心配もなく便利。

日本と比べてみると

ドイツの結婚式は、出席する側も体力勝負、という面はあるが、個人的には日本の結婚式よりも楽しくて面白い。手作りなので、新郎新婦の人柄や趣味が強く出ていて、どれもユニークだし、全体的にゆっくり進んでいくので、カップルとゲストが談話できる時間も多い。

日本のように新郎新婦とゲストが対面式で座るかたちの『セレモニー』というよりは、新郎新婦がホスト役になった『アットホームなパーティー』という感じである。

なお、この記事で紹介したのは、一般的な結婚式(挙式+パーティー)についてだが、戸籍局での手続きの後、パーティーの代わりに家族・友人みんなでハイキングに行った、というカップルの話も聞いたことがある。やはり、どこまでも自由である。

コメント

タイトルとURLをコピーしました