コロナ禍でもベルリン国立バレエ

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ベルリン国立バレエの柔軟性

2020年3月以降、休止状態となっていた舞台芸術の公演。ベルリン国立バレエも例外ではなく、バレエが趣味の私はしばらくオンライン配信に慰めを見出していたが、やはり劇場で生の舞台を観るのとは別物である。

パンデミックの渦中、人が集まることは避けるべきとされている状況で、どうしたらダンサー、関係者、観客が劇場で共に時間を過ごすことが可能なのか。現在のベルリン国立バレエの取り組みは、その試行錯誤をよく表している。

まず、ベルリンでバレエを安く観る方法という記事でも紹介した、常に20%割引でチケットを購入できるTanzticket。有効期限は1年間で、本来であれば私のカードは8月末に期限切れになるはずだったのだが、その前にベルリン国立バレエから手紙が届いた。「2020年は公演できない期間があったので、有効期限を2021年1月末まで延長しました」とのことで、新しいTanzticketが同封されていた。

素晴らしいサービス!

バレエもオペラと同じく夏はオフシーズンなので、例年9月から新しいプログラムが始まる。2020/2021年シーズンに入り、ベルリンでは徐々に公演が再開された。

通常はシーズン開始前に1年分がまとめて発表されるプログラムだが、刻々と変化する感染状況と制限措置に柔軟に対応するため、今シーズンは数ヶ月毎に順々に発表されるかたちとなっている。

9月の公演再開時、幕開けを飾ったのは、『LAB_WORKS COVID_19』というオリジナルの演目だった。ロックダウン中にダンサー達が自宅で考えた振り付けを披露し、ソロかパ・ドゥ・ドゥ、多くても6人で踊られるという、ユニークなもの。

私は一時帰国していたため観られなかったのだが、劇場に行った人に聞いたところ、9月はまだ座席数が大幅に制限されており、4~5席とばしで座るようになっていたそうだ。

劇場の様子

私が再び劇場に足を運んだのは10月に入ってからで、『FROM BERLIN WITH LOVE III』を観た。これは、コロナのため全幕物のバレエを上演できなくなってからシリーズ化されたガラ公演の第三弾である。

劇場公演が再開する前の7月には、初回の『FROM BERLIN WITH LOVE』がオンライン公開された。47分くらいと長くはないが、普段とは逆に空の客席を背景にしているのが面白く、クラシックからコンテンポラリーまで濃い内容。

ポリーナ・セミオノワをはじめとするスターダンサーが、恐らく自分が踊りたいものを好きに選んだのだろうな、という雰囲気が伝わってくる。舞台上ではピアニストやヴァイオリニストが音楽を奏で、音楽家の顔も見えるのは新鮮である。

FROM BERLIN WITH LOVE | Digital Gala | Staatsballett Berlin

さて、第三弾の公演時間は休憩なしの2時間と、見応え充分。休憩を挟むとロビーに人が密集してしまうので、意図的になくしたのだと思う。

私はオンラインでチケットを購入したのだが、公演3日前にバレエ団からメールが届き、劇場内ではソーシャル・ディスタンスを保つこと、公演中もずっとマスク着用が必要なこと、咳エチケットを守ることなどの注意事項が書かれていた。

10月には座席数は50%になっており、1席とばしでチケットが販売されていた。しかし、それらが満席になっていたかと言えばそうではなく、客席全体の30~40%くらい埋まっていた感じだった。

ほぼ100%埋まっている劇場の雰囲気に慣れている私は、そのガラガラな様子にちょっと落ち着かない気もしたが、(難しい振り付けや人気のダンサーに向けて)公演中に拍手や歓声が沸いた時の感じから、観客の多くは熱心なバレエファンなのだろうなと思った。今はドイツ国内の移動にも制限があるので、ベルリンまで遊びに来ていて、当日券を買えるかちょっと立ち寄ってみた、という観光客も少ないだろう。

いつもと違うなとは、実際に肌でも感じた。というのも、客席が肌寒かったのである。普段は少し暑いくらいで、ワンピース一枚でちょうど良いのだが、今回は薄手のセーターを着ていてもまだ羽織るものがほしいくらいだった。観客の少なさにもよるだろうし、感染拡大防止のため換気の重要性が説かれる中、換気システムを変更したのかもしれない。

ガラ公演レポート

『FROM BERLIN WITH LOVE III』の開演前には、バレエ団のダンサー1人1人の写真と名前が、プリンシパルから順番に舞台のスクリーンに映し出された。ベルリン国立バレエでは、日本人女性も多く活躍している。

空いている座席と、舞台のスクリーンに映された日本人ダンサー2人の写真
井阪友里愛さん、昨年の『くるみ割り人形』のクララ役も素晴らしかった

そして幕が上がると、「現在の状況では、残念ながらカンパニーの全員が出演することはできないので、その代わりにビデオを作成しました」ということで、前奏曲の代わりに、練習風景などが写されたビデオが流された。マスク姿で廊下を歩いたり、バーを消毒したりしている姿も。6分間くらいの短いものだが、クスッと笑える場面もあり、非常によく出来ている。このビデオは11月になってYouTubeでも公開された。

STAATSBALLETT BERLIN | Meet the Company

本編はソロをはじめとした少人数の踊りが中心だったが、このガラ公演からはコール・ド・バレエ(群舞)も舞台に戻ってきて、『白鳥の湖』第3幕の一部抜粋が踊られた。

コンテンポラリー作品とクラシック作品が代わる代わるプログラムに並んでいたものの、どちらかと言えばコンテンポラリーの比重が大きかったかもしれない。1人のダンサーがモノローグを語りながら踊るような、前衛的なものもあった。

私が大好きなダニール・シムキンも出演した。ハマり役の『海賊』のパ・ドゥ・ドゥの他、フランス語のシャンソンに合わせてスーツ姿で踊るコンテンポラリーのソロも披露。コミカルな役も飄々とこなす彼らしく、楽しそうに踊る姿に大きな拍手が沸いた。相変わらずブレない回転と、いくら高く難しいジャンプでも着地時にドシンっという音を立てない軽やかさ!

その他の(ネオ)クラシック作品からの見どころとしては、ジョージ・バランシン振付『ダイヤモンドのパ・ドゥ・ドゥ』をマリアン・ヴァルターヤーナ・サレンコのプリンシパル夫妻が踊り、素晴らしい安定感だった。

音楽に関して言うと、テクノのような現代音楽も盛り込まれているということは、オーケストラの生演奏ではなく、録音された音源である。生の音楽も大きな楽しみとして劇場に足を運ぶ人にとっては、ちょっと物足りないかもしれない。

それでも全体的には観客の反応も良く、満足度の高い公演だった。普段ベルリン国立バレエは頻繁にガラ公演を行っていないので、ある意味ではよい機会になったとも言える。

次の公演にも期待…と思いきや

久しぶりに生の舞台を見てほくほくした気分になり、来月は『白鳥の湖』だ!と待ち切れずにいたところに、「11月は全国的にロックダウン」という政府の方針が発表され、またしても劇場が閉鎖された。

3月にもキャンセルになった『白鳥の湖』、ようやく観られるかと思ったのに…!!

生きる喜びの一部をウイルスに奪われたような気になるのは、私のようなバレエファン以上に、もちろんダンサー達の方がそうだろう。ちょうどダニール・シムキンがrbb(ベルリン=ブランデンブルク放送)のインタビューに答えていたが、「現役キャリアの長さに限りがある僕たちダンサーにとって、舞台に立てない期間というのは、失われた時間のように思えるのです」という風に話していたのが印象的だった。

Daniil Simkin
Jeder Monat, den er nicht auf der Bühne stehen kann, ist ein verlorener Monat. Daniil Simkin ist ein Weltstar des Balletts: Er war Solist in New York. Jetzt tan...

再び1日でも早く、舞台上で輝くダンサー達を見られることを願うばかりである。

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