ダニール・シムキンを見たい!…が思わぬ展開
ちょうど今シーズン(2018/19)、ダニール・シムキンがABTからベルリン国立バレエに移籍してきた。映像でしか見たことがなかったけれど、私が好きな男性ダンサーの一人。
これは生の舞台で見ないと…!!
実はシムキン、ダンサーだった両親の仕事の関係で少年時代をドイツで過ごしたので、ドイツ語も流暢に話す。ちょっとロシア語のアクセントがあるけれど、それもまたチャーミング。 幼少時に離れたソ連のことは記憶にないため、自分がドイツ人のように思うこともあるそうで、ベルリン生活も楽しんでいる模様。
私がベルリンへ引っ越したのは1月。しかし、彼が出演する2月の『バヤデール』は既に完売しており、念のため当日券を求めて公演前に劇場まで行ってみたものの、やはり何も残っておらず。
次は『ラ・シルフィード』のジェームズ役を踊るということで、3月1日の初日のチケットを早めに予約。友人Mさんもチケットを確保し、二人で楽しみにしていたのだが…一週間くらい前になって、Mさんから驚愕の情報が。
「ダニール・シムキン、肋骨を怪我して、出演できないって!」
えええぇぇぇ…っ!!?
私は劇場窓口でチケットを購入したのだが、Mさんはオンラインで予約したので、バレエ団からキャスト変更のメールが届いたのだそう。 ダンサーも他のスポーツ選手と同様で、怪我は付き物だが、ずっと楽しみにしていただけにかなりショック。早い快復を願うしかない。
しかし当日観に行ったところ、代役でジェームズ役を踊ったマリアン・ヴァルターも素敵だった。ドイツのバレエ団は非常に国際的で驚くほどドイツ人の比率が低く、むしろ日本人の方が多いんじゃないかと思うこともあるくらいなので(ベルリンでも5〜6人の日本人が在籍している)、久しぶりにメインの役でドイツ人ダンサーを見た。 シルフィード役は、シムキンとも昔からよく組んでいるマリア・コチェトコワがゲストで出演。小柄で愛嬌がある。
ようやく念願叶う
3月22日、ダニール・シムキンが舞台に復帰するということを事前にウェブサイトで確認し、劇場の窓口へ。運良く当日券を入手できたので、2度目の『ラ・シルフィード』鑑賞。プログラムとは別に50セントで売っているキャスト表(Besetzung)を記念に購入。
初めて生で見たダニール・シムキンは、リアル王子様だった。高い跳躍、ブレずに速度もコントロールされた回転。気がつけばもう30代なのに、どこか少年の面影が残る甘いマスク、さらさらの金髪、無駄なく筋肉のついた細身の身体…こんなに衣裳のキルトスカートが似合う男性は類い稀である。 『ラ・シルフィード』は男性の見せ場が少ないのが残念。シルフィード役のマリア・コチェトコワとの息もぴったりで、彼女の踊り自体も前回より安定していた。
ポリーナ・セミオノワも見たい!
さて、ベルリン国立バレエには、私の大好きなプリンシパルがもう一人いた。ポリーナ・セミオノワ。10年くらい前に彼女の公演をベルリンで観て感激したのだが、残念ながら2012年にABTに移籍(シムキンと逆のパターン)。しかし今もゲスト・プリンシパルとしてベルリンで踊ることがある。
4月4日にシルフィード役で出演するということで、チケットを予約して、3度目の『ラ・シルフィード』鑑賞。セミオノワは長身なうえ超・小顔で、10頭身はある超人的なスタイルなので、更に背が高く見える。ジェームズ役は初日と同じくマリアン・ヴァルター。
とても繊細で儚さも感じるシルフィードだった。『ジゼル』のウィリを彷彿とさせる。群舞もこの日の公演は非常に安定感があった。
繰り返し観ると面白いポイント
舞台芸術の面白いところは、同じカンパニーの同じ演目であっても、日によって違う作品であるということ。ダンサーが違えばもちろんのこと、同じキャストであっても、公演によってコンディションも出来も異なる。今回同じ演目を繰り返し観ることで、演出や振り付けが頭に入ってきたので、2回目と3回目は他のポイントに集中することができた。
何より面白かったのは、主役シルフィードの印象の違い。マリア・コチェトワは小柄で無邪気な可愛らしい妖精。ポリーナは上品でしとやかな妖精、という印象。振り付けもマイムも同じなのに、やはり元々の容姿や表情、踊り方のクセのようなものが滲み出てくる。特に第二幕でシルフィード達19人が揃うと、152㎝というコチェトワは一番くらいに背が低いので、みんなの妹のような存在なのかな、と思える。逆に170㎝を超えるセミオノワは、シルフィード達の女王のような存在感があった。
どちらもそれぞれ素敵だった!
同じ演出の演目は、一度観たらもういいかな、と思うこともあるかもしれないけれど、違うキャストを見比べてみるのも、なかなか乙なものである。
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