ベルリン国立バレエ:レッスン体験談

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教育プログラムも再開

前回の記事で記したように、コロナで活動休止状態となってしまった春夏を乗り越えて、ベルリン国立バレエが徐々に再開したのは、舞台公演だけではない。

バレエ団にはTanz ist KLASSE! e.V.という教育プログラムを行う組織があり、学校向けの見学会、家族向けのワークショップ、一般向けのダンスワークショップなどを提供している。青少年に踊ることの楽しさを広め、創造力、自信、健康、チーム精神を身に付けてもらうことが目的だという。

Verein

私はこの教育プログラムの存在は前から知っていたのだが、青少年しか参加できず、30代の自分には無縁だと思っていた。しかし、コロナ危機に陥ってから初めての一般向けワークショップが10月に開催されるというので詳細を見てみると、なんと15~45歳のバレエ経験者であれば参加可となっていた。

日曜日に3つのワークショップが続けてあり、2つはジョージ・バランシン(ネオクラシック)、1つはマリウス・プティパ(クラシック)の振付を教わるという。バランシンにも非常に惹かれたのだが、まずは馴染みのあるプティパの方に応募してみることにした。

オンラインの申込フォーマットに年齢やバレエ歴を記入して送信すると、数日後に運良く参加受付の返事があった。参加費15ユーロをTanz ist KLASSE! e.V.に送金して、登録完了!

参加費、格安…!!

レッスン体験談

さて、ワークショップ当日。ベルリンには3つの劇場があるが、その中でもバレエ団が練習の拠点にしているDeutsche Oper(旧西ベルリン地区にあるドイツ・オペラ)に向かった。劇場の脇にある裏口から内部に入るのは初めて。

ビルのように見える建物とその入り口
一見すると普通のビルのよう

事前にメールで指定された時間に行くと、Tanz ist KLASSE! e.V.のスタッフが名簿を持って立っており、建物の中に案内された。ワークショップ中は撮影禁止だったのだが、スタジオやフォワイエの様子は、前回の記事で紹介したガラ公演とカンパニー紹介のYouTubeビデオで映されているままである。 憧れのダンサー達が普段練習している場所でレッスンできると思うと、ファンとしてはそれだけでテンションが上がる。

まず『着替え室』として通されたのは、だだっ広いダンススタジオで、四方の壁に沿って一定間隔で椅子が一つずつ並べられていた。各人がそれぞれの椅子に荷物などを置いて着替えるかたちである。もちろんマスク着用

着替えた後はまたスタッフに案内されて、舞台装置が保管されているスペースなどを通り、レッスンを受けるためのスタジオへ移動。この日の先生が、ストレッチをしながら出迎えてくれた。

ダンス教育学(Tanzpädagogik)の専門家でもある先生は、英国ロイヤルバレエ学校で教育を受けた背の高いイギリス人女性だったが、レッスンの言語はドイツ語だった。そうは言っても、基本的にバレエ用語は世界共通でフランス語なので、日本でもドイツでもイギリスでも変わらない。

スタジオでのコロナ対策

さて、参加者がキョロキョロしながら広いスタジオに入ると、「間隔をあけて、バーの好きな場所に立ってください。ただし、一度バーを握ったらそこから動かないように!」と指示された。バーレッスンの後には、各自が消毒液と紙で、自分が使った部分を消毒することになっているのだという。一定間隔を保つためだろう、バーには赤いテープで印が付けられていた。

私が出た回の参加者は18人だったのだが、コロナ対策のため以前より少人数になっているのだという。年齢層は幅広く、全員女性だった。

先生から、「マスクをしたままトレーニングすることに慣れていますか」と聞かれ、大半の参加者は首を横に振った。私が通っているバレエ教室でも、入り口や着替えスペースではマスク着用だが、スタジオに入ってからは義務ではない。この日の先生も、「では、全員が同意してくれれば、レッスン中はマスクを外していいことにしましょう」と言ってくれたので、参加者はみんなマスクを外した。

その他の感染防止対策についてもレッスン前に簡単な説明があったのだが、私が初めて見たのは、壁に取り付けられた小さな二酸化炭素測定器。室内の二酸化炭素が一定量を超えると、警告音が鳴るのだという。

実際にセンターレッスン中に一度ピーっと鳴り、しばらく窓と廊下のドアを全開にして空気を入れ替えた。一度に大勢の人が動くとすぐに反応してしまうらしく、ジャンプなど大きな動きの練習は、その後はなるべく少人数のグループに分かれて行った。

10月のドイツはもう寒いですが、基本的に窓は開けっぱなし。「暖かいレッスン着で来るように」とメールに書かれていたのも納得

ワークショップは10時半開始で、通常のレッスン(バーレッスン&センターレッスン)を1時間ほど行い、10分ほど休憩を挟んでから、13時までヴァリエーション(ソロの踊り)を習う、という時間割になっていた。

ヴァリエーションはマリウス・プティパの振付ということだけ聞いていたのだが、蓋を開けてみると、『眠りの森の美女』のMiettes qui tombent(日本語では『鷹揚の精』とされることが多いようだ)だった。

普段であれば群舞を練習して、同じ時間帯に隣のスタジオで行われていたワークショップと、最後にお互いの踊りを見せ合っていたそうなのだが、今回は接触制限のためソロの踊りにしたとのこと。希望者はトゥシューズに履き替えてもOKだった。

ヴァリエーションはごく短いので、(完成度には個人差があるが)みんな1時間も掛からず振付を覚え、最後には2〜3人ずつ踊って発表した。

私は初めてのワークショップ参加で、自分のレベルでついていけるのか少なからず不安だったのだが、幸いにも難しすぎることはなかった。初級レベルの人はいないものの、普通のバレエ教室でいう中~上級くらいの人が大半だった。プロを目指している(目指していた)のだろうなと思う、体つきからして目を引く人は2人くらいで、その他は参加者募集の要綱にもあったように“Hobbytänzer”(趣味のダンサー)が集まっている感じだった。

ベルリン国立バレエのオンラインレッスン?

ワークショップは私にとって良い経験になったが、参加者数に限りがあるし、ベルリン在住でなければ参加は難しい。そして私が参加した日の1週間後から、またロックダウンとなり、11月に予定されていたワークショップもキャンセルになった。

一方、春夏のロックダウン中には、ベルリン国立バレエは面白い取り組みをしていた。公式Instagramアカウントのストーリー(24時間で消滅する投稿)で、『BERLIN A LA BARRE』という現役ダンサーによる自宅レッスンをライブ配信していたのだ。

憧れのダンサーのオンラインレッスンを無料で見られるなんて贅沢!

私は5月19日に大好きなポリーナ・セミオノワのレッスンを見たが、彼女のベルリンの自宅が映り、見ている人も一緒に練習できるよう丁寧に説明しながら、リビングの一角で一通りのレッスンをしてくれた。世界的スターである一方、彼女はどのインタビューを見てもちょっとシャイで控えめな印象を受けるのだが、レッスンを開始しようとしたら音楽が流れず長い間手間取ったときも、「あら、ごめんなさい。さっきちゃんと試したんだけど…。みんな、本当にごめんね」と何度も律儀に謝りながら、パニックになることはなく落ち着いた様子だった。

最終的に、とても格好良い旦那さん(同じくバレエダンサー)が登場して機材を直してくれ、レッスンの合間には小さな息子さんがリビングに顔を出すなど、スターダンサーの普段の様子を垣間見れるのも新鮮だった。

コロナ危機になり、ベルリン国立バレエも何をどのかたちであれば提供できるのかと試行錯誤した結果、バレエファンにとってより身近な存在になったという気もしている。舞台芸術には厳しい状況が続くが、引き続き応援していきたい。

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