ドイツ人がケーキに求めるもの

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ドイツのケーキ文化

自他共に認める甘党の私は、カフェに入ると必ずケーキを注文する。今までドイツでも何百個とケーキを食べてきて、「日本のケーキとドイツのケーキの違いには、何らかの価値観の違いが潜んでいるのではないか?」と考え続けてきた。

たかがケーキ、されどケーキ。ドイツの文化の欠かせない一部と言ってよく、老若男女問わずよくケーキを食べるし、週末にはよく家でも作る。甘いもの=女性的という偏見はなく(見た目がガーリーなカップケーキなどは別だろうが)、男性でもケーキを焼いたり、アイスを食べながら道を歩いたりするのはごく普通である。

家でよく作るのには、材料費の安さも影響しているだろう。小麦粉1kgは100円、バター250g(日本の200gパックより大きい)も200円あればスーパーで買える。

テーブルの上にずらりと並ぶ様々な手作りケーキ
ドイツ人の友人の結婚式にて『ケーキビュッフェ』。実は全て参列者が作って持ち寄ったもの。甘党には天国!

お店で食べるものでも手作りのものでも、日本のケーキと比べてみて、ドイツのケーキには以下のような特徴がある。この記事では、これらの違いを手掛かりに、ドイツのケーキと、そこに隠れた価値観について考えてみたい。

  • サイズが大きい
  • ずっしりとしている
  • 見た目があまり凝っていない
  • 甘さに遠慮がない

ドイツのケーキの種類

日本との違いを考える前に、ドイツのケーキの種類を見てみると、大きく2つに分類できる。1つはKuchen(クーヘン)で、リンゴケーキやチーズケーキのように、ホイップクリームやムースが挟まっていない、焼いたケーキ。

チーズケーキ
さくらんぼ入りのチーズケーキ

もう1つは、何層かになっていて、大抵は柔らかいクリームが入ったケーキで、Torte(トルテ)と呼ばれる。代表的なのはSchwarzwälder Kirschtorte(シュヴァルツヴェルダー・キルシュトルテ)、『黒い森のさくらんぼ酒ケーキ』だろう。ドイツ南西部の黒い森の名物だが、今はドイツ全土で人気がある。

シュヴァルツヴェルダー・キルシュトルテ
本場の黒い森で食べたもの。さくらんぼ酒の風味が効いていて美味しい

クーヘンかトルテか、区別が微妙なものもあるが、上位概念、つまり「ケーキを食べにいこう」と言う時などに用いる、ケーキ全般を示す単語はクーヘンである。

ドイツではケーキ屋さんだけではなく、パン屋さんでもケーキを売っている。ただしトルテは少なく、大抵はクーヘンで、特に多いのはBlechkuchen(ブレヒ・クーヘン)という、円形の焼型に入れないで、金属の板の上で焼き、四角く切り分けて売るタイプのもの。

テーブルの上にケーキが3種類
友人の実家で日曜日のティータイム。3種類の手作りケーキのうち、奥にあるのがブレヒ・クーヘンと呼ばれるタイプ

おそらく日本人が『クーヘン』と聞いてまず連想するのは、バウムクーヘンだろう。実はバウムクーヘン、発祥の地のドイツではそれほど一般的ではなくて、私の友人でも「食べたことがない」という人が多い。製法が特殊なので作れる職人が少なく(機械で製造するのは普及していない)、一部の老舗のお店を除いては、滅多に見かけることがない。チョコレートかシュガーコーティングされているが、これは空気が乾燥している土地柄で、パサパサにならないためでもあるそうだ。

私も何度かドイツで探して食べてみたが、しっとりふわふわしている日本のバウムクーヘンと比べて、ずっしりとしていて固め。日本のものとは別物と思えば、これはこれで美味しい。ただし職人技の結晶なので、値段も高めである。

切り分けられる前の巨大なバウムクーヘン
カット前のバウムクーヘン。バウムはドイツ語で『木』の意味。確かに断面が木の年輪のように見える

ドイツ人がケーキに求めるもの

さて、日本のケーキとの比較に戻ろう。日本のケーキ、といっても色々あるわけだが、多く場合は繊細なフランス菓子をお手本にしつつカスタマイズしたものだと思う。

まずドイツのケーキはサイズが大きい。この国は人も大きいし、食事の量も多いのだが、甘いものにも同じことが言える。ホールケーキの型は28㎝くらいが標準である。少食な人なら、ドイツのチーズケーキ1つでランチ代わりになる。

お酒に弱くてヤケ酒できない私は、日本で嫌なことがあると、小さめのホールケーキを一人でヤケ食いしていたけど、ドイツだと流石に無理…

そして見た目がいたってシンプル。洗練されていて、見ているだけで楽しいフランスや日本のケーキと比べると、ごく素朴である。

ドイツのケーキのショーケース
南ドイツ・ハイデルベルクで一押しのStrohauer’s Cafeのケーキ。ドイツとしては華やかな方
華やかなフランスのケーキ
比較までに、フランス・パリで撮ったショーケース。美しい芸術作品のようなケーキ

何よりの違いは、ずっしりしていること。日本のショートケーキのようなふわふわした軽いケーキに出会ったことは、ドイツではほとんどない。このポイントに関しては、私の大学院の先輩にあたるFujikoさんが素晴らしい洞察をされていた。ドイツ人は、食べ物が重くないと、損した気分になるそうだ。詳しくはFujikoさんのブログ記事を参照されたい。

確かに、私のドイツの友人達に聞いてみても、みっちりと噛みごたえのある黒パンを食べて育った彼らは、「食パンなんて、スポンジみたいで食べた気がしないし、パンじゃないね」という意見の人が多い。ケーキに対しても同じ感覚なのだろう。デコレーションは別に構わないが、大きくてずっしりとした、「食べた」という実感の持てるもの、に価値を置いているわけである。

甘さに容赦がないのも、この価値観の影響だと思う。せっかく甘いものが食べたくて食べているのだから、甘さが控えめだと、損した気分になるに違いない。ドイツのケーキを食べ慣れてしまうと、日本の小さなケーキは2〜3個食べないと満足できなくなるのが、恐いところ。

ザッハトルテと生クリームの関係

容赦がないのは甘さだけではない。もともとクリーム系のトルテはともかく、クーヘンをカフェで頼むと、「生クリームを添えますか?」と聞かれることが多い。50セント〜1ユーロくらい追加でかかるが、それでお願いすると、たいてい大量の生クリームがついてくる。

リンゴケーキと大量の生クリーム
リンゴケーキについてきた生クリーム。もはやどちらが主役なのかわからない

ドイツではなくオーストリアの話になるが、ウィーンのホテル・ザッハーのカフェで、ここが発祥のザッハトルテを注文する際、メニューを見た私はある種の衝撃を受けた。そこには、「ザッハトルテの濃厚さを和らげるために生クリームを添え…」云々と書かれていたのだ。

ザッハトルテと生クリーム
本場のザッハトルテ

生クリームって、濃厚さを加えるためじゃなくて、和らげるためのものなのか!と、私の想像と真逆の説明にビックリ。しかし食べてみると、確かに生クリーム自体にはそんなに甘さがなく、意外とさっぱりしていた。

ドイツならではの…

ここまでの写真を見て気づいた方もいるかもしれないが、ドイツではよくケーキにフォークが刺さって出てくる。はっきりした理由を聞いたことはないが、ウェイターがお皿を運ぶ時に、フォークが落ちるのを防ぐというメリットがあるのではないかと思う。個人的な経験では、半分くらいの確率でフォークが突き刺してある。

横からフォークが突き刺さっているケーキ
ちょっとおしゃれな古城のカフェレストランでも、チーズケーキにぐさり

また、何層にもなっていて背の高いトルテは、たいてい横に倒した状態で出てくる。確かに立った状態では運びにくいし食べにくいので、理に適っている。

横になっているケーキ
フランクルト名物のフランクフルター・クランツも横になって出てくる

日本では食べられないケーキをドイツで食べてみたい、という方もいるかもしれない。日本の洋菓子界は発展しすぎていて、バウムクーヘンは言わずもがな、シュトレンもザッハトルテも珍しくないが、おそらくあまり見かけないのは、マジパンを使ったケーキ。マジパンは砂糖とアーモンドのペーストで、独特の風味があり、何より情け容赦なく甘いので、甘党だと自負する方以外にはお勧めできないが、ドイツらしいお菓子である。

マジパンがたくさん使われたケーキ
北ドイツのリューベックにて、マジパンの老舗Niedereggerのマジパンのトルテ

その他、ドイツでよくお菓子に入っているものに、ケシの実(ポピーシード)がある。ドイツ語ではMohnという。ケシの実がメインになったケーキもあれば、チーズケーキの下の層に入っていることもあるが、プチプチした食感が楽しいので、見かけたら試してみてほしい。

ケシの実のケーキ
ケシの実とみかんのケーキ

色々なケーキを見て、食べてみるだけでも、その国の人達が何を大事に思っているのかわかって面白いですね!

コメント

  1. Fujiko より:

    本当にその通り、と思いながら読んでいました。
    ドイツ人も日本人もケーキ好きなのに、売っているものはこれだけ違うという面白さ。
    私の記事も紹介してくれてどうもありがとうございます。

  2. Aki Aki より:

    『ふわふわ』とか『さくさく』を美味しいと思う日本とは対照的ですよね。「このケーキ、口当たりが軽くて美味しい」という台詞は、ドイツでは聞けないことでしょう。。。
    こちらこそ、これからもよろしくお願いします^^

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