ドイツのチョコレート
「最期に食べるとしたら何がいい?」と聞かれたら、迷わず「美味しいチョコレート」と答えるくらいチョコレート好きの私。「おすすめのドイツのお土産は?」と聞かれても、「チョコレート」と答えるが、自分が好きなことを抜きにしても、それには理由がある。
それは、高級店に行かなくても、スーパーで普通に買えるチョコレートが充分に美味しいこと。しかも大きい。ドイツの板チョコを手に持ったとき、「なんだか厚みがあるな」と思った人もいるはずだが、日本の標準的な板チョコが1枚50gなのに対して、ドイツの標準サイズは100g。実は倍の重さがある。でも相場が1枚1ユーロくらいなので格安。
この記事では、おすすめのドイツのチョコレートと、関連した豆知識を紹介する。お土産として誰かに手渡すときに、ちょっとした情報を付け加えれば、更にウケが良くなること間違いなし。
南ドイツ:リッタースポーツ
私はドイツ南西部のバーデン=ヴュルテンベルク州に長く住んでいたので、日本へのお土産にはいつもリッタースポーツ(Ritter Sport)のチョコレートをおすすめしていた。というのも、州都であるシュトゥットガルトが発祥だからだ。
今でこそ日本の輸入食品店でも見かける、カラフルなパッケージの正方形のチョコレートだが、創業は1912年と100年以上の歴史を誇る。もともとは家族経営のチョコレート工房で、『リッター』は創業者夫婦の姓である。現在も経営陣にはリッター家出身者が多いようだ。
でもどうして『スポーツ』?
実はその秘密は、あの特徴的な正方形にある。現在でも板チョコといえば長方形が主流だが、当初はリッター家も長方形のものを製造していた。しかし1932年、創業者の妻クララ・リッターの、「どんなスポーツジャケットのポケットにもぴったり収まって、割れにくい、従来と同じ重さのチョコレートを作りましょう!」という発案で、正方形のチョコレートが誕生。『リッターズ・スポーツ・チョコレート』と命名され、これがヒットになった。
現在はドイツのどのスーパーに行っても、間違いなく10種類はリッタースポーツ・チョコレートが置いてある。大きさも、通常の3倍くらいあるものから、可愛らしいミニサイズまで様々。オーソドックスな100gのものは、値下がりしていると70セントくらいで買えることもある。定番の味はもちろん美味しいし、季節ごとに数種類の限定の味が出るのも楽しい。
楽しいといえば、パッケージを開けるとき。リサイクル可能な環境に優しい素材を使っているほか、パキッと一列を割ると、裏面の合わせ目がパカッと一緒に開く仕組みになっている。パッケージに興味を持った方には、公式ページにも記事がある(英語に切り替え可)。
発祥の地シュトゥットガルトから遠く離れた首都ベルリンでは、2010年、リッタースポーツ・チョコレートの直営店がオープン。
ここではチョコレートやグッズを買うだけではなく、トッピングを選んで、自分だけのチョコレートをその場で作ってもらうこともできる(私の友人はグミを入れてもらったらしい…)。2階部分はカフェになっているので、観光の合間の休憩にもぴったり。
企業とのコラボレーションもよくしているようで、先日、特急列車が遅延したとき、車内でこんなリッタースポーツ・チョコレートが配られた。このサイズの金のパッケージは、スーパーなどでは販売していないのでちょっと貴重。
Lieblingsgastは『ひいきの客』という意味。乗客全員に配っていたので、ドイツ鉄道、八方美人のような気もするが…。
ベルリン:ザロッティ
現在暮らしているベルリンで私がおすすめしているのは、ザロッティ(Sarotti)のチョコレート。リッタースポーツよりも歴史は更に半世紀長く、1852年にベルリンで創業。板チョコの他にも様々なチョコレートを販売していて、スーパーで手軽に購入できるが、アルコール入りのトリュフなど、お土産として見栄えするものもある。
トレードマークはムーア人の男の子。これは、1872年に、お店がベルリンのMohrenstraße(ムーア人通り)に移転したことがきっかけで選ばれたと言われている。
私は南ドイツのスーパーではザロッティのチョコレートをあまり見た覚えがないので、ベルリン周辺に来ることがあれば、ぜひ試してみてほしい。近所のスーパーでは、外来語の記事で書いた、『カッツェンツンゲン』という猫の舌のかたちをしたチョコレートも、ザロッティ社のものが売っていた。
そして、ベルリンにはなんとザロッティのホテルがある。かつてチョコレート工場があった、クロイツベルク地区の敷地と建物を再利用して、現在は宿泊できるようになっている(工場はベルリンの他の地区に移転)。
併設のカフェは宿泊客以外でも利用できる。先日リニューアルオープンして綺麗になったばかりだし、値段も良心的で、ベルリンの中でもかなりおすすめ。
ドイツらしく巨大なサイズのケーキは味も美味しく、紅茶の茶葉も小さな布の袋に入って出てきておしゃれ。ザロッティ・チョコレートを使ったホットチョコレートの大きなマグカップも可愛くて、思わずほしくなってしまう。ケーキはチョコレートを使ったもの以外にも色々と凝ったものが多くて驚いた。私が注文したのは、マジパンとケシの実のずっしりしたケーキ(写真手前)で、友人は生姜とレモン入りの爽やかなケーキ(写真奥)。
ルビーチョコレートとカカオニブ
さて、日本でも話題になっていて買えるが、ドイツの方が安く手に入る、というものもあるのでご紹介。
1つめはルビーチョコレート。ダーク・ミルク・ホワイトに次ぐ4種類目のチョコレートと言われていて、希少なルビーカカオ豆から作られる、綺麗なピンク色のチョコレート。着色料もフルーツのフレーバーも一切入っていないのに、ほのかなベリー系の風味があるのが不思議。
ドイツでもどこでも売っているというわけではないが、例えばベルリンにも支店があるVibaというチョコレート専門店では、様々なタイプのルビーチョコレートを扱っている。上の写真の、綺麗な模様がついた小さな板チョコタイプは、37gで1,95ユーロとそこまで高くなかった。
日本人の友人Mさんが一時帰国する際、お土産としてスーパーで買い占めていたのはこちら。
1パックに3枚入りで、3ユーロ代と手頃な値段。日本のウェブサイトで見てみたら、1本(!)が400円するようなので、ドイツの方がはるかに安い。これも生産量が少ないのか、スーパーによって置いていたりいなかったりするが、もし見かけることがあればぜひお試しを。
チョコレートではないのだが、同じくMさんのおすすめで私もハマってしまったのが、カカオニブ。カカオ豆を砕いてフレーク状にしたもので、栄養価の高さで話題のスーパーフードの1つ。いわば100%カカオなので、ポリフェノールや食物繊維を多く含み、抗酸化作用や美肌効果も高いと言われている。
そのまま食べると、ポリポリした食感で、少しコーヒーを思わせる苦味があるのだが、ヨーグルト・シリアル・アイスなど、何かにトッピングすると、カカオの風味と楽しい食感が加わって、なんとも言えず美味しい。健康にいいからという理由だけで割高なスーパーフードを買う気にはならない私だが、カカオニブだけは味も好きなので、毎朝少しずつ食べ続けている。
日本でも流行り始めているようだが、こちらと比べて倍くらいの値段のようなので、ドイツで見つけたらお試しを。チョコレート好きな人はきっと気に入ると思う。
チョコレート好きのために
日本でもよく知られたリンツのチョコレートは、スイス発祥だが、やはりドイツで買った方が格安。加えて、アーヘンという街には、リンツの工場と、併設のアウトレットショップがあるので、もしドイツ西部へ行くことがあれば、お土産の調達におすすめ。
「もっと(ドイツの)チョコレートについて知りたい!」と思った方には、ケルンにチョコレートミュージアムがある。ライン川に浮かぶ船のようなユニークな形のミュージアムで、チョコレートの歴史や、製造方法の詳しい展示のほか、実際の製造工程も見学できる。
ドイツに来ることがあれば、ぜひ色々なチョコレートを試してみてくださいね!
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