外来語で楽しく学ぶ外国語

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日本語の中の外来語

色んな外国語に興味はあるけど、取っ掛かりがないなぁ…

そんな人にオススメなのは、日本で使われている外来語の由来を調べてみること。今はインターネットで簡単に情報収集できるし、身の回りに溢れているカタカナ語の本来の意味がわかると、毎日がちょっと楽しくなる。

漢字・ひらがな・カタカナを併用する日本語の複雑な表記システムはある意味で便利でもあり、外来語は基本的にカタカナで表記されるので、一見して識別できる。特に英語由来の単語の流入の甚だしいことといったら、もうこれなしでは日常会話ができないくらいである。ビジネス関係やコンピューター関係の用語は、圧倒的に英語が幅を利かせている。

一方で、他のヨーロッパ言語から入ってきた言葉も、日本の日常生活では頻繁に目にする。この記事では、ドイツ語とフランス語由来の言葉を例にして、外来語について調べる楽しさを考えてみよう。それに先立って、留意すべき点をいくつか挙げておく。

まず基本的な知識としては、日本語に限らずどの言語であっても、定着した外来語というのは名詞が圧倒的に多い。例えば動詞だと、現在形や過去形として活用しなければいけないので、文法上の問題が生じる。ただし日本語に限って言うと、「〜する」と組み合わせれば動詞的な用法も可能になる(例:リサーチする、ダウンロードする)。

本来の発音とカタカナ表記が掛け離れていて、例えば英語由来の言葉を英語ネイティブに言ってみても通じなかった、という経験がある人も少なくないと思うが、これは発音体系が違うのである程度は仕方ないことである。人名だが、ドイツの文豪「ゲーテ」は、こう発音してもドイツ人には通じない。実際にはどちらかと言うと「グーテ」に近い。

また、和製英語に代表されるような、外国語の単語を元に日本人が作った和製外来語にも気をつけたい。英語圏の国をレンタカーで旅していて、「ガソリンスタンド」がどこか現地の人に聞いても通じないので注意(英語ではfilling station, gas station, petrol stationなど)。

それから、外来語の意味が元々の言語から変わってしまっている場合も多い。こういった注意点はいくつかあるものの、外国語に興味を持ったときに一歩近づくための糸口としては、身近な外来語は最適だと思う。

アルバイトはアルバイトにあらず

まずはドイツ語の例から見てみよう。

ドイツ語から入ってきた言葉で、これ以上なく使われているのは間違いなく「アルバイト」だろう。定着しすぎて、「バイト」と省略されることも多い(本家のドイツ語に「バイト」という言葉はない)。

ただし日本語の中では意味が変わっている。元々のドイツ語・Arbeitの意味は『労働、仕事、業績』(英語でいうwork)で、『学業や本業のかたわら時間給でする仕事』を限定的に意味するわけではない。アルバイトはドイツ語ではNebenjobなどという。

ちなみにJobはドイツ語に入ってきた英語由来の外来語なのが面白いですね

次に、「カルテ」「アレルギー」など、医学用語はドイツ語由来のものが多い、というのは歴史的によく知られている。ただし、またしても意味が変化していて、元々ドイツ語のカルテ・Karteは『カード』全般を指し、カード遊びのトランプなども全てKarteである。

登山やスキーの用語もドイツ語から入ってきている。「ゲレンデ」「ヒュッテ」「シュプール」などが挙げられるが、どれも「カルテ」と同様に日本語では意味が限定的になっている。例えばドイツ語のゲレンデ・Geländeは『土地』全般を意味する。

もちろん「タクト」や「アインザッツ」など、音楽の用語も見逃せない。ドイツ語既習者でも気が付きにくいのが「ゲネプロ」で、これはゲネラルプローベ・Generalprobeを省略したもの。

元々のドイツ語から意味と形が変化していないものとしては、「リュックサック」、「メルヒェン」、幕張メッセなどでお馴染みの「メッセ」(見本市)あたりがよく使われるだろう。「ドッペルゲンガー」もドイツ語である。

その他にも、歴史・哲学・心理学関連の外来語も多くがドイツ語を起源としている。どの分野において文化や専門知識をドイツから取り入れたのか、歴史的な側面が垣間見られて興味深い。

サボる=破壊工作する?

次にフランス語から入ってきた外来語を考えてみよう。

ドイツ語由来の単語と比較してみて面白いのは、料理・製菓に関する単語の豊富さ。ドイツ語だと「グミ」「バウムクーヘン」くらいしか思い浮かばないのだが、フランス語では、「グルメ」「オードブル」「フォアグラ」「ポトフ」「クレープ」「ミルフィーユ」「パフェ」など枚挙にいとまがない。どれだけ日本人が積極的にフランスの食文化を取り入れてきたのかが伺える。

長くなるので詳細は割愛するが、日本語では一語としてカタカナ表記される言葉も、フランス語では複数の単語の組み合わせであることが多いので、詳しく調べてみると面白い。例えば「ポトフ」はpot-au-feu、『火にかけた鍋』といった意味である。

バレエの用語も世界的にフランス語である。「プリエ」は『折る、曲げる』、「エシャッペ」は『逃げる』、「パドゥシャ」はpas de chatなので『猫のステップ』など、意味がわかるとレッスンが楽しくなる。

その他にファッション・芸術関連でも多くの単語が日本語に入ってきている。「ブティック」「プレタポルテ」「アトリエ」「デッサン」「クレヨン」(フランス語だと『鉛筆』の意味なので注意)などだ。

形が若干変化しているものでいうと、「ガトーショコラ」がある。ガトーは『ケーキ』、ショコラは『チョコレート』なのでチョコレートケーキのことだが、実際にはgâteau au chocolatなので「ガトー・オ・ショコラ」。外来語としては真ん中の「オ」が抜けている。

これってcafé au lait「カフェオレ」の「オ」と同じかな、と思った方はとても鋭い。その通りで、au(前置詞 à + 定冠詞 le)のここでの意味は英語のwithに近い。前置詞や定冠詞の用法は初級文法の早い段階で出てくる項目で、調べてみるとちょっとした文法の勉強にもなる。ちなみに「レ」は『牛乳』なので、カフェオレは『ミルク入りコーヒー』。

あれっ、「カフェ」って『喫茶店』の意味じゃないの、と思った方も鋭い。フランス語のcaféは元々『コーヒー』『喫茶店』のどちらも意味する。

外来語のほとんどは名詞であると述べたが、フランス語から派生して、例外的に動詞化したものもある。それは「サボる」。語源はsabotage「サボタージュ」だが、日本語のように『怠ける』という意味ではなく、『破壊工作する』といった意味なので注意しよう。

フランス語と日本語訳が書かれた大きな本
長崎の出島で展示されていた、19世紀初頭の日仏辞書。達筆である

しかし、チョコレートケーキの「ガトーショコラ」といい、フランス語だと急におしゃれな響きになるのが不思議。それに私が改めて気付かされたのは、ドイツのスーパーでだった。ドイツ語でKatzenzungen「カッツェンツンゲン」という、それこそ舌を噛みそうな名前のお菓子が売られていたのだ。カッツェンは『猫』、ツンゲンは『舌』なので、訳すと『猫の舌』。少し考えてみると…

あっ、フランス語だとlangue de chat「ラングドシャ」!!

「カッツェンツンゲン」と「ラングドシャ」、言語が違うとここまで印象が違うのは、おそろしいというか、フランス語は得だなぁとしみじみ…。

ちなみに、ワインと料理の相性の良さなどを指す「マリアージュ」もフランス語由来。日本だと飲食の文脈でしか使わないが、元々のフランス語は『結婚』の意味で、そこから派生した用法である。素敵な表現だと思う。

外国語学習の糸口

ここまで、ドイツ語とフランス語の例を取りあげてきたが、もちろん他の言語からの外来語もたくさんある。例えばイタリア語なら、食べ物や音楽の関連で山ほど取り入れられている。

西洋の言葉が本格的に受容され始めたのは明治維新後と言われているが、それ以前の貿易でオランダやポルトガルから輸入され、定着した言葉も少なくない。私のフランス人の友人は、ドイツで日本語の勉強を始めた後、

日本語でパンって「パン」っていうんだね!フランス語(pain)だ!!

と興奮気味に話してくれたが、一緒に由来を調べてみたらポルトガル語だったので、がっかりしていた。まぁ、それだけ早い時期にパンというものが日本に伝わったという、歴史の勉強にはなる。

外国語の勉強って苦手だな、と思う人でも、自分が普段から使っているカタカナ語を見直してみると、きっと色んな発見があるだろう。もちろん外来語をたくさん知っているからといって外国語を話せるわけではないし、意味の変容や発音には気をつけなければいけないが、外国語に親しみを覚えるのは、学習の大事な第一歩である。

私は、外国語学習の楽しさの一つは『発見』にあると思う。ある規則を学んだことで、今までわからなかった文型が急にわかるようになったり、ある単語を学んだときに、あっこれ外来語にあるけどこの言語から入ってきたんだ、と気付いたりする。私はバレエの動きとして丸暗記していた言葉が、フランス語の授業で時々出てくるので、元々こんな意味だったのか!という発見がいつも楽しかった。

もし、ある言語からの外来語を、面白いな、もっと詳しく知りたいな、と思うことがあれば、ぜひ本格的な学習に繋げてみたらどうだろう。

語学
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