ドイツの水事情

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水道水は飲める?

旅行などでドイツに行ったことのある方は、きっと「ドイツの水道水は飲める?」と調べたことがあるのではないだろうか。

結論から言うと、厳しい安全基準をクリアしているドイツの水道水は安全で、そのまま飲むことができる。

私の住んでいるアパートでも、飲用水法令に基づいた水質検査が毎年あり、委託された専門業者が蛇口から出る水の安全性を一世帯ずつチェックしてまわります

その次に出てくる疑問はおそらく、「ドイツの水道水は美味しい?」だろう。これには決まった答えがなく、「感じ方は人それぞれ」「地域にもよる」としか言いようがない。

ドイツの水は基本的に硬水で、カルシウムやマグネシウムが多く含まれており、日本のまろやかな軟水より癖がある。

水道水にミネラルが豊富というのは良いことのように思えるが、胃腸が弱いという自覚のある方は、マグネシウムの効果でおなかが緩くなることがあるので注意した方がよいかもしれない。

また、ドイツといっても大きな国なので、水源がどこかによって硬度が大きく異なる。私が暮らしているベルリンの水道水は硬度が高い方だが、ノルトライン=ヴェストファーレン州の山の麓にある友人の家の水は、日本人の私が飲んでも「まろやかで美味しい!」と思う。

この違いは、洗濯用洗剤をどれくらい使うべきか、という製品表示がドイツでは細かいことからも見て取れる。

液体洗剤の裏面にある使用量の表示
硬度がWeich、Mittel、Hartと上がっていくと、より多くの洗剤が必要となる

個人的にはベルリンの水道水をあまり美味しいとは思わないので、ポット型浄水器で濾過して硬度を下げてから、飲んだり料理に使ったりしている。

キッチンの流しの横に置かれたポット型の浄水器
多くの在独日本人が愛用している、ドイツの浄水器メーカーBRITAのポット

水道水 vs. ミネラルウォーター

水道水に関するドイツ人たちの意見はどうかというと、私の知る限り、美味しいと言う人もいれば、そうは思わないという人もいて、千差万別。料理には水道水をそのまま使うが、飲み水としてはミネラルウォーターを買っている人も多い。

ただし、なぜ安全な水道水を飲める国でミネラルウォーターが人気なのか、というと、「炭酸水が一般的」という理由も大きいだろう。ドイツでは、ミネラルウォーターといえば基本的に炭酸入りで、スーパーでも「炭酸強め」「微炭酸」など様々なタイプが売られている。

炭酸水は独特の苦味があるため、苦手な方は(例えば日本から遊びに来た私の母の口にはまったく合わなかった)、ドイツのレストランやカフェでは「炭酸なしのミネラルウォーター」とはっきり注文する方が無難である。

窓辺に置かれたSodaStreamの専用ガスシリンダーと、中にセットされた専用のボトル
私の夫であるベルリーナー・Dも炭酸水愛好家。家には水道水に炭酸を入れる専用ガスシリンダーもある

日常的に水道水を飲んでいる人たちは、マイボトルを持ち歩いていることがほとんど。私の通うバレエスタジオでは、ペットボトルの炭酸水を持ってきている人は少数派で、8割くらいはマイボトルから水を飲んでいる。

ステンレス製のマイボトルと、大きなペットボトルに入った炭酸入りミネラルウォーター
私の愛用マイボトルはklean kanteen社のもの。ペットボトルの水は500ml入りもあるが、この1.5Lの大きなボトルを持ち歩いているドイツ人をよく見かける

ところで、今ではなんとも思わなくなったが、私がドイツに来てからしばらく違和感があったのは、みんな持ってきた水がなくなると、トイレの手洗い場でマイボトルに給水していること。

バレエスタジオでもそうだし、ドイツの大学に通っていた頃は、学部の建物でも、大学図書館でも、至る所で見かける光景だった。確かに水道水には違いなく、家のキッチンの蛇口から出てくる水と同じはずなのだが、日本人の私は何となく抵抗があったのだった。

軟水 vs. 硬水

ご存知の方も多いと思うが、軟水と硬水では、使うのに適している料理や飲み物が異なる。柔らかな口当たりの軟水は、和食のように、素材の旨みを引き出す調理方法に最適。お米を炊くのにも、緑茶を淹れるのにも適している。

ドイツでも大ブームの抹茶ですが、こちらで茶道をする際には、ボルビックなど軟水のミネラルウォーターが必要です

一方で、ミネラルが臭みやアクを取ってくれる硬水は、肉料理にぴったり。ずっしりしたハード系のドイツパンにも硬水が向いているそうだ。

こう考えてみると、日独それぞれの土地で、水に合った食文化が発展しているのがなんとも面白い。どちらかの国で本場の味に感動し、帰国してから真似して作ってみても何か違う…と思うことがあるとしたら、きっと水の硬度も関係しているのだろう。

カルク問題

さて、ドイツの水道水にミネラルが豊富ということは、水回りではミネラルが乾燥して固まった水アカがすぐにできてしまう。

透明だったシャワーカーテンがいつの間にか真っ白に…

シャワールームの仕切りパネルが透明だと、水滴の跡がついてすぐ白く曇ってしまうので、片手で持てるサイズのワイパーで毎回水切りしている家庭も多い。シャワーヘッドの穴も詰まりがちなので定期的に掃除する必要があるし、壁にある金具や蛇口がすぐ白くなってしまうのが気になる人は、シャワーを浴びた後、その都度布などで拭かなければならない。

ドイツ人は、この水アカの原因となる石灰(カルシウムやマグネシウムなどの硬度成分)を「Kalk(カルク)」と呼ぶ。

日本語の「カルキ」もオランダ語・ドイツ語のKalkが語源だが、意味が転用して、今では石灰ではなく、水道水やプールの消毒に使われる塩素を指す

バスルームだけではなく、キッチンでもカルク問題はある。水道水を繰り返し沸かしていると、電気ケトルの中が真っ白になってしまう。対策は、上述したようなポット型浄水器で水の硬度を下げてから沸かすこと。そうすれば、水道水をそのまま使ってお茶を淹れるとできてしまう表面の膜も避けることができる。

電気ケトルの中に溜まってしまったカルクはアルカリ性で、酸性で中和すると落としやすいとのこと。時々食用のお酢を少し入れて濾過水を沸かし、しばらく放置してから中をすすぐと、ピカピカになって気持ちが良い。

ドイツ人は節水?

私は日本で一人暮らしをしていた頃、水道代を気にしたことがなかったが、ドイツに引っ越してから節水を心掛けるようになった。ドイツの水道代は日本の2〜3倍と言われていて、更に、お風呂や洗濯機を使うと排水代というものがかかる。

お風呂を入れると一回で1〜2ユーロ掛かる計算になるので、日本のように洗い場が別になっておらずバスタブのお湯を家族で使い回しできないドイツでは、入浴はちょっとした贅沢だ。

キッチンでも、ドイツ人の節水の精神が表れている場面がある。それは食器の洗い方。

シンクにお湯を溜めて、洗剤を入れてモコモコと泡風呂のようにし、そこに入れた食器を汚れが少ないものから布で擦って綺麗にしていく。そして、しっかり流水ですすぐことなく(シンクが2つあれば綺麗な水を張っておいてそこでサッと泡を落とすことも)、水を切ってそのまま自然乾燥させるか、布巾で拭き取って乾燥させるのである。

もちろんドイツ人と一括りにはできず、洗い方には個人差があるが、最後にしっかり流水で洗剤を落とさない場合には、日本人としては抵抗があるところ。確かに食器用洗剤は、口に入っても害はないのだろうが…。

また、これは節水というよりも水質が理由だが、ドイツでは「髪は毎日洗わない方がいい」と一般的に言われている。私の周りを見ても、2〜3日に1回、という人が多いと思う。石灰分が付着して、髪が乾燥したりゴワゴワした手触りになるという。

それは肌も一緒で、頻繁に洗っていると、つっぱったり乾燥したりするとされている(ただし、10年以上ドイツに住んでいる私は、毎日ドイツの硬水で髪と体を洗っていても特に何ともないので、体質にもよるようだ)。

そのほか、ドイツで子育てをしたことがある日本人の間でよく話題になるのは、「赤ちゃんのお風呂」。ドイツでは、病院でも、産後ケアに来てくれる助産師にも、こう言われる。

お風呂に入れるのは、生後1〜2週間後に臍の緒が自然に取れてから。それからは週1回の沐浴・入浴で十分です

産後すぐ、毎日沐浴するのが普通の日本からすると、ちょっと信じられないような基準である。お湯が敏感な赤ちゃんの肌を乾燥させてしまうのを防ぐためで、石鹸も使わずに水だけでOKだという。よく動き回るようになる生後6ヶ月以降は、必要に応じてもっと頻繁に入れてよし、とのこと。

妊娠生活記でも記したように、私は妊娠・出産に関しては信頼する助産師(ヘバメ)の助言に従っていたので、自分の子どもは6ヶ月までドイツ式で週1回しかお風呂に入れなかったが、確かにまったく変な匂いもしなかった。

国が変われば水も変わり、水が変われば習慣も変わる…というのは面白いですね

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