クロアチア紀行⑤:旅の終着点と、猫

スポンサーリンク
スポンサーリンク

不思議な国境を迂回

北から南へクロアチアを縦断する旅も、いよいよ最終目的地のドゥブロヴニクへ。南に下がるつれて先が細くなっていくクロアチアのほぼ先端に位置している。

スロベニアからクロアチア南端までの移動ルートを示した地図
更に南下するとモンテネグロとの国境がある

E地点のスプリトからF地点のドゥブロヴニクまで、バスに揺られること約5時間。海岸沿いを走っていく車窓からの眺めは、アドリア海があり、山があり、町があり、畑があり…と変化に富んでいるが、特に面白かったのは、途中でボスニア・ヘルツェゴビナとの国境を迂回したこと。

バスの移動経路を示した地図
オプゼンを過ぎたバスは、赤線のように橋を渡って移動

地図を見ると、複雑な歴史的経緯からボスニア・ヘルツェゴビナ領になったという町・ネウムの周辺が、クロアチア領に張り出しているのがわかる。以前は本土を移動しているとここを横切るしかなく、つまり一度ボスニア・ヘルツェゴビナに入国してから、再びクロアチアへ出国していたそうだ。

横切るのは僅かな距離なのだが、出入国のコントロールに時間が掛かって不便だったので、クロアチア領を出ずに向かい側の半島から迂回できるように、ペリェシャツ橋という橋が建設されたのだという。構想はかなり前からあったが完成したのは2022年ということで、まだ真新しいルートだ。

青空と紺碧の海に架かる、三角形を連ねたようなデザインが印象的な白い橋
これはドゥブロヴニクのすぐ手前にあるフランジョ・トゥジマン橋。ペリェシャツ橋とよく似たデザイン

“ザ・クロアチア”のドゥブロヴニク

さて、私たちの旅の終着点であるドゥブロヴニクは「アドリア海の真珠」とも呼ばれ、城壁に囲まれてアドリア海に突き出るように佇む、美しい要塞都市だ。やはり世界遺産に登録されている旧市街は半日で回れるほど小さいのだが、世界中から訪れる人が後を絶たない、一大観光地である。

ドイツでいうハイデルベルクやローテンブルクのような存在でしょうか…小さな可愛らしい町で、「これぞドイツ!」というイメージですね

クロアチアを訪れる日本人観光客も十中八九ドゥブロヴニクを旅程に組み込むと思うので、この記事では、いつか旅行したいと考えている人にも役立つ情報を紹介していきたい。

オレンジ色の屋根が並ぶ旧市街が、アドリア海に浮かぶように佇んでいる
旧市街の外にあるロヴェリイェナツ要塞の前から撮った一枚

ドゥブロヴニクの旧市街地は、広々とした石畳のメインストリートの左右にたくさんの路地が伸び、階段を昇り降りしながら歩き回っているだけで楽しい場所である。レストランやお土産屋さんが立ち並び、どの時間帯も観光客で賑わっている。数時間で名所を一通り巡れるほど規模は小さいが、人気ドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』のロケになった場所が多数あるので、ファンの人にはたまらないだろう。

両側を石造りの建物で囲われた細い石畳の階段
旧市街地にたくさんある石畳の階段の一つ

私たちがドゥブロヴニクに2泊したときは運良く快晴で、5月初旬ながら夏のような日差しと暑さだった。午前中から観光客でひしめく通りから、ふと目についた小さな教会の中へ入ると、こんな素敵な光景に出会った。

ステンドグラスを通して、日光が無数の光の線のように教会の床に射し込んでいる
強い日差しが無数の光の線になって射し込む

石造りの建物が密集した旧市街は自然から隔離されたような場所だが、城壁から外に出て下に降りていくと、ちょっとした入り江がある。

岩と建物と木に囲まれた小さなビーチに、オレンジ色のカヌーが並んでいる
入り江ではカヌーの貸し出しもしていた

この水の透明度を見ていただきたい。アドリア海は遠目では深い青なのに、近くで見ると驚くほど澄んでいる。そして水の中をじっと覗き込んでいると、無数の小さな魚が泳いでいることに気づく。

埠頭にしゃがみこんで海の中を眺めている私の後ろ姿
私も童心に帰って魚を眺めていたが、飽きることがない

フォトスポットを探す旅

ドゥブロヴニクの美しさを写真に収めようと思うと、やはり旧市街地の喧騒を抜け出して、少し離れた場所から“海に浮かぶような要塞都市”として写すことになる。アドリア海の紺碧とオレンジ色の屋根が息を呑むようなコントラストを織り成す。

そこで、おすすめのフォトスポットをインターネットで検索すると、どのウェブサイトを見ても、「ケーブルカーに乗ってスルジ山の山頂から眺めるドゥブロヴニクは最高!」と書いてある。スルジ山とは、旧市街地を挟んで、海と反対側にそびえる山である。

旧市街地の向こうにある山に、ケーブルカーの柱が見える
旧市街からスルジ山の方向を眺めると、ケーブルカーの柱が立っているのが見える

ただし注意が。ケーブルカーは数分であっという間に山頂まで運んでくれるものの、2023年現在で大人一人往復27ユーロと高額なのだ(1ユーロ=150円とすると4,050円)。徒歩でも山頂まで行けるのだが、片道1時間以上掛かるようだし、自動車道があるのでタクシーで行くことなども考えた。

しかし、私たちは結局まったく違う案を採用した。ドゥブロヴニクからも見える無人島・ロクルム島に行くことにしたのだ。旧市街の港から30分に1本出ている船で、片道約10分の距離である。実はこの島も世界遺産に登録されており(クロアチアは世界遺産の宝庫!)、やはり『ゲーム・オブ・スローンズ』のロケ地にもなっている。

埠頭に停まっている小さなボート
船であっという間にロクルム島に到着

ドゥブロヴニクからの船の往復と、島の入場料込みで、ケーブルカーと同じ大人一人27ユーロ。ゆっくりハイキングすれば一日楽しめる場所なので、景色を見て写真を撮るだけの目的でケーブルカーに乗るよりは、だいぶコストパフォーマンスが良いとも思える。

このロクルム島には、修道院の跡など歴史的にも興味深い建造物が残っていたり、豊かな自然があったりするが、何より驚いたのは野生の孔雀があちこち歩き回っていること。

鮮やかな青い羽根の雄の孔雀と、背景にそびえる遺跡
人に慣れているのですぐ近くまで寄ってきた

孔雀の甲高い鳴き声がすると最初はビクッとしたが、次第に慣れてくる。また、点在する綺麗なビーチの中には、ヌーディストビーチもあった(旧東ドイツにも残っているのでベルリン在住者にはお馴染み)。

ドラマに出てくる玉座に腰掛けたD
Dは『ゲーム・オブ・スローンズ』が好きなのでロケ地を見てご満悦。修道院跡の展示スペースには座って写真を撮れる玉座も

そして何より、島の中央部の丘にある城砦跡まで上ると、対岸にあるドゥブロヴニクを一望できる。隠れたフォトスポットだ。

海を挟んで対岸にあるドゥブロヴニクの旧市街とスルジ山
旧市街と背後のスルジ山を見渡せる

ケーブルカーで混雑したスルジ山の山頂まで行くよりも、日程に余裕があれば、ロクルム島でハイキングやビーチを楽しみつつ対岸からドゥブロヴニクを眺める方がお勧め!

ドゥブロヴニクのびっくりする物価

ちなみに、強気の値段設定なのはケーブルカーだけではない。ドゥブロヴニクの物価は、何を見てもドイツと比べて1.5倍くらいである。それまでに訪れたクロアチアの他の町は、むしろドイツより安い印象だったので、この一大観光地だけが異様に高いのだと思う。

レストラン然り、お土産然り。アイスクリームも1スクープ3ユーロだった(ベルリンも最近値上がりしているが、2ユーロくらいが相場)。もしクロアチアを周遊する場合には、お土産は無理してドゥブロヴニクで買わずとも、他の町で調達した方がよいと思う。

お店の前で手に持ったアイスクリーム二つをパチリ
それでも食べたくなって買ってしまったアイスは、確かに美味しかった

私たちは旧市街の外にあるアパートを借りていたので、やはり他の町よりは割高だったがスーパーで買い物して、自分たちで料理することにした。バルコニーからはドゥブロヴニクの旧市街を遠くに眺めることができ、贅沢な時間だった。

バルコニーのテーブルに並んでいるサラダ、ニョッキ、ワインとビール
クロアチアでの最後の晩餐は自分達で手作り

買い物といえば、旧市街の中でも中心部からは外れた、城壁沿いの小さなお土産屋さんにたまたま入ったところ、手作りの商品の説明が多言語で書かれており、その中には日本語もあった。

私がDに「日本語もあるね」と(ドイツ語で)言ったところ、店長と思われるクロアチア人女性がそれを聞いていて、急に日本語で「あなたは日本人ですか?」と私に声を掛けたのでびっくりした。聞いたところによれば、

コロナになってしまってご無沙汰ですが、前は日本人のお客さんがたくさんいたので、せめて商品の説明は日本語でできるように、3ヶ月くらい日本語のコースに通ったんです。あとはお客さんと話す中で日本語を覚えました

という。しばらく英語と日本語を織り交ぜて立ち話したが、日本によいイメージを持ってくれていることが伝わってきて、嬉しくなった。日本人には特にイチジクのお菓子が人気だったという。今年以降、徐々に日本からの観光客も戻っていくことを願いたい。

石造りの建物に囲まれた細い道の右側に店舗の入り口があり、赤い椅子と風車が目印になっている
民俗学博物館の近くにある地元のお土産屋さんは、赤い椅子が目印

旅の終わりに…猫コレクション

こうして、クロアチアを縦断するバスの旅は無事に幕を閉じ、私たちはドゥブロヴニク空港から直行便でベルリンへ帰った。

ドゥブロヴニク旧市街からの空港行きシャトルバスは、フライトの時間に合わせて運行されるため直前までタイムテーブルが出ず、事前予約もできないので多少心配だったが、実際には特に問題なかった。前日にバス停付近の窓口でチケットを買った際に聞いたところ、「座席の予約はできないが、空港行きバスは立って乗ることも許されているので、満員で乗れないということは基本的にないから大丈夫」とのことだった。

高台から見下ろした旧市街
バス停の近くから、朝の光に照らされた旧市街を最後に眺める

長くなった旅行記の最後に、私が今回の旅で撮りためた猫の写真コレクションをご紹介したい。クロアチアでは犬よりも猫をよく見かけ、猫好きの私はその度にカメラを向けずにはいられなかった。多くは野良猫だったと思うが、クロアチアの風景と猫はどこかマッチしている。

バイクの席の上でうとうとしているジンジャーキャット
古都トロギールでうとうとしていた猫
黒の斑点が入った白い猫が、高台の階段から旧市街の方を見下ろすように座っている
スプリトのハイキングコースへ向かう途中で
イーゼルに置かれたアート作品の下にちょこんと座っている黒猫
ドゥブロヴニクの旧市街の店先で
木製のプランターの下の隙間で横になり、気持ちよさそうに目を閉じている猫
暑いと猫も日陰で長くなる
ドゥブロヴニクの城壁沿いを散歩中、目が合ったハンサムな猫

スロベニアからクロアチア南端までのバスの旅は、自然あり歴史ありグルメあり猫あり…の楽しい休暇でした

コメント

タイトルとURLをコピーしました