バウムクーヘンの聖地・後編:焼きたてパンのように

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3つの工房のバウムクーヘン

さて、ここからはお楽しみの、バウムクーヘン食べ比べレポート

私は今回の日帰りの旅で、ザルツヴェーデルにあるバウムクーヘン工房のうち、3つのものを買って帰った。それぞれ約200年前から守り続けているレシピが若干違うので、その興味深い経緯は前編をどうぞ。

大きさもラッピングも違うバウムクーヘン3つ
形にも個性があるバウムクーヘン

ドイツのバウムクーヘンの生地は、入れてよい材料が決まっているので、基本的にプレーン味しかない。違いが出るのはコーティングで、シュガーコーティングダークチョコレートミルクチョコレートなどが一般的である。

そして伝統的な切り方は、(日本のように縦ではなく)横に薄く削ぐように切る。ドイツのバウムクーヘンは日本よりも目が詰まっていることが多いが、この切り方だと口当たりがかなり軽くなるのでおすすめ!

① Erste Salzwedeler Baumkuchenfabrik

まず最初に、1807年のレシピを現在はHennig家が守っている、Erste Salzwedeler Baumkuchenfabrik(『最初のザルツヴェーデルのバウムクーヘン工房』)。

Erste Salzwedeler Baumkuchen Fabrik - Tradition seit 1807 aus Salzwedel
Baumkuchen Salzwedel gesucht? Bei der ersten Salzwedeler Baumkuchenfabrik erhalten Sie natürliche Backwaren in höchster ...

私が持ち帰り用に買ったのは、何もコーティングがないプレーンタイプ。他にもシュガーコーティングとチョコレートコーティングが売られていた。

フィルムに包まれた1段のバウムクーヘン
包装は簡易で、透明なフィルムで上からくるっと包み、裏でフィルムの端を真ん中の穴に詰め込んだだけ

真ん中の穴は小さめで、焼けたバウムクーヘンを棒から取り外すために巻かれた紙の下には、まだ糸も残っていた。

半分に切って、真ん中の紙を取り除いたバウムクーヘン
年輪、つまり各層の焼き目がくっきり見える

わくわくしつつ、薄く切って食べてみると…

薄く横に削いだバウムクーヘンをのせた小さなお皿と、工房のパンフレット
実はコーティングなしのバウムクーヘンをドイツで食べるのは初めて

ふわっふわで美味しい!しっとりと柔らかく、ふわっとバターが香る。口溶けがよいのは、作る時に卵白のメレンゲをしっかり立てているのだと思う。ちょっとシフォンケーキに近いかもしれない。

甘さ控えめなので、コーティングがないプレーンタイプは、生クリームリキュールを合わせるとさらに美味しそう(お店でもらったパンフレットにも、おすすめのトッピング方法が記載されていた)。

このお店の工房は、ザルツヴェーデルの中心地から離れた場所にあり、私は時間的に行くことができなかったので、旧市街にある支店で購入した。

白と赤が基調になった店内にあるカウンター
写真には写っていないが、店番はハキハキした明るい中年の女性だった

小さなカフェスペースもあって、その場でバウムクーヘンやアレンジしたケーキを食べることができる。

楕円形のテーブルに、ボルドーの布を張ったソファーが置かれている
アンティーク調の家具がかわいい

私もシュガーコーティングのバウムクーヘンのカットをその場で注文してみた。他のお店と比べてコーティングの厚さは薄く、やはり全体的に甘さ控えめ。ふわふわの食感でいくらでも食べられそう。

バウムクーヘンのカット4切れと、コーヒー1杯
バウムクーヘンのカットとコーヒーのセットで7.5ユーロだった

それから店員さんおすすめのケーキも頼んでみた。バウムクーヘンのカットにクリームを挟み、チョコレートでコーティングしたもので、濃厚な味がコーヒーとよく合って美味しい。

Hennigという名前とバウムクーヘンのマークが入ったチョコレートがついた、チョコレートコーティングのケーキ
お皿やフォークもお洒落

② Café Kruse

次は、①の工房と枝分かれし、現在では旧市街で大きなカフェも営むCafé Kruse

Baumkuchen aus dem Café Kruse - seit 1842 in Salzwedel
Baumkuchen Shop der Kruse Baumkuchen GmbH: Heute wie damals wird unser Baumkuchen von Hand und vor offener Flamme geback...

こちらではシュガーコーティングのバウムクーヘンを買って帰った。金色の台紙が入っており、ラッピングも見栄えするので、プレゼントにも良さそう。

フィルムで下からくるまれ、上はリボンとシールでまとめられたバウムクーヘン
真ん中の穴は大きめで、トゲトゲもはっきりと見て取れる

横にスライスして食べてみると…

薄くスライスしたバウムクーヘンがのっているお皿と、お店のパンフレット
シュガーコーティングは厚め

甘い!密度はしっかり目で、生地の甘さもはっきりしている。食べ応えがあるのは、①よりもこちらの方だと思う。ドイツのバウムクーヘンらしい美味しさだ。

しっかり甘いシュガーコーティングは、原材料の表示を見ると全体の26パーセントを占めている。

ところでこのCafé Kruseは、ザルツヴェーデルでは突出した商売気を出している。カフェ兼ショップは定休日なしで営業していて、かなりの席数があった。

クラシックな雰囲気のインテリアの店内
広々としたカフェには、バウムクーヘン以外のケーキも色々ある

そして街中の至る所に看板を出して、宣伝に力を入れている(街の景観を壊しているという批判もあるようだが…)。

建物から突き出すように付けられた、バウムクーヘンを持った男の子と、Café Kruseという店名の看板
カフェから離れた通りで見つけた昔風の飾り看板

➂ Salzwedeler Baumkuchen GmbH

さて、いよいよ3軒目、Salzwedeler Baumkuchen GmbHという工房。

Hauptnavigation

以前は旧市街のカフェにも卸していたようだが、現在は工房に併設されているショップ兼カフェでしか販売していないようだ。

左手には緑、右手には何かの作業所がある、殺伐とした雰囲気の道路
ザルツヴェーデル駅から20~30分ほど、殺風景な道を歩く

辿り着いたショップでは、通常の大きさのバウムクーヘンはほぼ売り切れていた。

工房とショップが入った平たい無機質な建物
奥が工房になっているようだ

悩んだのだが、ホワイトチョコレートコーティングのミニバージョンがあったので、こちらを買って帰った。

フィルムで下からくるまれ、上はリボンとシールでまとめられたバウムクーヘン
②と同様にプレゼントにも良さそうなラッピング

家で切って食べてみると…

ホワイトチョコレートでコーティングされた、一口サイズのバウムクーヘンがのった小さなお皿

しっとりなめらかで美味しい!!コーティングと分けて生地だけを食べてみても、驚くほどきめが細かく、甘さもちょうどいい。

全面が厚めのチョコレートで覆われているので、生地が乾燥から守られているのもあると思う。半分くらいはチョコレートを食べている感じで、デザートとしての満足感も十分!

食べ比べの結果

それぞれ、①コーティングなし、②シュガーコーティング、➂ホワイトチョコレートコーティング、とタイプが違ったので、純粋な比較は難しい。それを承知の上で、「これは日本でもない美味しさかも!」と個人的に感激したのは、 Salzwedeler Baumkuchen GmbHのバウムクーヘン。

ただし私が無類のチョコレート好きという影響があることは否めないので、次回はぜひコーティングなしか、シュガーコーティングのものを試してみたいと思う。

① Erste Salzwedeler Baumkuchenfabrikのバウムクーヘンも、ドイツでは他に食べたことのない柔らかで溶けるような口当たりだったので、ザルツヴェーデルの特産品としてぜひ食べてみてほしい。私はこちらのシュガーコーティングをプレゼントとしても買ったが、日本人の同僚にも「美味しい!」と好評だった。

フィルムで包装された、Erste Salzwedeler Baumkuchenfabrikの一段のバウムクーヘン
シュガーコーティングの厚さは薄め

どの工房もオンラインショップがあるので、ザルツヴェーデルまで買いに行かずとも、ドイツ国内にお住まいの方はオンライン注文できる。

なお、値段はどの工房もほぼ同じくらいだったが、日本と比べると格段に高価である。一人でも食べきれてしまいそうな、上の写真の1段のバウムクーヘン(約280g)が約15ユーロなので、換算レートによるが2000~3000円という計算だ。もう少し高さのあるものを選ぶと、すぐに5000円くらいになってしまう。

購入時に注意すべきこと

さて、ザルツヴェーデルのバウムクーヘンを購入する際には、気を付けなければならないことがある。添加物が一切入っていないので、あまり日持ちしないのだ。

①のHPによれば、コーティングなしは10日間シュガーコーティングは12日間チョコレートコーティングは18日間となっている。ただし、どの工房もそう謳っているように、「新鮮であればあるほど美味しい」のがザルツヴェーデルのバウムクーヘン。

前編の冒頭で紹介したクロイツカムのものとは違い、そもそも密封されていないが、焼きたてが冷めたらすぐに包装して店頭に出されているようだ。ザルツヴェーデル産バウムクーヘンの扱いは、焼きたてのパンと同じと考えればわかりやすいかもしれない。

そしてまさしくパンと同じで、私がお店の人に勧められたのは、「すぐ食べきれない場合には冷凍保存」すること。日が経つとどんどん味が落ちていくので、なるべく新鮮なうちに冷凍してしまうのが安心。

特に夏場はカビが生えやすいそうなので要注意(オンラインの口コミでも、すぐにカビが生えてしまったというレビューを何度も読んだ)。

そして、ドイツにお住まいか旅行で来る予定があり、ぜひザルツヴェーデルで食べ歩きしてみたい!という方は、なるべく平日に行くことをお勧めする。というのも、日曜日にはスーパーも閉まるドイツらしく、バウムクーヘン工房も日曜日はお休み(② Café Kruseだけは営業)。そして土曜日もお昼過ぎには閉店してしまう。

私は土曜日の11時くらいに着く電車で行ったのだが、①と③の工房は閉店時間が近かったので、もう売り場がほぼ空になっており、ほとんどバウムクーヘンを選ぶ余地がなく、残っているものを買うしかなかった。早朝にベルリンを出ればよかったと思ったが時すでに遅し。

また、平日だと工房見学もできる。① Erste Salzwedeler Baumkuchenfabrikは、月・水・金の9~12時は無料でバウムクーヘンを焼いている工程を見学でき、味見もできるそうだ。私も次回はぜひ平日に出掛けてみたいと思っている。

バウムクーヘン=知的財産?

最後の最後に、あと一つ豆知識を。

EUでは、原産地を特定する『地理的表示』と呼ばれる知的財産権の一つが保護されている。有名な例でいうと、フランスのシャンパーニュ地方で作られ、一定の基準を満たしたスパークリングワインしか、シャンパンと名乗ってはいけない。

ドイツの特産品にも、この地理的表示保護(英語:protected geographical indication、ドイツ語:geschützte geographische Angabe)を受けたものが多数ある。例えば、日本でも人気のシュトーレンの産地といえばドレスデンだが、『ドレスデナー・シュトーレン』は2010年から保護されている。

そして『ザルツヴェーデラー・バウムクーヘン』も2013年に登録された。似たレシピを使っていたとしても、ザルツヴェーデルで生産されたバウムクーヘンしかこう名乗ってはいけないのである。

バウムクーヘンの裏面の原材料表示シール
私が買ったバウムクーヘンにも、シール右上にこのgeschützte geographische Angabeのマークがついていた

200年を超える歴史の変遷を乗り越え、今でも大切に守られているザルツヴェーデルのバウムクーヘンの味、これからもずっと伝えていってほしいです

食文化
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