アイスランド紀行④:レインボーカラーの国

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季節労働者

私がアイスランドを一周した二週間半の間でも、面白い出会いが幾つもあり、その多彩さに驚かされた。旅行記の最後となるこの記事では、アイスランドで出会った人々にスポットをあててみたい。

アイスランドは人口約36万人という小さな国。観光客が急増していると聞くが、どうやって対応しているのだろうと不思議に思ってはいた。

実際に行ってみてわかったのは、いわゆる季節労働者が外国から多く来ているらしいことである。見た目ではそうとわからず、アイスランド人だと思って話していると、実はヨーロッパの他の国の出身だということが何度もあった。

アイスランド人かどうかは、名前を見ればすぐにわかる。なんとアイスランドには、家族共通の姓という概念がないのである。Wikipediaに詳しい日本語の説明があるので、興味のある方はぜひ一読を!

外国人の季節労働者といえば、ドイツでも話題に上ることがあるが、農業分野のことが多いと思う。特に春の白アスパラガスの収穫が代表的で、新型コロナウイルスのため国境が閉ざされていた2020年は、ルーマニアやポーランドからの労働力不足が新聞でも報じられていた。

一方アイスランドで人手不足となるのは、観光ハイシーズンにあたる夏の数ヶ月のようだ。私達が首都レイキャビクに到着した8月下旬、キャンピングカーを予約していた会社から私達の宿まで車で迎えに来てくれたのは、フランス人学生の若い女性だった。夏の間だけアイスランドで働いているのだという。短期で住む場所を見つけるのもそんなに大変ではないそうで、誰か知り合いで部屋が余っている人がいたら、ほとんど口約束ですぐに入居できるらしい。

また、Siglufjörðurという小さな港町にある、これまた小さなビール醸造所を訪れたとき、カウンターで忙しそうにしていたのも、若いフランス人の学生だった。英語力向上のために数か月間インターンをしているのだという。

ビール醸造所のカラフルなバーのカウンター
マイクロ・ブリュワリーの『Segull 67』。その人気は高く、アイスランド中で販売されている

その近くには地元の人がひっきりなしに訪れるパン屋があったが、明らかに観光客の私達が何を買おうか迷っていると、店員の若い女性が親切に色々と説明してくれ、ドーナツのような伝統的なお菓子の味見までさせてくれた。「どこから来たんですか?」と聞かれたので私とDが「ドイツです」と答えると、彼女も外国人だという。

私はギリシャ出身なんです。恋人がアイスランド人で、しばらく遠距離恋愛だったんですが、ギリシャの経済状況もよくないし、移り住むのにいいタイミングかなと思って

ここでの生活はどうですかと聞くと、「アイスランドは人もみんな優しいし、幸せですよ」と可愛い笑顔を見せてくれた。彼女のように、季節労働者ではなく長期的にアイスランドで暮らしている外国人も多いに違いない。

遠くに山と教会が見える通りの角にあるパン屋
パン屋を出るときに気が付いたのだが、店員さんと私達が話し込んでいるうちに、店内には行列ができていた…

外国人観光客

観光が大きな収入源となっているアイスランドでは、地元の人達も外国人観光客に対して非常にフレンドリー。北欧について概して言えることだが、特に若い世代の人達はネイティブかと思うほど英語が上手である。また、アイスランド語はゲルマン語派に属するので、ドイツ語話者にとっては読むぶんには何となく意味を推測できることも多い(日本人が中国語を読む感覚に近いだろうか)。

アイスランドの観光客としてはアメリカ人が多いというのは、私もドイツにいる頃からよく聞いた話である。というのも、ヨーロッパ大陸とアメリカを結ぶフライトではアイスランドで乗り換える人も多く、フラッグ・キャリアであるアイスランド航空会社では、無料でストップオーバー(乗り継ぎ地での滞在)をできるのである。

私が実際にアイスランドで見掛けた観光客は、確かにアメリカ人も多かったが、驚くほどドイツ人の割合も高かった。前の記事で書いたような自治体が管理している温泉に行くと、そこに居合わせた10人くらいが全員ドイツ語話者(ドイツ人と、ドイツ語圏のスイス人1人と私)で、温泉に浸かりながらドイツ語で色々な情報交換をしたこともあった。

外国人観光客にとっての玄関口である首都レイキャビクでは、ゲストハウスで出迎えてくれたのはセルビア人男性だった。オーナー夫婦と友達で、彼らが不在の間に仕事を引き受ける(のと自分の休暇を兼ねて)3ヶ月くらいアイスランドにいるのだという。ここに泊まるゲストは様々な国籍の外国人ばかりなので、共通言語はやはり英語となる。

長テーブルが中心に置かれたクラシックな内装の部屋
ゲストハウスの素敵なリビングルーム

話が脱線するのだが、このリビングルームで盛り上がっていた男性ゲスト達とオーナー代理の会話を聞きながら、私は「テレビゲームの力ってすごいな」としみじみしていたのだった。初対面のセルビア人、アメリカ人、イタリア人、ドイツ&ロシアのハーフ(私の同居人D)が夜中まで数時間話し込んでいたからだ。

近年で特によかったゲーム、あるゲームでのボスの攻略法など、テーマは尽きない。そして世界的に有名なテレビゲームといえばほとんど日本のものである。私は日本人ながらゲームに詳しくないので横で聞いているだけだったが、国籍を問わずすぐに盛り上がれる共通の話題があるというのは何とも羨ましい。

そしてテレビゲームを通して、日本の文化に無意識のうちに親しんでいる人が世界中にいるということですね

多様性のレインボー

長期的に働いている人、短期の旅行で来ている人を問わず、様々な国の出身者と出会うアイスランド。それだけでも多彩だが、私が更に素敵だなと思ったのは、ジェンダー・ダイバーシティも推進していること。いわゆるLGBTQ+として表されるような、性的マイノリティにも優しい国なのである。

例えばアイスランドは同性結婚をすでに2010年から認めている(ドイツは2017年から)。そして当時の女性首相だったJóhanna Sigurðardóttir氏も、同年に長年のパートナーだった女性と結婚した。パートナーシップ制度すら浸透していない保守的な日本と比べると、まるで別次元にあると言わざるを得ない。

LGBTQ+のシンボルと言えば、レインボーフラッグ(虹色の旗)である。アイスランドでは様々な町の中で、石畳や階段が虹色にペイントされているのを見掛けた。

山の前に立つ水色の教会に向かって、虹色に塗られた道
可愛らしいSeyðisfjörður(セイジスフィヨルズル)の教会前

アイスランドを訪れる観光客がほぼ100パーセント目にするであろう、首都レイキャビクのシンボル、ハットルグリムス教会へ続く道もこのとおり。恒常的に虹色にペイントすることを市議会が決定したそうだ。

特徴的な形をした教会に向かって伸びる虹色の道
観光客が絶え間なく行き交う坂道

毎年夏にはLGBTQ+コミュニティーをはじめ誰でも自由に参加できる『レイキャビク・プライド』という大規模なイベントが開催され、街中がカラフルな衣装を着た人々や、パーティー音楽に合わせて踊る人々で賑わうのだという。

ベルリンもオープンな場所だと思っていたが、アイスランドは更にその上を行くかもしれない。町をあげて、国をあげて、多様性を守り広めていこうとする姿勢を感じられる。

そして天気が変わりやすく、水源の豊かなアイスランドでは、滝の近くなどで本物の虹も何度も見ることができた。

青空に映える、崖の狭間にくっきりと半円を描いている虹
Dettifossという滝があげる水飛沫が描いた虹

ドイツへ帰国する前、空港で最後に目にしたのも虹色だった。天井が綺麗にライトアップされていたのである。

混み合う空港の手荷物検査場、高い天井が虹色に照らされている
手荷物検査を終えてゲートに向かう前にパチリ

自然も人々も多彩で、誰にでもオープンなアイスランドは、まさにの国でした

外国紀行
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