車内を覗くと
アイスランドへ行くということも貴重な経験ながら、私にとってはキャンピングカーで旅することも初めての体験だった。日本人の多くにとって未知の世界ではと思うので、この記事ではキャンピングカーでの生活をテーマとして詳しく書いてみたい。
アイスランドには電車がないため、ツアーに申し込んでいる場合を除いて車で旅することになる。物価が高いのと(日本やドイツの2倍くらい)、至る所に町があるわけではないので、移動と宿泊を兼ねてキャンピングカーを借りれば節約にもなるし便利である。私達がレンタルした会社はキャンピングカー専門だったが、夏の間は予約でいっぱいとのことだった。
まず、一言でキャンピングカーと言っても様々な種類がある。私と同居人Dが借りたのは、シャワーやトイレは付いていない、比較的コンパクトなタイプ。2~3人用とのことで、2人だとちょうど良かったが、大人3人だと窮屈だっただろうなと思う。
車の後ろのスペースはリビングルームのようになっており、テーブルとソファー、冷蔵ボックスと流しが備わっている。
流しの下には食事に必要なもの(プラスチック製の食器・カトラリー・フライパンなどの調理器具・キャンプ用ガスコンロ)が収納されている。流しの水はキャンプ場でタンクに補給するが、多くの水道には専用の長いホースがあったので、毎回タンクを取り外さずにすんだ。
夜はテーブルを取り外し、両側のソファーの間に金属の棒を渡して、取り外した背もたれを埋め込むと、ベッドのように平らになる。私達はここに寝袋を広げて寝ていた。床も固くないし、天候にも左右されないし、なかなか快適だった。車のエンジンを切っていても、バッテリーで暖房をつけておくことができる。
キャンプ場レポート
注意点としては、キャンピングカーであってもどこでも好きな場所に滞在していいわけではなく、基本的にキャンプ場での寝泊りしか許可されていないことである。アイスランドのキャンプ場がどんな感じかというと、千差万別!
どこでも必ずあるのは、トイレと、食器などを洗える流し。シャワーがないところも何ヶ所かあった。平らな駐車場にトイレと流しだけという本当に最低限の設備の場所もあれば、共同キッチンスペース、洗濯部屋、シャワーが完備されている大規模なキャンプ場もある。人気のキャンプ場は車を停めるスペースを探すのに苦労するほど混み合っていた。
管理しているのは、近場のホテルだったり、土地の所有者らしい家族だったり、地元の自治体だったりと様々である。市民プールの設備の一部と駐車場をキャンプ場として開放しているところもあった。
利用料金は1人1泊1500円くらいが相場で、洗濯機などの利用や、場合によってはシャワーも別料金になっていた。事前予約は必要なく、到着して車を停めてから料金を支払う。決まった受付がない場合には、夜や翌朝に集金の人が回ってくることが多い。どの人も非常にフレンドリーである。
私達はCamping Cardという、提携している一部のキャンプ場なら好きなだけ泊まれるカードを事前に購入していた。
キャンプ場で周りを見ていると、普通のレンタカーにテントを積んで移動し、毎晩テントを張って寝ている人も結構いた。天気の悪い日は大変なのではと思う。キャンピングカーではない人にとっては、共同キッチンスペースなどの設備は確かに大事だろう。
私達が泊まった中で特に素晴らしかったのは、ヴァトナヨークトル国立公園の氷河の麓にあるキャンプ場。非常に清潔でシャワーも追加料金なし。隣にある通常の駐車場に停めても料金が掛かるので、キャンプ場に泊まった方がお得感があるし、朝起きてすぐにハイキングに出掛けられる。
運転事情
さて、アイスランドの運転事情がどうかといえば、そう難しくはない。首都レイキャビクを出てしまえば、交通量は少ないし道は広い。舗装された道での最高速度は90キロ、されていない道では80キロに制限されている。
旅行者は国道1号線(通称リングロード) という島を一周する主要な道路を走ることが多く、主な観光地はその周辺に集中している。滝やカルデラ、温泉や氷河など、お目当ての名所は駐車場から歩いてすぐということもあれば、数時間ハイキングしてやっと辿り着くこともある。
右側通行なのと、ラウンドアバウト(なぜかアイスランドでは内側のレーンが優先)が多いのを除いては、日本人でも問題なく運転できると思う。唯一忘れてはならないのは、昼夜を問わずヘッドライトを常時点灯して運転する法律があること。確かに急に霧が出てきたときなど、ライトがあると前後の車の位置がわかり安心だ。
私とDはドイツの免許証を持っており、ヨーロッパならどこでも運転できるのだが、二人ともいわゆるペーパードライバー。AT車のキャンピングカーを借りて、結局Dが全行程運転してくれたのだが、最初は恐々としていたのが途中からは楽しくなったそうだ。確かに急に人が飛び出してくる心配はないし、時々動物に気を付ければよいだけである。
至る所で草を食べている羊は賢く、急に車道に入ってくることは少なかったが、なぜか悠々と道のど真ん中に座り込んでいるカモメを何度もひきそうになったのは少し恐かった。
私達はスマートフォンのGoogle Mapをカーナビとして使っていた。本当に山奥に行かない限り概してどこでも電波が良く、私は職場の都合で何日か翻訳作業をする必要があったのだが、何の問題もなく遠隔で仕事できた。一応Wi-Fiルーターも借りていたのだが、私達のドイツのSIMカードはヨーロッパ内であれば国内と同じ条件で使えるので、携帯の電波だけでも事足りたかもしれない。
救世主・ガソリンスタンド
車社会のアイスランドで、ガソリンスタンドの存在が重要なのは言うまでもないが、これほどまでに「あっ、あそこにガソリンスタンドがある!助かった!」と喜んだことは、今回の旅行をおいて他にない。
というのも、ガソリンスタンドは給油するためだけの場所ではなく、休憩所のような役割を果たしているのである。トイレを利用できるし(たいてい無料)、売店で食べ物や飲み物を買うこともできる。小さなスーパーやイートインスペースが併設されているところもある。
人口が少なく、相当な距離を走らないと次の町まで辿り着かないことも多いアイスランドで、ガソリンスタンドが視界に入ると救世主のように(というのは大袈裟だが)輝いて見えた。基本的にアイスランドでは給油はセルフサービスだが、使い方がわからず困っていると、周りの人や売店の店員さんが助けてくれた。
ところで私とDの友人には、アイスランドに行ったことがあるドイツ人がたくさんいるのだが、そのうちの一人から出発前にこんなアドバイスをされた。
ガソリンスタンドに行ったら、迷わずピザを注文して!びっくりするほど美味しいから。ドイツにあるピッツェリアよりよほど美味しいよ
ということで、アイスランドで一番よく見かけた「N1」というガソリンスタンドで実際にピザを注文してみた。チーズ大好きな私達は4種のチーズのピザにし、せっかくなので一番大きな16インチ(約40センチ)を頼むと、運ばれてきたのはお盆に載りきらない巨大なアツアツピザ!
一切れ手に取ると重みを感じるほどチーズが大量にのせられ、手作りしているという生地も厚すぎず薄すぎず、もちもちして美味しい。そのレベルの高さにびっくり。よく日本でも見る蜂蜜ではなくジャムが付いてきた。
私もDも、真剣に、アイスランドで食べた中で一番印象に残ったのはガソリンスタンドのピザだと思います…笑
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