アイスランドに行くはずが、日本に帰った話①:序章

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休暇に悩む

2020年ほど、休暇の予定を立てにくい年はなかっただろう。新型コロナウイルスの蔓延。世界的に刻々と変わっていく入国規制。行きたい場所へ行けたところで、帰ってこられるのか、帰ってこられても隔離措置があるのか。不要不急の外出は自粛するムードが続く中、国外は言わずもがな国内旅行も控える人が多くなったのは、ドイツでも日本でも同じだろう。

それでもドイツでは初夏くらいから、再びヨーロッパ内の移動に関して自由になり始めたので、夏の休暇を隣国で過ごす人も少なくなかった。飛行機での移動に抵抗があるとしても、そこは陸続きの地理の利点で、車であまり人のいない地域へ行ってゆっくりすることもできる。

私自身も夏に何週間か休暇を取る予定でいたが、どこへ行こうかずっと決められないでいた。しかし在宅勤務の日が多かったのもあり、ずっとベルリンの家にいると頭を切り替えられず、リフレッシュできる気がしない。そんな時にベルリーナーDから、

ミュンヘンの友達とアイスランドでキャンピングカーの旅をするから、一緒に来なよ

と声を掛けてもらい、8月末〜9月半ばまでアイスランドへ行くことに。

人口約36万人という島国アイスランドは、その大自然で知られている(というより、自然しかない)。アイスランドより少し面積が小さい北海道でも、人口約530万人ということを考えると、いかに人口密度が低いかということがよくわかる。コロナに対する懸念がなかったわけではないが、飛行機での移動さえ気を付ければ、大自然の中をキャンピングカーで旅する分には心配ないだろうし、誰かに迷惑を掛けることもないだろうと思ったのだった。

ちょうどジュール・ヴェルヌの『地底旅行』を読んでいたところだったので、アイスランドの地形に興味津々

青天の霹靂

バックパックやハイキングシューズなども揃え、アイスランド行きを楽しみにしていた8月半ば。もう出発が翌週末に迫っていたところに、思い掛けない情報が舞い込んできた。

いきなり入国規制が厳しくなった…?!

それまでドイツからの渡航者に関しては何の規制もなかったのだが、8月19日以降、入国者はもれなくアイスランドの空港で有料のコロナ検査を受け、ホテル等(キャンピングカーは不可)での5日間の自主隔離の後、保健所で2度目の検査を受けて、それも陰性であれば旅行可というように変わったのだ。

観光業が主な産業であるアイスランドにとって、観光客には来てほしいがウイルスには来てほしくない、という苦渋の決断だったことは間違いないだろう。私にとっては、まだ日本行きなど長距離線に乗るには時期尚早かもしれないから、夏は大人しくヨーロッパで休暇、と考えたのが裏目に出た。

私達は元々2週間の滞在予定だったので、5日間も隔離されると予定が大幅に狂ってしまうし、スイス並に物価が高いアイスランドではホテル代も相当の額になる。仲間と相談した結果、泣く泣く今回のアイスランド旅行は中止し、可能であれば来年に延期することにした。

キャンセル手続き:ドイツあるある

アイスランド旅行のために予約していたものはあまり多くなく、到着日に首都レイキャビクで一泊するはずだったゲストハウスは、オンラインで無料キャンセルできた。

キャンピングカーも無料でキャンセル可能だったのだが、やはりレンタル会社もお客さんを繋ぎとめておきたいのだろう、「キャンセルではなく延期される場合、来年のどの時期でも、値段を据え置きにします」とメールで提案された。私達は元々、気候は良いが値段が高くなるハイシーズンが過ぎた頃に行く予定だったのだが、それなら6〜7月のハイシーズン中に行くことにしようと、来年の夏に仮予約させてもらった。

一番苦労したのはフライトのキャンセルである。ドイツの大手航空会社で予約しており、少々込み入った話になるため興味のない方にはご容赦いただきたいが、ドイツらしい話でもあるので詳しく記しておく。

新型コロナウイルスで先の予定が立てられなくなってから、この航空会社も、誰でも一回は無料で予約変更できるよう規則を変えていた。そのため、問い合わせてみて無料でキャンセルできれば一番良いが、無理だったらひとまず来年6月半ばくらいに予約変更をしようと、仲間と相談して決めた。

しかし、何回サービスセンターに電話を掛けても繋がらない。「順々にお繋ぎしますのでお待ちください」というアナウンスが流れるが、10分以上待っても一向に繋がる気配がない。音を上げそうになっているところへ、ミュンヘンの友人Sが、航空会社のスマホ用アプリをダウンロードし、「折り返し電話を希望」という箇所に電話番号を入力しておくと、すぐに電話が掛かってくることを発見。

そしてカスタマーセンターと電話が繋がったSは、「キャンセルはできないが、無料で予約変更可能」と聞き、(私とDに確認する前に)来年6月半ばに予約変更をしてしまったという。渡航不可の状況になれば、航空会社は無料でキャンセル&払い戻しすることになっているが、今回は入国自体はまだ可能なので、それには当て嵌まらない。

その連絡を受けたDも、慌ててアプリを使ってカスタマーセンターに連絡したが、「キャンセルも無料の予約変更もできない」と言われてしまう。なぜSの場合と違うのか?

実はしばらく前に、ベルリーナーDと私が元々予約していた便が(Sとは現地集合を予定)、航空会社によって欠航になり、その代わりとなる違う時間帯の便を提案されたので、同意して『予約変更』したのだった。そのため、既に一回変更しているので、もう無料では受け付けられないという。

でもそんなの、私達の希望じゃなくて航空会社の都合じゃ…??

納得できなかったDも散々電話口で交渉したらしいが、ルールはルールなので、と取り合ってもらえなかった。仮にSと同じ便に予約変更しようとすると、追加で200ユーロ以上掛かるという。

憤り動揺したDから「どうしよう」と連絡があり、私もカスタマーセンターに折り返し電話を依頼した。Dと同じ条件なので、同じことを言われると覚悟していたが、駄目元でもう一度交渉してみようと思ったのだ。

私に電話をくれた担当者は、珍しく感じの良いドイツ人女性だった。「入国規制が厳しくなってしまったので、アイスランド行きのフライトをキャンセルか変更したいのですが」と事情を話すと、「もし前日までにどれかの便の欠航が決まれば、無料でキャンセルできるんですが…。あ、ちょっとシステムで調べてみますのでお待ちください」とカタカタ。

あっ、実際に以前一つ欠航になっていますね。これを理由にしてキャンセルしましょうか

なんと!私とDが以前同意した欠航まで遡り、無料でキャンセル&払い戻ししてくれるという。どう状況が変わるかわからないので、今から来年に予約変更するよりも、今回はキャンセルして、ひとまず様子を見た方が賢明である。「ありがとうございます!」と喜んでキャンセルをお願いした。

「実は同行人も同じ問題を抱えていて、先ほどサービスセンターの別の担当者に、キャンセルも無料の変更もできないと言われたそうなんですが…」と話すと、Dの予約番号を聞かれたが、手元に情報がなかった。するとフルネームだけで検索してくれ、「確かに同様に一つ欠航になっていますね。じゃあこちらもキャンセルしておきます」と対応してくれた。素晴らしい!

このように、同じ会社や組織であっても、担当者によって言うことが違うというのは、ドイツあるある。情報共有が徹底していないのか、個人の裁量が大きい文化のせいなのか、規則の解釈の問題なのかは微妙だが、何度か諦めずに掛け合ってみると功を奏することも。

以前、書類を提出した外局人局の窓口で「2週間掛かります」と言われた滞在許可の発行、急いでいたので事務担当者に直接メールで交渉したら、なんと3日で発行してくれた

ちなみに、予約していた便のうち(例えば乗り換え1回の往復便であれば4便)どれかが欠航になると、無料でキャンセル&払い戻しできるということは、航空会社のHPをくまなく見たがどこにも情報がない。「バウチャーの発行又は無料での予約変更が可能」と書かれているだけである。この、「直接聞かないとわからない情報がある」というのもドイツらしい現象だ。

アイスランドの代わりに…

さて、アイスランド旅行を急に延期することになったものの、頭は完全に休暇前モードでリフレッシュを求めている。すると、私の休暇代理でもある同僚から、「今のうちに一時帰国しては」と勧められた。

ドイツの職場では、仕事内容が近い同僚とペアになり、お互いの休暇の間は代理(Vertretung)を務めることが普通である。逆に言えば、代理関係にある同僚と休暇が被らないよう事前によく相談することが大事。2〜4週間くらいまとめて休暇を取る人が多い

元々、今年のクリスマス〜年始に掛けて一時帰国するつもりで、日本行きのフライトを取っていた。しかしまだ無料で予約変更できる。確かに、冬になってどう状況が変わるかわからないし、今ならドイツに帰ってからの隔離措置はないので、すぐ職場に戻れることはほぼ確実だろう。

しかし日本は帰国してから2週間は自主隔離することになっているため、2週間だけ滞在しても楽しくない。幸い休暇代理の同僚と上司も、休暇を延長してOKと快諾してくれたので、急だが9月に3週間一時帰国することにした。

元々アイスランドへ行くはずが、180度方向転換し、日本へ

空港の窓の外に見える青空と、ANAの機体
9月初め、羽田空港に到着

かなりコロナに振り回されてしまった感はあるが、この時期の一時帰国、ある意味で面白い経験となった。フライトや検疫の様子を、次の記事でまとめたい。

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