ドイツビール飲み比べ・後編

スポンサーリンク
スポンサーリンク

⑦ ヴァイツェン・ビア

ヴァイスビア
醸造所:Maisel、アルコール度数:5,2%

こちらも南ドイツのビール、小麦(Weizen)を使用したヴァイツェン。「白ビール」を意味するヴァイスビアとも呼ばれる。

パンの原材料となる小麦を確保するため、バイエルン州ではごく一部の特例を除いて16世紀から長らく製造が禁止されており、一般庶民には手の届かない存在だったという歴史を持つ。今でこそ同州を代表する人気ビールで、ベルリンなど北部でも広く販売されている。

一口飲んで私達4人がほぼ同時に発した言葉は、「バナナ」!熟れたバナナのようなフルーティーな香りと味が口の中に広がる。フルーティーといっても酸味は少なく、好き嫌いが分かれる味かもしれない。

私達の評価は5段階中3,0。ちなみに個人的には、このMaisel’s Weisseのノンアルコールが好きで(あまりバナナ感は強くない)、揚げ物などを食べるときに飲みたくなる。

★★★☆☆

豆知識:ビールの性別

ビールの性別とは何事か、と思われそうだが、文法上の話である。ドイツ語の名詞には、男性・女性・中性という3種類があり、それによって冠詞や形容詞の活用が変わってくる。

ドイツ語既習者の方はご存知のように、基本的にアルコール飲料はすべて男性名詞である。ワイン、ウォッカ、ウイスキー、リキュールをはじめ、ドイツでも人気が高まっている日本酒(Sake)も男性。

ただしこの法則には一つ例外がある。そう、ビール(Bier)は男性ではなく中性名詞なのだ。

中性名詞の飲み物といえば(Wasser)。ドイツ人にとってビールはアルコール飲料よりも水に近いのかもしれない、と覚えておくと、ビールの性別を間違えることはないだろう。

⑧ ペール・エール

ペール・エール
醸造所:BRLO、アルコール度数:6,0%

これもドイツ発祥の種類ではないが、私達4人が「美味しいね」と意見一致したペール・エール。苦味もありつつ、柑橘系の爽やかな味が口に広がる。BRLOのホームページによれば、「グレープフルーツ、マンゴー、パイナップル、パッションフルーツ」の味とある。

逆に言えば香ばしさはないが、飲みやすく一般受けしそうなビールだと思う。私達の評価は5段階中4,0。

★★★★☆

⑨ ラントビア

ラントビア
醸造所:C.&A. Veltins、アルコール度数:5,2%

これまで北ドイツと南ドイツのビールを紹介してきたが、これは西部にあるノルトライン=ヴェストファーレン州のGrevensteinで醸造されているラントビア。「地ビール」とも直訳できるが、実際にはその定義は明確でなく、ツヴィッケルビアケラービアと同義で使われることもあるようだ。

少なくともラントビアの特徴と言えるのは、ろ過されておらず濁っており、ミネラルなどが多く残っていること。苦味と穀物の風味を感じる。

私達4人は特にこれといった感動を受けなかったので、評価は5段階中2,5。

★★☆☆☆ 〜 ★★★☆☆

ちなみに、ノルトライン=ヴェストファーレン州といえば、ケルンのケルシュも有名。今回のテイスティング会では登場しませんでしたが、苦味が少なく飲みやすいビールです

豆知識:ビール1本は約100円

ドイツをビール大国たらしめているものは、ビールの種類の多さもさることながら、その値段である。スタンダードなビールは一本1ユーロ以下で買えるものが多い。私達もREWEという大手スーパーでテイスティング用のビールを調達したが、ほとんど89セントで、1ユーロを超えるものはなかった。

もちろんクラフトビールは値段が上がるが、それでも日本と比べればごく手頃である。

レストランでも、ビールとミネラルウォーターの値段はあまり変わらない。ベルリンは最近物価が上がっており、グラス小(300ml)で3,5ユーロ、グラス大(500ml)で4,5ユーロくらいが相場だろうか。

ハイデルベルクにてドイツ人学生3人とシェアアパートで暮らしていた頃、同居人が「今日の夜は飲みに行くんだ」と言いながら、すでに家でビールを開けているのを見ることがあった。曰く、「お店で何杯も飲むと高いからね、少し家で飲んでから行った方が経済的なんだよ」とのこと。

⑩ クラフトビール・ピルス

クラフトビール・ピルス
醸造所:BRLO、アルコール度数:4,9%

こちらは一番最初に紹介したピルスナーのクラフトビール版。名前もラベルも可愛く、ハッピー・ピルスという。

あまりインパクトのなかった通常のピルスナーと比べ、ホップの風味が強く、よりフルーティーな印象。苦味も感じる。私達4人の評価は5段階中3,0。

★★★☆☆

豆知識:お酒に強いドイツ人

よく知られた話だが、ドイツ人は概してお酒に強い。これは体質の遺伝によるもので、体内に入ったアルコールが肝臓で分解された物質を、更に分解してくれるALDH2という酵素の活性が強いのである。

逆に日本人の約40%はこの活性が弱く(お酒に弱い)、更に約4%は不活性(まったくお酒を飲めない)という研究結果もある。ところが、いわゆるヨーロッパ人には低活性型や不活性型の人はいないという。

有名なオクトーバーフェストでは、マースと呼ばれる1リットルジョッキでビールが出されるが、それも平気で飲み干すのがドイツ人。羨ましい気もしつつ、酔うためにお酒を飲んでいる人にとっては、コストパフォーマンスは良くないだろう。

日本人の私はお酒を飲むとすぐに顔が赤くなるので、周りから心配される。前にいたドイツ企業では、異動や退職する人が勤務時間内にお別れパーティーをすることがあり、よくスパークリングワインが出されたが、私は顔が赤くなるのが気になり飲めなかった。まったく顔に出ないドイツ人が羨ましい。

⑪ スコッチ・エール

スコッチ・エール
醸造所:Störtebeker、アルコール度数:9,0%

ベルリーナー・Dが「今日一番の変わり種」と出してきたのがこのスコッチ・エール。ドイツの醸造所だが、名前の通りスコットランド発祥のビール。

一口飲んで4人とも「ぐえっ」という声にならない声を出したが、そのくらい強烈な風味。ひたすらスモーキーでアルコールも強い。香ばしいが、穀物の風味というよりも、Yさんが形容したように「薬品っぽい味」がする。

これは好き嫌いがはっきり分かれるビールである。私達4人には強烈すぎたので、評価は5段階中2,5。

★★☆☆☆ 〜 ★★★☆☆

豆知識:ビール瓶は有料

ドイツのビールは缶よりもが主流。現地で手に取ったことがある方は、「あまり瓶が綺麗じゃないな」と思ったのではないだろうか。

それもそのはず、瓶は回収され再利用されるシステムになっている。スーパーなどでビールを購入すると、自動的に一本8セント(約10円)のデポジットが加算され、空き瓶をお店にある専用の機械に入れるとデポジット金額分のクーポンが出される。

このデポジットの仕組みはペットボトルに関しても同じ。リサイクル大国のドイツらしい。

⑫ IPA

IPA
醸造所:BRLO、アルコール度数:6,0%

最後に登場したのは、クラフトビールの定番・IPA(アイピーエー)。②のジャーマンIPAと比べて色は薄めで、味も爽やか。柑橘系のフルーティーさと、ほどよい苦味がある。

味とは関係ないのだが、このパッケージを見たDが「日本の国旗を思い出すね」と言い、私が「いや、これはむしろ旭日旗、、、政治的に難しいテーマだよ」と訂正すると、Jは「ドイツ帝国旗のようなものだね、日本とドイツは面白いくらい色んなパラレルがあるよなぁ」としみじみ。ビールを飲みながら日独の歴史に思いを馳せることになった。

このIPAは飲みやすく好印象だったので、私達の評価は5段階中3,5。

★★★☆☆ 〜 ★★★★☆

まとめ

ということで、12本のドイツ産ビールをご紹介してきたが、香りと味にこんなにバリエーションがあるとは、普段ビールを飲んでも「美味しい」「苦すぎる」くらいしか感想が出てこない私にとっても良い勉強になった。

もちろんここで取り上げたのはごく一部であり、ドイツには無数のビールが存在するので、これからも時々新たな種類を探して味わってみたいと思う。

最終的には好みの問題でしかないのだが、DとYさんはIPAのようなホップの風味が強くフルーティーなビール、Jと私は黒ビールのようなコクがあり甘味を感じるビールが好きだった。

また、それぞれの醸造所のこだわりが詰まっているパッケージを見ているだけでも楽しい。ビールの奥深さを感じるテイスティング会だった。

木製のテーブルに並べられた12個の蓋
カラフルでおしゃれな蓋を並べて記念にパチリ
食文化
スポンサーリンク

もしこの記事を楽しんでもらえたら、ドイツ情報ブログランキングに投票(クリック)お願いします!⇩
にほんブログ村 海外生活ブログ ドイツ情報へ

メールアドレスを登録いただくと、新しい記事が投稿された時にお知らせメールが届きます(無料の購読サービス)⇩

記事をシェアする

コメント

  1. 浜須ホイ より:

    ブログ更新、お疲れさまでした。

    ドイツビールの中にはフルーティーな味のものもあるのですか。原料が違うので、シャンパンともまた違う風味なのでしょうね。一度試してみたくなりました。

    ビールビンが有料で、再利用されて省資源とは流石に環境大国です。(日本は確かにビンビールよりも缶ビールが増えてきた様に思います。昔の様に御用聞きに来てくれた酒屋が減った気がするのですが、そのせいかも知れません)

    ビンの形状も興味が湧きました。たぶんサイズには規格がある(?)と思うのですが、ビンの集合写真をみると、意外に形状もサイズも少しずつ異なっていますね? また、日本のビール瓶より一回り細く見えます。背丈も低そうです。でもドイツビールと聞くと格式を感じてしまいます。
    また、ずんぐりした背の低いタイプの瓶は、色が緑系だと中国の上海ビールを連想しました。

    それから、ビール以外のアルコール飲料は男性名詞なのですね。(その程度の独語レベルの読者もいますので、これからもいろいろ教えてください)

    過去のブログで、バウムクーヘンの回がありました。日本では有名な洋菓子なのに、ドイツではそんなに食べないと言うのは驚きでした。私は二回りぐらい小さいタイプのものか、チョコバーの様な四角い棒状のバウムクーヘンを週に一度お茶請けで食べています。この頻度はドイツでは多い方になるのでしょうか。

    食べものつながりですが、ドイツではパンの種類が豊富と聞きました。日本で言う総菜パン・菓子パンの類より、やや高級そうに見えた記憶があります。
    また、カレーブルストは日本では見ないですが、ベルリンではよくあるのでしょうね。

    最近、日本でもコロナ新種株の感染が拡大してきました。欧州は先を行っていたようですね。お身体には充分ご注意ください。以上

    • Aki Aki より:

      こんにちは、いつもコメントありがとうございます。

      フルーティーといってもビールはビールなので、ジュースやシャンパンのような味がするわけではありませんが、一般的な日本のビールとはだいぶ風味が違います。
      機会があればぜひ試してみてくださいね。

      確かにドイツのビール瓶は色々な形があり、量は0.5リットルと0.33リットルの2種類が主流ですが、ずんぐり見えるものもあれば、すらっと見えるものもあります。

      バウムクーヘンの記事も読んでくださってありがとうございます。多くのドイツ人は年に一回食べるか食べないかという感じだと思うので、週に一度というのは相当頻繁ですよ!

      確かにドイツはパンの種類が豊富で、イギリス風・フランス風の白パンが多い日本とは違い、ずっしりした黒パンが多いです。
      惣菜パンは日本特有ですね、こちらでは見たことありません。
      カリーブルストはベルリン名物なのでよく見かけますよ。

      ドイツは3回目のワクチン接種も進み、日常生活は意外に普通に送れています。
      どうぞ日本でもお気をつけください。
      もし今後、ブログ記事のテーマでリクエストがあればお知らせくださいね!

タイトルとURLをコピーしました