ニューヨーク紀行・前編:本場のハロウィン

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ニューヨークに魅了されて

10月の終わり、2度目のニューヨークの旅に出掛けてきた。昨年はワシントンニューヨークボストンなどアメリカ東海岸を旅して、「アメリカ紀行:ドイツ人も驚くアメリカ」という短い記事にしたが、訪れた都市の中でもニューヨークが特別楽しかったので、夫のベルリーナー・Dと再訪を決めたのだった。

9月に入ってから短期間でプランを立てたが、10月の終わりという時期を選んだ理由はいくつかある。ちょうど仕事を休みやすい時期だったこと、アメリカン・バレエ・シアターのバレエ公演がある時期だったこと、「本場のハロウィンを体験してみたい!」という興味があったことなど。

今回はニューヨークだけに7泊して、事前にあまり予定を組まず、前日や当日にやることを決めて動くかたちにした。前回と同じく、アメリカ人の友人が所有しているアパートに泊めてもらい、一緒に公園を何時間もゆっくり散歩して、夕方から映画館に行くなど、地元の人の休日の過ごし方も体験した。

青空の下、黄色に色付いた木が並ぶ公園の通り
紅葉が始まったセントラルパーク

ベルリンから訪れた私たちの目に映ったニューヨークという大都会について、この記事ではご紹介したい。

ベルリンを超えるニューヨーク?

ベルリンで生まれ育ったDは、休暇や仕事で世界中の国を巡ってきたが、「ベルリンの次に好きな街はニューヨークかも」という。これは私にとって少し意外だった。Dはハイキングも趣味で、自然豊かな場所にいることを好むので、高層ビルが立ち並ぶニューヨークのイメージとは結び付かなかったのだ。

ベルリーナーも虜にするニューヨークの魅力とは何か。それは、大雑把な表現になるが、「多様性」だと思う。街の風景も、住んでいる人々も、文化も、本当に多様なのだ。

摩天楼の織り成すスカイライン、深夜になっても巨大ディスプレイやネオンサインが輝き人がごった返しているタイムズ・スクエア。その一方で、マンハッタン(ニューヨーク市の中心地区)の真ん中には、セントラルパークという広大な公園があり、地元の人たちに混ざってのんびりお散歩していると、大都会にいることをすっかり忘れてしまう。そして、あらゆるミュージカルコンサートミュージアムがあり、文化的刺激に事欠くことはない。

キラキラ光るSubwayの文字と、その上にある巨大な広告、背景に見える高層ビル
夜遅くでも大勢の人でごった返している地下鉄の入り口

また、地区ごとのカラーの違いが非常に鮮明で、地下鉄で数駅移動して外に出る度に、まるでまったく違う町に来たかのようで驚いてしまう。ガラスの窓が輝くオフィス街、閑静な住宅街、雑多な雰囲気が楽しいチャイナタウン、イタリア系移民が作り上げたリトル・イタリー黒人系の住民が多い地区…。

ベルリンも地区ごとに雰囲気が違い、ベルリンの壁が崩壊してから40年近く経った今でも、旧西ドイツと旧東ドイツの違いを感じることはあるが、ニューヨークほど極端ではない。

飲食店と車が並び、少し雑多な雰囲気のある通り
イタリアンレストランや食料品店がずらっと並ぶリトル・イタリー

暮らしている人たちも様々な肌の色をしていて、本当に多様である。良い意味でいえば、人種にも宗教にも寛容な国際都市。ドイツではほとんど見かけない、一目でユダヤ教徒だとわかる、黒ずくめの服装に特徴的な帽子を被った男性たちにも目を引かれた。

悪い意味でいえば、目に見えて経済的な格差があり、目玉が飛び出るような高額な家賃を払ってマンハッタンで暮らしているエリート層もいれば、ホームレスの人もいたるところで見かけた。

性的指向ジェンダーアイデンティティも様々。私たちをアパートに泊めてくれたアメリカ人の友人はゲイで、今は亡き夫と一緒に、ニューヨークでLGBTQの権利向上のため活動してきたという。彼の話を聞いていても、本当に様々なバックグラウンドや経歴を持っている人が登場する。

ベルリンにいても、祖父母も両親も全員ドイツ出身という“純粋な”ドイツ人と知り合う確率は意外に高くないのだが、移民が築いたアメリカの多様性は更に一歩先をいっているし、世界中から仕事や教育を求めて人が集まってくるニューヨークでは特にそうなのだろう。

政治的な風潮もこれ以上なくリベラルで、テレビのニュースで映される「トランプ政権」から連想されるアメリカの姿とは対照的だ。友人曰く、トランプ大統領の当選が決まった翌日、ニューヨーク全体がお葬式のような雰囲気だったという。

怖くなかったハロウィン

さて、ハロウィンの数日前にニューヨークに到着すると、街中はすっかりハロウィン一色となっていた。

カボチャやオレンジ色の花が並べられ、積まれた藁の周りには人間と犬のガイコツが
街中の小さな公園にもカボチャやガイコツが飾られている

ドイツで街中がデコレーションされるイベントといえばクリスマスくらいで、個人の家であれば屋内から窓辺を飾り付けたり、ベランダをコード状のライトで華やかにしたりするくらいである。それがニューヨークでは、バルーンや大掛かりな人形(電気で動くものもある)、手の込んだカボチャを玄関や外壁に飾っているところが多く、雨風にも負けないという意志に感心した。

アパートと思われる建物の角に、電動で動く人形が何体かと、その上にバルーンの人形が取り付けられている
下の方にある人形3体は電動で不気味な動きをしていた

ハロウィン当日の10月31日に街中を歩いていると、「ご自由にどうぞ」と書かれたヴァンパイアの置物にお菓子が入れられていたり、

頭の上がカゴのように開いている、小さな子どもくらいの大きさのヴァンパイア
中にはハロウィン仕様のキットカットなどが入っている

夕方から仮装するために、コスチュームをレンタルしている専門店の前には長蛇の列ができたりしていた。

お店の入り口に一列になって並んでいる大勢の人
ずらっと人が並んでいるので人気のレストランかと思った

私たちは現地の友人の勧めに従って、仮装していれば誰でも参加できるというグリニッジ・ヴィレッジのハロウィンパレードを見に行くことにした。仮装していない人の見学も無料である。19時開始とのことだったが、17時過ぎには着いて、見やすそうな場所を確保。すでに大勢の警察官が待機し、パレードが通る道路の両側をフェンスで封鎖し、警備にあたっていた。

薄闇の中で街灯に照らされながら、フェンスの外でパレードの始まりを待っている人々
18時過ぎからどんどん人が集まり始め、歩道はいっぱいに

日が暮れた後の寒さに身を小さくしながら待っていると、19時半近くになって、遠くから賑やかな音楽が流れてきた。仮装した最初の団体が近付いてきて歓声が上がり、それからはグループや個人の仮装者が次々と目の前を練り歩いていく。

ガイコツやゾンビのようなメイクでギターを弾きながら歩いていくグループ
ギターを弾きながら行進してきた一団

ダンススクールがマイケル・ジャクソンの『スリラー』を大勢で繰り返し踊ったり、マーチングバンドのように色々な楽器を演奏する一団がいたり…。見応えがあったのは団体での参加者だったが、時折「すごい完成度!」と感嘆してしまう個人もいた。

こちらを向いてポーズする長身のジャックと、ちょっとセクシーな女性となったゼロ
個人的な最優秀賞はこの二人!アニメーション映画『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』より

ハロウィンといえば、ゾンビやヴァンパイアやお化けなど、ちょっと不気味でグロテスクなモチーフが多いというイメージがあった。確かにそういった仮装をしている参加者もいたが、どちらかといえば可愛いか面白い衣装が多く、怖いと思うことはなかった。

淡いグリーンのドレスに棘のある頭飾りをつけ、観客に手を振る男女のグループ
ハロウィンとは関係ないと思うが、“自由の女神像”が大勢歩いてきた

私もDも、ハロウィン当日はきっとカオス状態になるのだろうと思っていたが、まったくそんなことはなかった。毎年恒例なので警察も住民も慣れているのだろう。確かに時間帯が遅くなればなるほど人でごった返してはいたが、大きな混乱はなく、よく整備されていたと思う。時折ベルリン市内で大型イベントが行われるときの方がよっぽどカオスだね、とDと話した。

後編では、ニューヨークでしか出会えないエンターテイメント食べものについてご紹介します

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