本場のバウムクーヘン食べ比べ

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ドイツで見かけないドイツ菓子

バウムクーヘンを知らなかったり、食べたことがなかったりする日本人はほとんどいないと思うが、本場ドイツでは、食べたことがないという人も多い。ケーキに関する記事でも触れた通り、実はドイツでは、頻繁に目にするお菓子ではないのである。

事前に注文しておけば作ってくれるお菓子屋さんもあるが、常にバウムクーヘンを置いているお店は驚くほどに少ない。ハイデルベルクに住んでいた頃、母の還暦祝いに合わせて一時帰国するのに、縁起が良いと言われているバウムクーヘンをお土産にしようと思いついたのだが、街中で探しても見つからなかったので、インターネットでお店を調べて、隣町まで買いに出掛けたこともある。

チョコレートコーティングのバウムクーヘン
創業1838年、マンハイムの老舗Herrdegenのバウムクーヘン

大きなスーパーでは、機械で製造されたバウムクーヘンが売られていることもあるが、種類はごく少ない。ドイツでは、日常的に食べるというよりも、特別な機会に贈答用に購入することが多い、少し高級なお菓子なのである。

日本で本国よりもバウムクーヘンを一般的にしたのは、第一次世界大戦中に日本へ連行されたドイツ人菓子職人・ユーハイム夫妻と、その業績を引き継いで組織化された会社の影響によるところが大きい。なお、ユーハイム社は逆輸入されるかたちでドイツにも出店していた時期があったが、2024年現在は撤退している。

この、ドイツでは不思議とレアなドイツ菓子、バウムクーヘン。その簡単な歴史と、ベルリンでおすすめのお店の情報もまじえながら、現地よりレポートする。

バウムクーヘンの歴史

バウムクーヘンがいつ誕生したのかは明らかになっていないが、棒に巻きつけて焼くパンは、ヨーロッパ中世から各地に存在した。一説には、今でもハンガリーとルーマニアでよく食べられている、ハンガリー発祥の菓子パン・キュルテーシュカラーチが原型ではないかとも言われている。結婚式やお祭りで供されるほか、街角や観光地の屋台でもよく見かける。

屋台と、ビニール袋に入った筒状の菓子パン
ルーマニアの屋台で買った筒状の菓子パン。焼きたてをビニール袋にぽいっと入れて渡してくれる

焼き菓子としてのバウムクーヘンは、ドイツ語圏だと、既に15世紀には貴族の結婚式の贈り物として知られていたらしい。現在のレシピに近くなったのは、18世紀だと言われている。製法が特殊なので、家庭で作ることはなく、熟練の腕を持った菓子職人だけが作れるものだった。

バウムクーヘンは、ドイツでは『お菓子の王様』とも呼ばれる特別な存在で、歴史的にも、菓子職人のギルド(職業組合)のシンボルマークになっている。バウムは「木」、クーヘンは「ケーキ」という名前の通り、切り口が木の年輪のように見える。

面白いのは、原材料が厳格に規定されていること。基本となるのは小麦粉・バター・卵・砂糖・塩だけで、ベーキングパウダーは使ってはいけない。香りづけに、バニラや、ハチミツ、ラムなどのアルコール、ナッツ、マジパンやヌガーを入れることはOK。ただし、小麦粉・バター・卵の割合は最低でも1:1:2と定められているので、小麦粉100gに対して、最低でも100gのバターと200gの全卵が使用される。

さすが、ビール純粋令(「ビールは、麦芽・ホップ・水・酵母のみを原料とする」と定めた法律)がある国!

バウムクーヘンの種類

日本ではありとあらゆるフレーバーが売られているバウムクーヘン。抹茶味・チョコレート味・いちご味など、枚挙に暇がない。その一方で、本国ドイツでは、原材料が規定されていることもあり、実はあまり種類がない。香りづけに少し入っているものが違うだけで、日本のようにカラフルなものは見かけたことがない。

ドイツのお店で選べるのは、外側のコーティングが、シュガーコーティングか、スイートチョコレートか、ミルクチョコレートか、というくらいである。他の洋菓子と同様、日本のバウムクーヘンは独自の進化を遂げていると言ってよいだろう。

イギリスの高校にいた頃、「チョコチップが入ったスコーンをよく日本で食べてたよ」とホストファミリーに話したら、「スコーンにチョコ!?ありえない!スコーンはプレーンかドライフルーツ入りしか認めない!!」と全力で否定されたのを思い出す

さて、肝心のドイツのバウムクーヘンの味はというと…

私がいくつかのお店で食べ比べてみた感想としては、日本のものと比べて密度が高く、少しずっしりとしていて、卵とバターの風味豊かな素朴な味。ふわふわ・しっとりした日本のバウムクーヘンとは少し印象が違うかもしれないが、どちらも美味しい。

ベルリンの有名店1:Buchwald

ベルリンには、バウムクーヘンで有名なお店が2つ存在する。まず、1852年創業、現在は5代目の女性がバウムクーヘンを作り続けている『Buchwald』(ブッフヴァルト)。

『Baumkuchen』と書かれた建物の角にあるカフェ
可愛らしい建物の一角にある

バウムクーヘンはお土産として購入可能なほか、国外へも配送しているそうだ。私が見た限り、チョコレートはなく、シュガーコーティングだけのようだった。面白いのは、杏子ジャムが少し入っていて、良い味のアクセントになっていること。

2段になった小ぶりのバウムクーヘン
原材料を見ると、杏子ジャムのほかに、アーモンドとマジパンも入っている

カフェも併設されていて、自慢のバウムクーヘンだけではなく、美味しいケーキも食べられる。イートイン専用のメニューも充実しており、私はバウムクーヘンのカット・アイスクリーム2種類・さくらんぼソース・チョコレートソース・生クリームが入った、パフェのようなものをチョイス。

生クリームがたっぷり乗ったパフェと、カプチーノ
友人Mさんは定番のバウムクーヘンのカットを注文

また、立地がとてもよくて、ベルリンの中心部にあり、観光スポットの一つ・ベルビュー宮殿のすぐ近くなので、観光の合間のカフェタイムにも最適。

Konditorei Buchwald

ベルリンの有名店2:Rabien

もう1つの有名店は、ベルリン南部にある『Rabien』(ラビーン)。こちらも老舗で、1878年創業。

一軒家風のカフェ
しばらく前に改装されて綺麗になった。カフェスペースのテラス席も広々

バウムクーヘンは、シュガーコーティングのほか、チョコレートコーティングもある。少し変わり種として、ジンジャー入りも販売していて、これも美味しい。定番のシュガーコーティングはしっとりしていて、Buchwaldよりも日本のバウムクーヘンに近いかな、と個人的には思う。こちらも国外への発送を受け付けている。

1段の大きめのバウムクーヘン
一番オーソドックスなタイプ。しっとりしていて美味しい

お店に行くと、バウムクーヘン以外のケーキも数十種類取り揃えられていて、ショーケースの前でいつも目移りしてしまう。ケーキはテイクアウトすると1ユーロ近くお得に買えて、1つ2,5ユーロくらいと、非常に良心的な値段(家の近くにあったら毎日でも通いたい…!)

しかも、ドイツに慣れた日本人にとってビックリするのは、日本のようにケーキを紙箱に入れて、更に紙袋に入れてくれること。というのも、ドイツでは、ケーキをテイクアウトする場合、紙皿の上に乗せて、大判の紙でくるっと全体を包むだけが普通。私はRabienのようなちゃんとしたケーキ用紙箱を、ドイツで初めて見たかもしれない。

立派な紙箱に入ったケーキと、紙袋の上に置かれたバウムクーヘン
自分のおやつに、バタークリームのケーキと、バウムクーヘンのカットをテイクアウト

中心地から離れているので、観光のついでに、というのは少し難しいかもしれないが、お店がある閑静な住宅街の雰囲気も素敵なので、観光地以外のベルリンの側面も見てみたい、という人にはおすすめ。日本人客も多いようで、ホームページは日本語もある。

コンディトライ・ラビーンのバウムクーヘン - ehemalige Hofconditorei in Potsdam seit 1878
コンディトライ・ラビーンは、ポツダム宮廷時代の創業以来、伝統の味を守り続ける老舗菓子店です。  現在はベルリン市内に店舗を構え、4代目ヨハネス・ラビーンがラビーンの味を受け継いでおります。

Buchwaldはまさに老舗、というシックな雰囲気で、Rabienは内装もケーキもおしゃれ。本場のバウムクーヘン、食べ比べてみるのも楽しいです!

食文化
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コメント

  1. もこ より:

    確かにドイツでバウムクーヘンはなかなか見かけないですね!
    バウムクーヘン=ドイツ発祥のイメージが強かっただけに意外です。
    ドイツでケーキをテイクアウトした時、そのままにしているとフルーツジャムが紙袋に染み出て大変なことに(笑)
    ちなみに、日本のバウムクーヘンでは「ねんりん屋」と「治一郎」が好きです♪
    どちらも成田空港か羽田空港で購入出来ます(*^_^*)

    • Aki Aki より:

      そうなんです、ジャムとかバターが染み出して大変なことになるんですよね^^;;
      菓子パンを買っても紙袋に入れられるだけなので、それを更に入れて持ち運びできるように、いつもビニール袋を携帯しています。
      日本のバウムクーヘン、どちらも食べたことあります!しっとり美味しいですよね*^^*

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