日本人ドイツワインソムリエとシェフの挑戦・後日談

スポンサーリンク
スポンサーリンク

※ この記事はインタビュー後編の続きです

現在のレストラン情報

開店準備期間中にインタビューしてから約2ヶ月後の2024年2月23日、AyamiさんとHideさんの『Zur Traube』がついにオープン!着実にファンを増やしている。

Restaurant Zur Traube | Restaurant
Ein Japanische Paar mit Französiche Gerichte.Restaurant Zur Traube

翌年の2025年5月、私も友人を誘ってレストランを再訪した。週末ではなく月曜日の夜だったにもかかわらず、店内は満席という繁盛ぶり。

おしゃれなレストランの内装
営業時間直前、お客さんを迎える準備のできたレストラン

アラカルトでも注文できるが、せっかくなので私は5品コースワインペアリングをお願いした(コース料理は要事前予約)。コースの内容は毎月変わるそうで、旬の素材を楽しめるのも嬉しい。私がお邪魔した時期は、ドイツの春の味覚・白アスパラガスも堪能できた。

満席で各テーブルが違うテンポで食事を進めていく中、Ayamiさんは隅々まで目を配り、適切なタイミングで遅れなくサービスを提供する。レストランという舞台の全体を見つつ、それぞれの登場人物の動きの細部まで追うことができるのは、舞台演出家としての経験が活かされているに違いない。

和洋折衷のテーブルセッティング
内装と同様にお洒落なテーブルセッティング

さて、百聞は一見に如かずということで、食べるのが勿体無いような、Hideさんの美しい料理の数々の写真をどうぞ。フレンチをベースに、醤油やごぼう、抹茶など和の食材も絶妙に取り入れられている。

美しく盛られたツマミ
アミューズブッシュ。右にあるのは白アスパラガスの天ぷら
丸型のブリオッシュとバゲット
自家製のブリオッシュとバゲット。Ayamiさんの故郷・赤穂の塩をふりかけたバターと
白アスパラガスとルバーブ、キャビアを使った前菜
ホワイトアスパラのブランマンジェ。スナップエンドウのソース、塩漬けルバーブ、キャビアと共に
ごぼうとリードヴォー
リード・ヴォーの醤油キャラメリゼ。ゴボウのピューレ、チップスを添えて
赤身の魚
オンブルシュヴァリエ(イワナの一種)のバターコンフィ。燻製ウナギのソース、グリーンピースと共に
赤ワインソースの肉料理
キメラ。鶉とハトを縫い合わせ、赤ワインでマリネした鴨と、鴨のレバーペーストを詰めてグリルしたもの
黒胡麻アイスと日本風「黒い森のさくらんぼケーキ」
デザート。抹茶と餡子を使った和風「黒い森のさくらんぼケーキ」と、濃厚な黒胡麻アイス

おなかも目もすっかり満たされたひと時…。ドイツを中心にフランスのワインも合わせた、ワインペアリングも素晴らしかった。すっきりしたリースリングから始まり、最後はうっとりするようなデザートワインで締め。

写真からも伝わると思うが、Zur Traubeではコース料理でも一皿一皿がしっかりしたボリューム。決して色が細くない私でも、最後には120パーセント満腹になった。

フレンチのコースだと小さなポーションだけ出すお店も多い中、「せっかく来てくれたお客さんにはおなかいっぱいになって帰ってほしい」という、Hideさんのこだわりだそうだ。

レストラン経営2年目に入ったAyamiさんとHideさんからは、これまでにあった苦労話も色々と伺った。

週休2日となっているものの、1日は買い物や仕込み、事務処理といった仕事で終わってしまい、実際に休めるのは1日だけだという。営業日には朝から深夜までの体力勝負。過労で二人とも体に不調をきたしながらも、調理補助とサービスでアルバイトのスタッフにも入ってもらい、なんとか軌道にのってきているそうだ。

オープンしたての頃は、メッダースハイムという小さなドイツワインの村で、「ジャパニーズフレンチ」を提供するのは簡単ではなかったという。

Ayami
Ayami

フレンチをベースにした高級料理というコンセプトがなかなか伝わらず、Beilageはないのか、と求められることも多くて…

Beilageとはドイツ料理でいう付け合わせのことで、ジャガイモやライスやパスタのような炭水化物が多い。ドーンと肉の塊と付け合わせが出てくるドイツ料理は、それはそれで美味しいけれど、もちろんAyamiさんとHideさんの目指すところではない。

逆風を受けながらも、一皿一皿シェフが味と見た目を考え尽くした料理を提供するというコンセプトを貫き、今ではBeilageを求めるお客さんは少なくなったそう。

Ayami
Ayami

あと、日本人が開業したというので、「寿司はないのか」「ラーメンはないのか」みたいな問い合わせも最初は多かったです。「お好み焼きはありますか」という電話がかかってきたこともあって、「うちのシェフはフレンチが専門なので作りませんが、私は関西出身なので作れますよ!」と答えました

なんとAyamiさんはそのお客さんに来店してもらうことにし、シーフードなど良い材料を特別に用意しておいて、お好み焼きを作って提供したという(もちろんメニューはない)。お客さんはこの特別待遇に感激したようで、後日家族を連れてコース料理を食べにきてくれたとのこと。

レストランがオープンして間もない頃から、毎月欠かさず来店し、必ずコース料理とワインペアリングを頼んでくれる常連のご夫妻もいるそうだ。Ayamiさんはいつもメニューを刷った紙をプレゼントしており、今年の終わりには、ご夫妻が一番美味しかったと思う料理を発表してくれることになっているそうで、AyamiさんもHideさんも楽しみにしているという。

こういったお客さんとのあたたかな交流が生まれるのも、Ayamiさんの心がこもったサービスと、Hideさんの想像力に溢れた妥協のない料理があってこそ。

ドイツ在住者の方、旅行でドイツへ来られる方、ぜひワインの村に足を延ばして、工夫を凝らしたジャパニーズフレンチと、料理を更に美味しくするワインと、非日常を演出するサービスを体験してみてください!

Zur Traube
Sobernheimer Str.2 55566 Meddersheim
Email: hide.french@traube-meddersheim.com
Tel: 06751 950382
Restaurant Zur Traube | Restaurant
Ein Japanische Paar mit Französiche Gerichte.Restaurant Zur Traube

コメント

タイトルとURLをコピーしました