つわりでも出勤
日独比較からは一旦離れてしまうが、今回の記事では、妊娠中の心身の変化についても書き記しておきたい。最初の記事でも触れたように、私はつわりがつらかった時期は、ベルリンの産婦人科で薬を処方してもらっていた。
つわりは個人差が大きく、まったくない人もいれば、入院が必要なほど酷い人もいると知ってはいた。こればかりはその時にならないとわからないと思っていたが、私の場合は、「寝たきりになるほど酷くはないが地味につらい」状態が、妊娠5週目くらいから14週目くらいまで続いた。
妊娠初期は体温が上がり37度くらいの微熱が続くので、ふらふらするのと、常に車酔いしているような気持ち悪さがあった。空腹になると気持ち悪さが増すため、食欲がなくてもクラッカーや飴などをつまんだり、1回分の食事でも少し時間を空けて2回に分けて食べたりした。
大変だったのは、体調が悪くても仕事には行っていたこと。職場に妊娠を報告するのは、流産の恐れが小さくなる妊娠中期になってからにしようと思っていたので、なるべく平気を装って出勤していた。
家から職場まではバスで40分くらいの距離だが、びっしょり汗をかくほど気持ち悪くなり途中で下車して休んだり、なんとか到着しても勤務開始時間まで応接室のソファで横になったり、昼休みも人目につかないところで休んだり、まったく集中できないほど気持ち悪い日は早退したりした。

自分が経験してみるまでは、「つらいと言っても一時的なものだから」と考えていましたが、2〜3日の体調不良でも嫌なのに、2〜3ヶ月ずっと気持ち悪いというのは「本当にもう勘弁してほしい」と思いました…
「10週目くらいがつわりのピークって聞くけど、それまでどんどん気持ち悪さが増すのかな」と戦々恐々としていたが、不幸中の幸いというべきか、私の場合は波はあってもほぼ横ばいの状態だった。

ホルモンバランスの激変といえば、情緒不安定になることも多いと言われているが、私も妊娠初期に涙が止まらなくなったことがある。
私が休んだ時に代理を務めてくれる女性の同僚にだけは、早い段階で妊娠を伝えておこうと思い、体調が悪い中で二人きりで話し始めたら、「初期でこんなに気持ち悪いなんて」「これからどれくらい職場に迷惑を掛けるのだろう」「なんで女性だけこんな負担を背負わなければいけないんだろう」とどうしようもなく不安でネガティブになり、大泣きしてしまった(同僚も2児の母なので優しく励ましてくれた)。
逆に言えば、その一日を除いては気分にむらはなく、淡々と妊娠生活を送ったのだが、涙をコントロールできないことに自分でびっくりした。
好物がダメになる?!
その他、妊娠初期から中期にかけて興味深かったのは、味覚の変化。
好きだったものが食べられなくなったり、苦手だったものを食べたくなったりするとはよく聞く話である。私の場合、6週目くらいに突然、大好きで一日2杯は飲んでいたコーヒーが駄目になった。

妊娠がわかってからはカフェインレスのフィルターコーヒーを淹れていたのだが、いきなりその匂いに「うっ」と気持ち悪さを感じたのだ。それからコーヒーを飲みたいと急に思わなくなり、つわりに効くと聞いた生姜のハーブティーなどを飲むように。
更には、自他共に認める超甘党の私が、甘いもの、特に濃厚な甘さのものをあまり食べられなくなった。フルーツや、ほのかに甘いお菓子や、さっぱりしたアイスクリームは美味しいと思っても、以前は毎日欠かさず食べていたチョコレートを食べたいと思わなくなり、自分で驚愕。空腹を感じたときも、クッキーより塩味のクラッカーやお煎餅をつまむようになった。
あんなに好きだった、コーヒーと甘いお菓子という組み合わせを体が求めなくなるなんて…と、ホルモンが及ぼす圧倒的な影響に驚くばかり。

その他には、脂っぽいものやクリーミーなものもあまり食べられなくなった。以前は大好きだったクリームパスタよりも、出汁のきいたうどんの方が美味しく感じるように。

また、突然ある特定の食材を無性に食べたい!と思ったこともある。具体的には、ブロッコリー、ツナ缶、アーモンドなど。どれも元々は大好物というほどではないが、葉酸、ビタミンE、マグネシウムなど、身体が足りない栄養素を訴えていたのかもしれない。
振り返ってみると、味覚が変わっていた時期の私の食生活は、その前よりも健康的だったに違いない。おなかの中の子どもに、「今はカフェインとか砂糖とか、脂っぽいものとか、あまり摂らないでね」と指示されている気分だった。

一方で、私の日本人の同僚は妊娠中、毎食でもカルボナーラパスタが食べたくなり、いつもデザートはチョコレートコーティングの濃厚なアイスだったそうなので、味覚の変化は本当に人それぞれですね
余談:朝シャワー派と夜シャワー派
妊娠・出産とは直接の関係がないのだが、子どものいる生活を具体的に考えたときに、日独の生活習慣の違いとして面白かった話がある。
私と夫のベルリーナー・Dは、妊娠前からベルリンで新築アパートの購入手続きをしており、建築開始に向けて、設計担当の女性と間取りについて細かく相談していた。
一番時間が掛かったのは、2つあるバスルームの間取りの決定。元々の案では、メインのバスルームにはシャワー付きバスタブ、小さめのバスルームにはシャワーが取り付けられることになっていた。ただ、Dも私も(日本人らしくないのだが)お風呂に浸かることがほぼないので、シャワー付きバスタブは省こうという話になった。
そのため、メインのバスルームには広いシャワー・トイレ・洗面台、小さめのバスルームにはトイレ・洗面台だけを設置するつもりで考えていたところ、設計担当の女性からも、他の友人たちからも、「もし子どもができたらシャワーは2つあった方がいい」とアドバイスされたのである。

子どもが小さいときはいいですが、ティーンエイジャーになると、かなり長い間シャワーを浴びたりとか、メイクしたりとか、バスルームを占領されますよ。2つある方がお勧めです
そこで私は自分の子ども時代を思い返してみた。祖父母・両親・兄と6人暮らしだったが、「お風呂(シャワー)が2つあったらよかったのに」と思った記憶はない。夕食の前後に、いつも決まった順番で一人ずつお風呂に入り、問題なく機能していた。
ドイツでは、シャワー(バスタブ)、洗面台、トイレが一つのバスルームにあるのが普通なのに対して、日本では、それぞれが独立しているので、混雑が起きにくいということもあるだろう。しかし、主な要因は、お風呂に入る時間帯にあると思う。
ドイツ人の多くは、朝の出掛ける前にシャワーを浴びる。寝ている間にかいた汗を流したい、さっぱりとしてから身支度をしたい、体臭予防になる、ヘアセットをしやすいなど、色々と理由は聞く。ベルリーナー・Dも多分に漏れず朝シャワー派。
ただしこの習慣には明らかなデメリットがあって、当然ながら朝の忙しい時間帯にバスルームが混み合う。全員が朝シャワー派というドイツ人家庭であれば、確かにシャワーが2つあった方がよいのも肯ける。
私とDに関しては、幸いにも日本人の私が夜シャワー派なので、シャワーを浴びたいと思う時間帯が被ることはない。時々、Dが朝シャワーを浴びているときに私もトイレに行きたくなり、両方が同じバスルームにあるので困ることはあるが、新しいアパートではトイレが2つあるのでその問題は解消される。
Dと色々考えた結果、もし子どもができたら夜シャワー派に育てようということで、やはりシャワーを1つだけ設置することにした。一日の終わりにお風呂に入り、汚れを落としてから清潔なパジャマを着て寝る、という文化で育った日本人としては、遊んで汚れたり汗をかいたりしたままの状態で子どもがベッドに入ることには、考えただけで抵抗がある。それに夜の方が時間に余裕があるし、順番を決めてシャワーを浴びれば問題ないはずだ。
設計担当の女性にも、「Dは朝シャワー派ですが、私は夜シャワー派で、もし子どもができても夜シャワー派になってほしいと思っているので、朝のシャワーラッシュはないはずです」と説明すると、「確かにそれならシャワー1つで大丈夫。日本ではそういう文化なんですね」と楽しそうに笑ってくれたのだった。

こんなところでも日独の習慣の違いが見えますね


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