ベルリンからパリに行ってみると

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隣国・フランス

ドイツ暮らしも計5年が経ち、この国が一番住みやすいと思っているが、気が付けば毎年遊びにいっているのがフランス

私が初めてフランスを訪れたのは16歳、イギリス南部の高校に留学していた頃だった。ユーロトンネルを使い、ドーバー海峡沿いの街を訪れる日帰り旅行(!)だったのを懐かしく思い出す。

それからも日本からフランスへ行ったことは一度もなく、常にドイツが起点だった。私が4年ほど過ごした南ドイツのハイデルベルクからだと、パリまで電車で3時間半なのに対し、ベルリンまでは6時間半掛かるので、不思議なことに自国の首都よりもパリの方が圧倒的に近い

ドイツの大学でフランス語の勉強を始めたこともあり、ドイツ在住のフランス人の友人が増えて、段々とフランスはドイツの次に身近に感じる国になった。

しかし、私がフランスという国をどう見ているかというと、日本と比較してというよりも、ドイツと比較して、という部分が多い。先週末、パリ近郊に引っ越したフランス人の友人を訪ねるため、ベルリンから初めて飛行機でフランスへ行ってきたので、気付いた点を記事にしたいと思う。

ドイツ人の思うフランス

そもそも、ドイツにおけるフランスのイメージはどんなものだろう。私がドイツの友人達と会話する中で感じるのは、日本におけるイメージとそう大きく違わない、ということだ。

何でも小洒落ていて、食べ物とワインが美味しい。でもちょっと気取った人が多い。

多くのドイツ人にとっても、やはりフランス語の響きは綺麗だし、フランス語訛りのドイツ語は可愛いと思うそうだ。

吹き抜けの天井に届きそうな、華やかに装飾された巨大なクリスマスツリー
パリのデパート、ギャラリー・ラファイエットの2019年度クリスマスツリー。ドイツではあり得ないハイセンスさ

日本とドイツで違う点があるとすれば、歴史的な関係だろう。数世紀前まで、ヨーロッパ文化といえば、ほぼイコールでフランス文化のことだった。いわゆるハイカルチャーは言わずもがな、政治や思想の世界でもフランス語が共通語だった。

フランスの思想家ヴォルテールを敬愛したフリードリヒ大王(1712~1786)が、フランス語は流暢なのに、母国語であるはずのドイツ語を小学生レベルしか書けなかったという逸話からも、どれだけフランスに傾倒していたのかということが伺える。

ヴォルテールとフリードリヒ大王に関する書籍では、『ヴォルテール、ただいま参上!』(ハンス=ヨアヒム・シェートリヒ 著/松永 美穂 訳、新潮クレスト・ブックス、2015年)が素晴らしく面白くて読みやすい

実直さを重要視するドイツ人からすると、フランス人の国民性と言われるものは、ちょっと受け容れがたい部分もあるかもしれないが、同時に憧憬を抱かずにはいられない対象でもあるのだろう。

国境の意識

さて、日本からフランスへ行く場合と比べて、ドイツから行く場合は、国境を越える意識が希薄だと言える。電車でもバスでも飛行機でも、パスポートをコントロールされないことが多いので、隣の州へ行くくらいの感覚である(ただし近年はテロ対策のため厳しくなり、フランス行きの長距離バスの中でチェックされたことも)。

通貨もユーロなので、両替は必要ない。私はドイツの銀行のキャッシュカード兼デビットカードを持っているが、フランスでも手数料なしで使うことができる。また、ドイツの公的健康保険は、EU内でも適用されるので、万が一フランス滞在中に病気になった時でも安心。

ところで私は、ベルリンのテーゲル空港から、パリのシャルル・ド・ゴール空港に着いたとき、「首都の空港というのはこうあるべきだよなぁ」とその立派さに感心し、ちょっと恥ずかしくもなった。

真っ白な天井と床に、濃いピンクのスタイリッシュなドアの個室
シャルル・ド・ゴール空港のトイレがあまりにスタイリッシュで、思わず写真をパチリ

というのは、来たことがある人は同意してくれると思うが、テーゲル空港は地方の小規模空港のようにこじんまりとして古びれている。ベルリンの南に建設・拡張中の大規模な国際空港も、オープン時期が何度も延期され、まだ本格的に運用開始されていない。

ベルリンで起業した日本人の知り合いが、「日本からビジネスパートナーを呼んでも、空港がこれじゃ、第一印象が悪すぎて…」と言っていたのも納得

人の多様性

ベルリンからパリに到着すると、街を歩いている人達が違うな、とまずは思う。

外国人や、移民の背景を持った人が多いのは同じだが、ベルリンと比べてパリは圧倒的に黒人の割合が高い。植民地の歴史を考えると自然だろう。逆にベルリンでは、トルコ系や、東欧からの移民が目立つ。日本人が持っている、明るい色の髪と眼をしたフランス人(というより欧米人)のイメージに合致するような人は、実際にはあまり見かけない。

話が少々ズレるが、パリにある日本のテレビ支局で通訳をしていた日本人の友人とパリで会った時、こんなことを溢していた。

街頭インタビューをする時には、「日本人の思うフランス人らしい人を捕まえて」とテレビ局のほうから言われるから、嫌気がさして…

その国の実態をありのまま伝えるべき報道機関だが、実際には、フランスという国のイメージを操作している、ないしは従来のイメージ内で報道しようとしているわけである。パリはこんなに黒人の人が多いのか、と現地に来て初めてわかるのも、日本におけるイメージが故意に作られているからだろう。

移動手段

“規則”という言葉に敏感なドイツ人達は、車の運転が落ち着いていて、交通量の多い場所でもうるさくはない。信号のない横断歩道の横に人が立っているのが目に入ると、かなり早い段階でブレーキを掛けて、歩行者が渡るまで止まって待ってくれる。

その感覚でパリに来ると、「こわいな」と思うことがしばしば。まず車の運転が荒いし、ちょっとしたことでクラクションを鳴らすし、横断歩道を渡っていても、かなりギリギリのところまで速度を落としながらも進んでくる。フランス人の友人曰く、「パリの運転では自己主張が大事」らしい。

一方で、ドイツからフランスへ来ると感動するのは、電車が時刻表通り走っていること。「ドイツ人の方が時間にちゃんとしてるでしょ?」と疑問に思う人も多いと思うが、残念ながら交通機関は例外である。ドイツの電車の信用できないことと言ったら…誰しもが散々な経験をしているので、ドイツ人とこの話題になると盛り上がること間違いない。

私はドイツで長距離電車に乗って、何の問題もなく目的地に着くと、「今日はなんてラッキーなんだ」と思う。感覚的に8割くらいの確率で、大幅に遅延したり、車両が故障していたり、途中の駅で降ろされたり、キャンセルになったりする。

パリ郊外の友人もフランスとドイツを行ったり来たりしながら仕事をしているが、

フランスでもみんなSNCF(フランス国鉄)の文句を言ってるけど、DB(ドイツ国鉄)と比べたら全然悪くないわね

としみじみ。ただしフランスはドイツと比べてもストライキが多いので、身動きが取れなくなることがあるのは恐いポイント。

街中で

ドイツ、特にベルリンだと、カフェなどに入ると英語で話しかけられることも多い。見た目だけでは私がドイツ語を話せるかどうかわからないので、親切心でもあるだろうし、ドイツの若い人達は英語が得意なので、機会があれば話したいと思っているのもあるだろう。

一方で、有名な話だが、多くのフランス人は英語を使いたがらない。パリから足を伸ばして、ルーアン大学で働いているギリシャ出身の友人に会いに行ったところ、以下のように言っていた。

ドイツだと、ドイツ語で言い淀むと、ドイツ人の方から英語に切り替えてくれるけど、この国だと、どれだけ拙いフランス語で話そうと、フランス人は根気よく待ってくれる…というか、意地でも英語で話そうとはしないの

カフェやレストランといえば、ドイツよりもフランスの方が日本に近い部分もある。まず、フランスだと瓶に入った水道水を無料で出してくれる。ドイツだとミネラルウォーターを注文しないといけないし、場合によってはビールより高いことも…。エスプレッソなどのコーヒーを注文した時だけ、小さなグラスに入った水道水も無料でお願いできるが、それだけ頼むのは不可。

それから、フランスではウェイターにチップを渡さない人も多い。ドイツでも、あまりにサービスが悪かった場合には渡す必要はないのだが、慣習的に5〜10パーセントを上乗せした額で支払うのが普通である。

ドイツよりフランスの方が日本に近いといえば、服のサイズもそう。同じサイズ表記でも、ドイツよりもフランスの方が一回り小さいので、ドイツではXSを買ってもブカブカする私も、フランスのXSやSだとぴったり(日本のS〜Mくらい)。

ドイツ人からすると少し不思議に思うだろうフランスの食文化としては、チーズがある。両国ともにチーズの種類が豊富でよく食べるが、ドイツと違って、フランスの家庭では朝食にチーズは出てこない。クロワッサンにジャムなど、朝食は甘いものしか食べないのがフランス流。

テーブルに並べられたバゲット、クロワッサンなどとジャム
パリ滞在中の朝、友人が近くのパン屋さんで焼きたてのパンを調達してきてくれた

また、フランスのディナーでは、メインディッシュとデザートの間にチーズが供される。私が最初びっくりしたのは、

デザート前のチーズにサラダが付いてくる!

サラダ=前菜か付け合わせ、というドイツないし日本的な考えだと驚いてしまうのだが、フランスではメインディッシュの後のチーズと一緒にグリーンサラダを食べることがある。

ドイツとフランスの比較、日本とフランスの比較…まだまだ奥が深い。

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